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347.黒髪の男と白髪の男

「ジェ、ジェクトさん!?」

「うぐぐ……あっ……!」

『すごい怪我だ! 吾輩が手当てするからお主たちは部屋の中へ!!』


 アサドールが怪我をしているジェクトの治療に当たる間に、ルギーレたちは彼が吹っ飛んできた部屋の中へと踏み込む。

 するとそこには白髪を撫でつけて整えている赤目の若い騎士団員の男と、赤い服装に黒髪が特徴的な、槍使いのこれまた若い男の二人の姿があった。

 その二人がジェクトと戦っていて、そしてここまでボロボロにさせたのは誰が見ても明白だった。


「あなたたち、何者なの!?」

「おいおい、そっちこそ誰だよ。この警報を鳴らす原因になったのはお前らだろ?」


 黒髪の男が槍を片手にズイッと前に出るが、彼の左肩を白髪の男が右手で掴んで止める。


「おい待てサルイン。この女って確か、ヴィーンラディの予言者だとかって言われてたのに脱走したって噂のルディアじゃないか?」

「何っ、本当かよヴィルリン!?」

「俺の記憶に間違いがなければあっているはずだ。それから、お前の仲間のエルクを殺したあのオールバックのおっさんの仲間ってのもこいつらだろうな」

「な、んだとぉ……!?」


 サルインと呼ばれた黒髪の男が、彼にヴィルリンと呼ばれた白髪の男のセリフを聞いて怒りで顔が真っ赤になる。

 だが、エルクという人物に心当たりがないルギーレたちの中で、エルヴェダーがその疑問をストレートに口に出した。


『エルクってのが俺様たちに殺されたって? そりゃー誰だよ?』

「とぼけんじゃねえ!」

『とぼけてなんかいねーよ。エルクなんて名前は聞いたことねーからな。誰が誰に殺されたんだよ?』

「テメェらがここに来る途中で出会ったはずの、宗教団体の教祖代理だ!!」

『……悪りぃ、全く覚えてねえ』

「てめええええええ!!」


 だが、そのエルクという人物について心当たりがある人物が一人。


「ねえ、もしかしてそれって、この研究所に繋がる通路の出入り口が肖像画の裏にある小部屋に倒れていた、ピンク色の短髪に屈強な体格をしている男の人のこと?」

「そうだよ、それだよ!! よくも俺の仲間のエルクを殺ってくれたなテメェら!!」

『そう言われてもねえ。俺様たちが殺したわけじゃねえし、何があったんだかさっぱり……』

「だあああまあああああれええええええええええ!!」


 もうこうなったら全員皆殺しにしてやる、と鼻息荒く叫びながらサルインが槍を構えて向かってくる。

 それに対して同じく槍使いであり、炎の使い手でもあるドラゴンのエルヴェダーが、まずは先制攻撃でファイヤーボールを撃ち出した。

 だが、それを騎士団のヴィルリンがウォーターボールを生み出して打ち消した。


『ほお、なかなか反応がいいじゃねえの』

「みくびってもらっては困る。俺だってヴィーンラディの騎士団員だからな」


 それに、とヴィルリンは壁にかかっている赤いレバーに手をかける。


「火属性はこれで終わりなんだよ」

『え……うおおっ!?』


 ヴィルリンがそのレバーをガチャンと音を立てて下げた途端、天井からブシャーッと音を立てながら放射状に大量の水が撒き散らされ始めた。


「うわっ!?」

「きゃああっ!?」

『ぶほっは!? お、お前何を……ぐあっ!!』

「よし、一気にやっちまおうぜ!!」


 まずい、この状況になってしまうと火属性の魔術全てが使い物にならなくなってしまう。

 しかも部屋の外からもまだ増援の魔術師たちが来ている状況だし、エルヴェダーはアサドールのように回復魔術が豊富なわけでもないので、ジェクトを治療している彼と交代するのは不可能だ。

 もっと言えば、アサドールはドラゴンではあるものの接近戦が大の苦手。

 こうした余り広くない部屋で、槍を持った相手と魔術師と戦うようなシチュエーションは最悪の一言に尽きる。

 弓を人間の時の武器として選んでいるのも、遠距離攻撃を得意とするからなのだ。


『くっ!!』

「おらおら、さっきまでの勢いはどうしたよ赤毛の兄ちゃんよ! エルクを殺された恨みはでけぇからな。確実に死ねるようにしっかり突いて殺してやらぁ!!」


 槍使いとして何千年も生きてきたはずなのに、たかがこの人間ごときに苦戦しているだと?

 エルヴェダーはその事実が信じられなかった。

 もちろんルギーレとルディアも黙って見ているわけもなく、彼に加勢するために動き出そうとしたのだが、そこに恐るべきテクノロジーの結晶による攻撃がやってきた。


「お前たちはこれでも食らってろ」

「え……きゃあああああっ!?」

「うぐぉあああああああっ!?」


 パンパンパンッと乾いた音が複数回響き渡る。

 それはルディアの魔術防壁も貫通し、ルギーレのレイグラードの加護による防御力の上昇など最初からなかったかのような攻撃力を誇る、ハンドガンによる銃撃だったのだ。

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