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335.反予言者派の動き

 こうして外に出てきたジェクトだが、反予言者派の人間を探すとなると地道に聞き込みしかないだろう。

 だが、この国では部外者であるといっても事前に告知されていた通りヴィーンラディの警備隊と騎士団に監視されている身なので、余り派手な活動はできないだろう。

 それにジェクトはそこまで人と話すような性格でもないので、どうやって探ろうか考えを巡らせる。


(情報が集まるといえば酒場かギルドだろうが、どちらも騎士団や警備隊の息がかかっていると見ていいだろう)


 実際、ギルド長のデレクという男が海賊の調査に派遣されたらしいので、間違いなくギルドでの聞き込みは危険だ。

 ならばどうするべきか? とさらに考えるジェクトがその時、自分の視界に入れたもの。

 それは……。


(屋台か……)


 そういえば食事も出されていなかったなと思い出し、自分の腹の虫の要求を満たすべく屋台で食事を買うことにする。

 だが、ここであることを思いついたジェクトは一か八かでそれを実行してみる。


「はいいらっしゃい、ご注文は?」

「これと……それからそれをもらおうか」

「へい毎度! あんた、旅の人間かい?」

「そうなんだ」


 色々と行動しやすいように、現在のジェクトはバーレン皇国騎士団の制服ではなく、旅人の格好をしてここまでやってきている。

 なのでこの事情を知っている騎士団や警備隊の人間たち以外は、彼を旅人と見て気さくに話しかけてきても不思議ではない。

 しかもこの屋台は出来立ての料理を提供するスタイルの店らしく、看板に描かれている絵を見て注文した後、少し待ってもらうスタイルのようだ。

 店員の方から話しかけてくれてきたのも好都合なので、その待ち時間を利用してジェクトは店員に色々と話を聞くことにする。

 二人の話し声は、目の前で肉を焼く鉄板の音によってかき消されながらの会話だ。


「この国に来るのは久々なんだが、反予言者派ってのが最近活動しているんだって?」

「お客さん、またずいぶんと前の話をするもんだね。反予言者派の連中は確かに活動しているけど、今は全然規模が小さくなってるんだよ」

「ん?」


 あれ、ちょっと待て聞いていた話と違うぞ?

 話によれば騎士団や警備隊のほとんどが反予言者派の人間だというものだったが、縮小しているとなると事前に聞いている情報とあべこべだ。


「おかしいな? 反予言者派は予言者がこの国から逃げ出してから増えたって聞いたけど」

「だからそれは前の話だ。まあ俺が聞いた話じゃあ、騎士団とか警備隊の中にはだいぶ反預言者派の人間が多いみたいだがね。それよりも最近は新興勢力が力をつけてきててさ」

「新興勢力?」


 反預言者派の話を聞きに来たはずなのに、話が違う方向に向かい出したのをこの時ジェクトは肌で感じ取った。

 それを知ってか知らずか、屋台の店員の男は肉をひっくり返して続ける。


「そうそう。今まで予言者に頼っていた人間たちが頼れなくなっちまったわけよ。んで、それに呼応して宗教やる人間が出てきてさ」

「宗教?」

「そうだよ。予言者に頼れなくなった人間たちを救いたいとかって話を地道に布教し続けた結果、だんだんとその宗教に没頭する人間が増えたんだ。最初は騎士団も警備隊もその宗教を取り締まろうとしたんだが、信仰の自由ってのは認められてるし、別に違法な商売をしているわけでもないから、捕まえられるに捕まえられなくて、今じゃ予言者なんてもう昔の話だって割り切っている人間が多くてさ」

「宗教ねえ……」


 バーレンでもそうだし、ほかの国でもそうした人間たちを救いたいということでいろいろな宗教を布教する人間は多い。

 ただしそのうちの半分以上はまがい物だとか嘘っぱちだとかとも言われており、言葉巧みに騙されて財産を全て持っていかれてようやく目が覚めたりだとか、信者が知り合いの家族を殺したり知り合いを騙したりという犯罪に走らせる結果につながったりなど、宗教がらみの犯罪というものはこの世界でも意外と多いものである。

 数は多くないものの、ジェクトもそういった新興宗教がらみの犯罪を取り締まりにバーレン国内を奔走したことはあるので、今このヴィーンラディで力をつけている新興勢力の宗教団体について興味が出てきた。


「その宗教はどこが本部なんだ?」

「さあ……俺もそこまで詳しくは知らないな。でも支部がこの近くの路地に入った場所にあるって話は聞いたことあるよ」

「そうか、わかった。どうもありがとう」


 肉料理と白飯を受け取って、ジェクトは中央広場の噴水に腰かけてそれを食べながら考える。


(ルディアがいない間に、どうやらこの国も随分と変わってしまったらしいな……)


 とりあえずその教えてもらった支部に向かうべく、まずは目の前の食事を平らげ始めるジェクトだったが、その光景をじっと監視している一人の男がいた。

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