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333.動き出すヴィーンラディ王国

 だが、それ以上に海のことをわかっている存在といえばやはりドラゴンたちであろう。

 エルヴェダーとアサドールはそれこそ、ドラゴンとしてあの島に行き来していたという経歴を持っているのだから。


『だから俺様たちが何か知ってるんじゃないかって?』

「ええ。空から見える景色なら、人間の俺たちよりもだいぶ知ってるんじゃないかと思いまして」


 この国に反予言者派の人間が多数いるとなると、今まで話した自分たちの情報だけが会話できる精一杯のことだった。

 これからの行動予定などをうっかり話してしまうようなことがあれば、その行く先々にそれこそ反予言者派の刺客を送り込まれて、ルディアのみならずパーティーメンバー全員が殺されてしまう可能性だってあるからだ。

 だが、ドラゴンたちは顔を見合わせて困った表情を見せる。


『そう言われても、俺様は元々海が嫌いだからなあ……海には近づきたくもねえ』

『吾輩は海は嫌いではないが、基本的に引きこもって研究ばかりしているから海のことはよく知らん』


 逆に海のことをよく知っているというのであれば、同じく引きこもりのシュヴィリスと水に強いグラルバルトだろうと言うドラゴンたち。

 だったらすぐにでも連絡を取りたいのだが、あいにくこの状況では無理そうだった。


「そうですか……まいったな、だったら俺たちだけで何とかするっきゃないですね」

「そうだな。今こうしてドラゴン様達が牢に入れられている以上は、動けるのは俺たちしかいない」


 エルヴェダーとアサドールは、この国で暴れられては困るということで言葉巧みに騙されてしまい、こうして牢の中に入れられてしまった。

 本気で暴れて脱獄しようとかと思った両者だったが、そうなるとこの城の中にいるルギーレやルディアに身の危険があるし、そもそもこの牢の中では全ての魔術が封印されてしまっているということで文字通り身動きが取れなくなってしまった。

 それもこれも、全てはニルスに原因があるのだと考える一行は、今回はドラゴンなしの状態で話を進めなくてはならないのだ。

 だが、出発前にまずこの国にやってきたシュアのレフナスとアルバス、そして護衛のメリラと再会することになったルギーレとジェクトは、思いがけない話を聞くことになった。


「え? 海賊ですか?」

「そうなんです。今、我がシュア王国の南側で海賊が出るようになりまして……海産物が荒らされたり、漁船が襲われたりして被害が多発しておりまして」


 やってきたレフナスたちは、自分たちが海賊の脅威に晒されていることをヴィーンラディ王国側に伝える。

 エルシュリーもそれを聞き、ジェクトが言っていたことを重ね合わせて考え込む。


「ふうむ……となると奇妙なもんですな。バーレンからやってきたあのジェクトとかいう男がワイバーンの上から見たという妙な船団と、そちらで出没しているという海賊は何か関係がある可能性もありますな」

「ええ。私もここに来るまでにアルバスやメリラと話し合っていたのですが、無関係とは到底思えませんで」


 だったらすぐにでもその海賊なり、妙な船団なりを調査に向かうべきだと考えている二王国の国王たちだが、その二人に待ったをかけたのがヴィーンラディ側のもう一人の騎士団長だった。


「お待ちください陛下」

「ん? どうしたジェラード?」

「最近、北の方角で妙な飛行物体の目撃情報があったのをお忘れですか?」


 口を挟んできたのは、ルディアと二人きりになっていた騎士団長のヴェンラトースと同じくピンク色の髪の毛を持つ中年の男だ。

 無精髭に体格の良い身体で貫禄のあるいでたちをしている彼こそ、ヴェンラトースの上を行く騎士団長のジェラードである。

 彼はその妙な飛行物体の調査もおろそかにできない、との旨を自分の主君に伝える。


「最近は魔物の動きも活発になってきており、騎士団も警備隊も疲れが出てきております。とてもそれに割ける人員は……」

「ふーむ……となると、ここは噂のあの男に頼むしかないかな?」


 それを聞いたシュア王国のアルバスが声を上げた。


「もしかして、レイグラードの使い手のルギーレさんですか?」

「いや、彼ではないです」

「え?」


 突然やってきた彼に頼むなど、予言者に逃げられてしまった自分たちのメンツがこれ以上丸潰れになってしまうだけである。

 それに騎士団と関わりがある人間ならまだ他にもいるので、エルシュリーはジェラードに命じてその人間たちを至急呼ぶように動き始めた。

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