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332.先にやるべきこと

「……それで、挑戦を受けたと?」

「ええ。ルディアをこの国から自由にするためには、それしかないと思いまして」


 バーレンから遅れてやってきたジェクトに対して、ルギーレは真剣な表情でそう言う。

 しかし、その前にやるべきことがあるのもまた事実だった。


「まずはこの国に迫っているであろう危機を排除するのが先だな」

「ええ、それは俺も同じ気持ちですよ」


 エルシュリーとの会談を終えたルギーレは、まずこれからやるべきことを終わらせるために動こうと相談する。

 しかし、気になるのはルディアのメンタルだった。


「なあ、ルディアさ……なんか元気なくないか?」

「え? ううん、いつもの私よ」

「そ、そうか?」


 あの騎士団長であるヴェンラトースと二人きりにさせられてしまったことで、何か良からぬことをされてしまったのではないか?

 そんなドス黒いことが行なわれていたのだとしたら、絶対に許すことなんてできない。

 そんな考えが頭の中を駆け巡るルギーレとは別に、ジェクトから気になる話が飛び込んできた。


「この話をするのはここにいる人間でルギーレが最後なんだが、こっちに向かってワイバーンで飛んでくる時に、海の方に不審な船団を見たんだ」

「船?」

「ああ。今頃は国王にも伝わっているだろう。ファルスとシュアは今ちょっと天気が悪いみたいで海の上を飛んできたんだが、このヴィーンラディの南側の海の方にその奇妙な船団を見て、怪しいと思ってシェリス陛下をはじめ各国のトップたちに報告した」


 しかし、その南側の海に一番近いファルスとシュアでは天気が悪いために、調査部隊を出しても海の荒れ具合によって被害が出てしまうだろうということで、このヴィーンラディ王国しか動けない状態になっているとの話だった。


「でも……船団って言っても色々あるだろう。例えば海賊だって船団を組んで来るだろうし、商人の船だってでかい所は何隻も船をもって大きな取引をしに来るだろうし……正体はある程度予想できていないのか?」

「すまないがそこまでは偵察できていない……」


 ヒーヴォリーの疑問に、ジェクトは残念そうに頭を横に振った。

 それは船の目線で見た場合を想定して、遠くから眺めることしかできなかったという。

 空の彼方からワイバーンがいきなり近づいてきたら、それがたとえ承認であれ海賊であれ警戒するのは同じことであるし、どちらにしてもそうした魔物に対する防衛の手段は持っているだろうから、下手をすれば自分が撃ち落されてしまうかもしれないという危険性を考えると、遠くから望遠鏡で見てみることしかできなかったらしい。


「かなり距離があったが、船が大体十隻ほど集団で航行していたのはわかった」

「その船の大きさはわかるか?」

「ああ。それが奇妙なもんでな。大きさも種類も全然バラバラで、統一性という面ではゼロだった」

「何だそりゃ? そんなんじゃあ進むスピードもバラバラだったろ?」


 しかし、バリスディの指摘にジェクトは首をひねった。


「いや……俺が見た限りではかなり統率が取れていた。オールを漕いで進む軍艦みたいなのもあったし、魔力を動力にしているのであろう船もあったし、一般的な帆船もあった。大きさもさっき言った通り小さいのから大きいのまで一貫性がなかったんだが、妙にまとまっているような気がした」

「へぇ、そりゃ確かに気になるな」

「あいにく俺は船には詳しくなくてな。もっと詳しい人間がいればその奇妙な船団の正体が掴めるのかもしれないが、今はまだそこまでしかわからん」


 ジェクトの所属しているバーレン皇国騎士団にしろ、ヒーヴォリーとバリスディが所属しているシュア王国騎士団にしろ、メインの活動場所は陸地なのである。

 もちろん両国の騎士団にも海の治安を守る騎士団は存在するのだが、やはり陸地が主な戦場となるのでその数は絶対的に少ないのである。

 そしてルギーレやルディアも船旅というものを全くと言っていいほど経験していないうえに、この世界は一つの大陸しかなくその中で全てが完結してしまうので、船は物を運ぶ手段だったりよほどの物好きでもない限りは使うことがないのだ。


「船か……そう考えると結構な盲点かもしれないですね」


 だからルディアはこう考える。


「船だったら魔物が出るとか、そもそも見張りの人が少ないとかいう理由で一種の無法地帯みたいなものだと思うんですよ。陸地や空にばかり注目しているとなれば、海の監視はおろそかになってしまう。それこそ海産物を収穫するのに向かう漁師さんとかでもない限り、海のことを熟知している人間は少ないでしょうね」

「何が言いたい?」

「ほら、あのニルスって人は唯一海の向こうにある島から渡ってきたわけじゃないですか。となればワイバーンで渡ってくる以外にも、船での移動にも知識が精通していたって不思議じゃないかなって思ったんですよ」

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