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325.新たなる敵

「……死んでいるわ」

「そりゃああの高さから落ちたら助からないだろうなあ」


 目の前に横たわっているのは、すでに事切れてしまっているリュドの亡骸だった。

 考えてみれば前回の戦いで瀕死の重傷を負って、そこから魔術で回復してもらったばかりの病み上がりの状態でワイバーンに乗って逃亡したのだから、満足に身体を動かせないのも当たり前の状況だった。

 だが、もう一人のワイバーンの乗り手であるあの男の姿が見えなくなってしまっていた。


「ワイバーンがどこかに飛んで行ってしまったことを考えると、恐らく彼も無事ではないでしょうね」

「そうだな。あの高さから落ちたら誰だって死ぬさ」


 木がクッションになったらしく、葉っぱが身体の至る所についているリュドだが、それでもこうやって死体になってしまうということはやはりそれだけの衝撃が免れなかったといえる。

 とりあえず今の段階でできることは済ませたので、これからどうするべきかを考える二人と一匹だが、ひとまず壊されてしまったアサドールのあばら家の修復作業から始めようということになった。


『吾輩の家を壊されてしまったんだから、それ相応の報いをもう一人のあの乗っていた男にも受けてもらいたいものだが、ここからどこにいるかを探るのは至難の業だな』

「ドラゴンの能力でもですか?」

『ああ。そもそもドラゴンは確かにこの世界の看視者ではあるが、何でもできる存在とは思わないでくれ。吾輩たちは七匹揃って初めてこの世界の看視者として成り立っているんだからな』


 いわば、今の自分たちはパズルを完成させるために必要なピースのような存在なのだとアサドールは説明する。

 それが欠けてしまっている今の段階では、まだ十分に世界の看視ができているとは言い難いからだ。


「とにかくみんなの所に戻りましょう。それから話を進めればいいわ」

「そうだな」

『よし、それじゃあ乗ってくれ』


 頭の上に大きくて長く、そして鋭い一本の角が生えているアサドールが背中に再び乗るように誘ってきたので、ルギーレとルディアは素直に背中に乗って再び大空へと旅立つ……はずだったのだが、ここで思わぬ邪魔が入った。


『……伏せろ!!』

「え?」

「くっ!!」


 反射神経で勝っていたルギーレが、そのアサドールの大声に従ってルディアの頭を押さえつけながら、自分も身をかがめる。

 するとその瞬間、二人の頭上を一本のハルバードが飛んで行ったのだ。

 いきなりの出来事に何が起こったのかわからないままだったが、アサドールは自分たちに向かって近づいてくる人間の気配をキャッチしていた。

 その近づいてきた人間というのは……。


「貴様ら……よくも私の邪魔をしてくれたな!」

「あっ、あんたはさっきの!?」


 自分で投げつけたハルバードを回収しつつ一行のもとに現れたのは、先ほどリュドと一緒に地面に向かってワイバーンの背中から落ちて行ってしまった、もう一人の人間の姿だった。

 そしてその緑と赤の二色の髪の色をしている中年大男に、ルディアは聞き覚えがあった。


「あれ、ちょっと待ってよ。この人って確かリュドが言ってたヴォレナークって将軍じゃないかしら!?」

「へえ……そうかよ。だったらここであんたもリュドと一緒に死ぬべきだと思うよ?」


 そう言いながらレイグラードを構えるルギーレと、魔術をいつでも放てるように身構えるルディア、そして臨戦態勢のアサドールの一行を目の前にしても、さすがに将軍と呼ばれるだけのジェイデルは臆する様子を見せない。

 むしろ、ハルバードの紫色の柄を握るその両手に力がこもってやる気満々の状態だった。


「ふん、ガキめが……私たちを敵に回すとどうなるか思い知らせてやる」

「ワイバーンから落ちていったくせによく言うぜ。俺たちだってここまでのんびりと旅してきたわけじゃねえんだよ。それなりに修羅場くぐってきてんだからよ!!」

「ほう、それは面白い。ならばその修羅場をくぐってきたという腕前を見せてもらおうではないか!!」


 しかしそう言ってかかってくるのかと思いきや、ジェイデルはハルバードの金色に輝く斧の部分を一行に向けたまま動こうとしない。

 だったらこっちから動いてやろうと両足に力を籠めるルギーレとルディアだったが、それよりも先に動いていたのはこの場にいる人間たちやドラゴンではなく……。


『っ!?』

「うお!」

「きゃああっ!?」


 なんと、先ほどどこかに飛んで行ったはずのワイバーンがジェイデルの元に戻ってくるために突っ込んできたのだ。

 さすがに長年付き合ってきているだけあり、相棒の匂いはきちんと覚えているらしい。

 ルギーレたちが怯んだところでジェイデルはその相棒の背中にまたがり、空から攻撃するという手段に出たのだった。

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