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324.増えた目標

「助けに来てくれたのはいいけど、もうちょっとやり方を考えて欲しかったわね、ヴォレナーク将軍」

「仕方ないだろう。相手は大勢いるんだからこれしか思いつかなかった」


 リュドを助けに来たワイバーンの乗り手……旧ラーフィティアの将軍ジェイデルは、彼女を乗せて大空へと飛び立つ。

 そして向かうはどこかといえば、そのままシュアの王都コーニエルだった。


「戦闘機の新しい奴を用意したから、それでじきにマリユスとベティーナがやってくるはずだ。だからその前に私が君を向こうまで送り届ける!」

「わかったわ!」


 意識がなかった間に没収されてしまっていた銃も、先ほどの騒ぎに乗じて上手く回収できた。

 ベッドのすぐ近くのテーブルに置かれていたのが上手く転がってきたので、何とも幸運な話である。

 しかし、まだ油断ができないのは後ろからやってくるであろう追っ手であった。


「……ねえ、後ろからさっきの連中が追いかけてきているだろうからスピード上げて!」

「任せなさい。このワイバーンは私と長年苦楽をともにした相棒だし、風属性だからスピード勝負なら負けないんだ!」


 そう言いつつ、ジェイデルはワイバーンの腹を蹴って加速させる。

 もちろん落ちないようにリュドはジェイデルの腹に両手でしがみついて、一気に追っ手を振り切ったと思って後ろを振り向いた。


(これだけのスピードについてくるのは、いくら伝説のドラゴンだって無理……)

「ぬおっ!?」


 振り返れば奴がいた。

 引き離すどころか、ワイバーンの尻尾に鼻先がくっつきそうなぐらいまでに急接近している緑色のドラゴンの姿がそこにあった。

 そのテールトゥノーズの状態を作り出している緑色のドラゴンの背中には、あの役立たずが乗って追ってきていたのだ!!

 プラス、役立たずと最初に再会した時に一緒にいたあのルディアも乗ってきているので、どうあっても自分たちを逃がさない算段らしい。


「何やってんのよ、追いつかれてるじゃない!! さっきスピード勝負なら負けないって言ったばかりでしょ!?」

「そう言われても、私のワイバーンだってすでにトップスピードまで加速しているんだぞ!?」

「じゃあこのワイバーンが遅いのよ! もう老人なんでしょ、あなたと同じで!」

「な、何だと!?」


 まさか自分まで馬鹿にされてしまうと思っていなかったジェイデルは、ワイバーンを操るのも忘れてリュドに食って掛かる。


「ふざけるな! いくら勇者の君でも私を侮辱すると許さんぞ!」

「そんなことより前見てよ!」

「そんなこととは何だ、そんなこと……うおわっ!?」


 馬鹿にされたワイバーンのスピードが落ちてしまったところで、後ろから追ってきている緑のドラゴンによる横からのタックルがワイバーンごと二人を吹っ飛ばした。


「え……きゃああああああああっ!?」

「ぬうおあああああああああ……!?」


 ワイバーンが空中で翻ってしまい、そのまま背中に乗っていた二人は真っ逆さまに地上へと落ちていく。

 しかし、そんな二人を見ても緑のドラゴン……アサドールは怒りに震える状態が続いていたのだった。


『吾輩の家を……今までの研究の成果をよくも!』

「落ち着いてくださいアサドールさん!」

「そうですよ! 追わなきゃいけない目標物がまた増えちゃったんですから、ここであの二人を見失ってしまってはせっかくの撃墜も無駄になります!」


 二千六百二歳と、七色の伝説のドラゴンの中で最も若いドラゴンのアサドールは身体を使よりも魔術を使うのが好き。

 ……なのだが、気の短い性格で気難しいのが難点。

 人間の姿ではロングボウを使う弓使いで、弓の扱いに関しては七色のドラゴンの中で最もレベルが高いが、接近戦は大の苦手。

 森の力を借りて敵をツタで拘束したり、枯れた植物を再生したりする事も出来たりする魔術の使い手ではあるが、空中戦では条件が整わない限りそれも意味をなさないので、全速力でリュドの乗ったワイバーンを追いかけて体当たりをかますぐらいしか思いつかなかった。

 だがそれによって思わぬ仲間割れが発生したようで、結果的にワイバーンこそ逃がしてしまったものの、乗っていた二人を遥か下の地上へと落下させることに成功した。


『わかっている! だがどちらを追うんだ?』

「さっきの女を追ってください!」

『わかった!』


 考えてみれば、あの女を自分の家に連れてきたことによってワイバーンのあの男にマイホームをバラバラにされてしまったのだから、全ての元凶はあの女だろうと気が付いたアサドール。

 彼はグイっと首を動かして身体の向きを変え、落ちていったリュドを追いかけて自分も降下し始めた。

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