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323.ダメだよ?

 ようやく自白剤の効果を消す薬を打たれたリュドだが、まだかゆみが至る所に残っている身体のままで話さざるを得なかった。


「……今はこれだけのことしか知らないわよ」

『じゃあ俺様と戦ったその戦闘機ってのも、それからお前が持っていたこの拳銃ってのも全部、ニルスがシュアとヴィーンラディの魔術師たちを買収して一緒に開発したってんだな』


 その二つともに撃たれた経験のあるエルヴェダーがそう聞けば、かゆみに耐えた結果汗で額に髪の毛が張り付いている状況のままリュドが頷いた。

 その新開発兵器の他に彼女が話したのは、今のニルスたちに協力している旧ラーフィティア王国の人間たちのことだったり、ウィタカーたちが不穏な行動をしていることだったり、霧の島の中に行ったことがあるということであった。


『しかしまあ、そこが吾輩たちの王国だというのがバレてしまっているみたいだし、帰ったとしても一部分しか見ないような吾輩たちにも非はあるかな』

『あー、そりゃまあな、そもそも俺様たちが帰るのだって十年にいっぺんぐらいだし、その間に勝手に研究所とか造られてるってのはムカつく話だぜ』


 島全体を見ることは余程のことがない限りやめていた。

 それもこれも、全ては大陸の中にいる人間たちと島の中にいる人間たちの文明発達の部分での違いがあったからだ。


『あの島の中は、お前らが想像できないぐらいに文明が発達しているってのは前にも聞いたかもしれねえが、黒いドラゴンが地下から目覚めたらこの世界が崩壊するかもしれねえ』

「そんなにすごいんですか?」

『まあな。……この女もいることだし詳しく話す気は今のところはねえが、いずれ話してやる。とにかく、その黒いドラゴンが眠りから目覚めたら俺様たち六ドラゴンが束になってかかったとしても、多分敵わねえぐらいに強えからな、あいつは』


 そこまでの強さを誇っている黒いドラゴンだが、眠くなる時は眠くなるのでその眠ったタイミングを見計らい、六ドラゴンが総力を結集して黒いドラゴンを地下に封じ込めたのだという。

 しかし、気がついてみたらその地下室の上に研究所を造られていて、さらにはそのドラゴンを地下で眠らせ続けているというのだから、いつ目覚めてもおかしくはないだろう。

 一方で、アサドールの方は別のことを気にしていた。


『その黒いドラゴンのことは後からまた考えるとして、問題なのは開発が進められているというミサイルという名前の金属製の筒だろう』


 エルヴェダーが追いかけ回されたのもそれらしいが、それは運良く海に落ちたので爆発せずに沈んでしまっただけであった。

 だが、もしそのミサイルが着弾すれば場合によっては山を一つ消し去ることもできるぐらいの脅威らしい。


「それが発射されたら、真面目にこの世界が滅ぶだろうな」

「そんなの絶対許さねえぞ。どこまで性根の腐った奴らなんだよ!?」

「俺も同じ気持ちですよ、ヒーヴォリーさん、バリスディさん。とにかくすぐにでもその霧の島に乗り込んでミサイルを止めましょう!!」


 しかし、そこにアサドールが待ったをかけた。


『ダメだよ』

「え? 何でですか!?」

『先に逃げていったあの戦闘機の二人の行方を探そう。ミサイルの発射までにはまだまだ製作途中だということで時間があるものだと考えられるが、戦闘機がまだ他にもどこかにある可能性だってある。となれば、あの二人をまずは止めて爆撃の機会を永久になくすべきだと吾輩は思っているんだ』


 それもそうなのだが、このままだといずれミサイルも完成してしまう。

 となればここはせっかくドラゴンが二匹いるので、一匹はマリユスとベティーナを追いかけ、もう一匹でミサイルのある場所へと向かって破壊する。

 それで何とか二つとも同時進行が可能だろうと考えている一行だが、この森の中にあるアサドールのあばら家を突然大きな衝撃が襲ったのは、まさにその時だった。


『ぬぅお!?』

『うおわっ!?』


 あばら家だけあって、その揺れもかなり激しい。

 最初は地震か何かかと思った一行だったが、横揺れの後に轟音を立てて壁が崩されてしまった。

 そしてその壁の穴の向こうから、ニュッとワイバーンの頭が顔を出してきたことで、ワイバーンがここに向かって突っ込んできたのだとわかった。

 しかも、その突撃によってせっかくリュドを縛り付けていたベッドも壊れてしまい、その衝撃で手首を縛っていたロープが外れた彼女は一目散にワイバーンに向かって駆け出した。

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