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320.地下研究所

 研究所の中を歩き回ることに必死で、尾行されていることなんて全く気が付いていないこの三人。

 先ほどの長い洞窟の中でも、どうせ一本道なので恐ろしく距離を開けていても最後には一緒の目的地にたどり着けるのだから、とオーレンとヴァンリドが判断していたせいで、やはり尾行に気が付いていなかった。

 今はそれよりももっと大事な話……そう、この研究所の中で何が行なわれているのかを確かめることから始めているのだ。

 それで頭がいっぱいな三人は、人の気配がないかどうかを十分に確かめながらの探索である。


「さっきのドラゴンにはすごく驚いたが、この研究所の中って物凄くセキュリティ意識が甘いのな」

「ああ……俺でももう少し警戒するぜ? ましてやあんなドラゴンがいるような研究所なんだから、そこら中に見張りを置いていたっておかしくねえだろうしな」

「でも、それを置いていても機能していないんじゃあどうしようもないがな」


 トークスのセリフに、ヴァレルとウィタカーの二人も「確かに」とうなずいてしまう。

 黒ずくめのいで立ちをしている男が三人、こうして歩いているだけでもかなり目立って仕方がないのに、そんな三人を見かけても警備員たちは騒ぐどころか、フレンドリーに話しかけてくる始末だった。


「内部にはとことん甘いって感じか?」

「さぁな。でも、俺たちは形式上まだあのニルスの部下ってことになってるから、俺たちのデータもこっちに来てんのかもしれない」

「そう考えるとまあ、つじつまが合うか」


 この地下研究所に来たのは初めてであっても、この島に来たのは初めてではない三人。

 ここはニルスの息がかかっている場所だということで間違いなさそうだが、多分あのドラゴンの研究をしているのであろうと読んでいる。

 だが、この時の三人はこれから自分たちに降りかかる事態を全く知る由もなかった。

 そもそもこの研究所で研究が進められているものは、先ほどのドラゴンだけではなかったのだから。


「……ん? 何だこの部屋?」

「魔術実験場……まあ、やろうとしていることはわかるが、それにしては扉が大きすぎるような気がしないか?」

「そう言われてみれば、確かに……」


 トークスの指摘に、ウィタカーとヴァレルも違和感を覚える。

 魔術研究所の中で今まで見てきたドアというドアは、人が一人出入りするので十分というぐらいの大きさしかなかった。

 だが、ここのドアの大きさはどうだろう?

 それこそまるで、大陸にある各国の城の謁見の間に通じている両開きのドアと同じく、妙に横幅があるのだ。

 それだけではなくて縦にもスペースが取られているだけあって、何か大きなものを出し入れできるように作られている気がするトークス。


「とりあえず入ってみよう。あまり立ち止まっていたら逆に怪しまれそうだし、俺たちは一応部外者だからな」

「それもそうだな」


 そもそもあの洞窟の中を通ってここにノーチェックで入ってこられたこと自体が不思議なんだけど、とウィタカーが心の中でぼやきながら、彼はそっとそのドアを開けて中へと進む。

 すると、そこには驚愕の光景があったのだ。


「へ?」

「え、あ、おい……何だありゃあ?」

「でっけえ……」


 こんなリアクションをとるのは先ほどの黒いドラゴンを見た時以来だが、もちろんその部屋にこのドアは繋がっていない。

 では一体三人が何を見たのかというと、そこにはドーム状になっている大きな屋根を上に見ることができる、巨大な地下の部屋だった。

 これは下手な騎士団の屋内訓練場よりも大きな場所だが、それもそのはずで部屋の中では金属製の大きな筒が十本ほど、空に向かってせっせと組み上げられているのだから。


「金属製の筒……あれもまさか、今までニルスが造ってきたって言ってたドラゴン型の生物兵器とか、各種昆虫型の兵器の仲間だっていうのか?」

「十中八九、そう考えて間違いないだろうな。しかしあれだけ大きな金属製の筒……しかも上が先端かな? 上に向かっていくにつれて湾曲しているとなると、もしかしてここから発射するのか?」


 三人は今までの人生の中であんなものを見たことがないのでわからないし、前にこの島に来た時だってこんなドーム状の建造物を目撃したこともなかった。

 ただ一つわかることは、これだけ大規模な作業が必要なのでシュアやヴィーンラディの魔術師たちを買収して応援を頼むという理由だった。


「魔術のスペシャリストたちの知恵を借りて造り上げたんだろうな」

「でも……こんなものを使って何するつもりなんだろうな?」


 独り言のつもりでそう疑問を呟いたヴァレルだったが、その瞬間きちんと答えが後ろから返ってきた。


「決まっているだろう。爆撃するんだよ」

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