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319.光の先で見たもの

「こ、これは……!?」

「な、なんだこいつ!?」

「すごい殺気だ……逃げた方が良さそうだぞ」


 三人が見上げる先にあるもの。

 それはただの物体ではなく、横たわって目を閉じている真っ黒なドラゴンだったのだ。

 洞窟の中にいる時には聞こえてこなかったのだが、こうして洞窟を抜けてみると少し聞こえるぐらいの寝息を立てている。

 少しと言っても静かなものではなく、ゴオオオとその巨体にピッタリの音量だ。

 しかし、三人ともこんな真っ黒なドラゴンは見たことがなかった。


「寝てるんだよな……?」

「そ、そうだろ。じゃなかったら今頃俺たち全員、こいつの腹の中にいてもおかしくねえかもな?」


 ドラゴンを起こさないように、なるべく顔を近づけて会話をするウィタカーとヴァレルの横で、腕を組んで何かを考え込むトークス。

 そして少し考えた後、彼はある一つの話を思い出した。


「……それよりも、気になることがあるんだが話してもいいか?」

「何だよ?」

「確かあのレイグラードの使い手は、今ドラゴンを味方につけているんだろう?」

「ああ、そうらしいな」


 もしかしたら、向こうが手を組んでいるドラゴンとこの黒いドラゴンには大きな関係があるかもしれない。

 そこまでトークスが言った時、ヴァレルがあるものを見つけた。


「おい、こりゃ何だ?」

「どれどれ?」


 三人が洞窟から出てきたその先の部屋は、こんな巨体のドラゴンが入れるぐらいの丸くて大きな場所だった。

 ややくすんでいるが壁も床も一面が白で、ドラゴンの黒とのコントラストが鮮やかなその中に、三人が見たことのない機械があった。

 何やら操作するようなものらしいが、その用途はどうやらこれらしい。


「……おい、このドラゴンって全部の足と首を鎖で縛られているんじゃないのか?」

「あれ、本当だ。そしてその鎖がこの機械につながっているのを見ると、どうやら捕まっているみたいだな?」


 しかし、だからと言って自分たちが勝手に解除するわけにもいかないだろう。

 まずはこんな装置があることを知れただけでも良かったのだが、誰が何の目的でどうしてこうなっているのかを調べる必要がありそうだ。

 それこそ、ドラゴンも出入りできそうなぐらいに大きくて広い灰色の扉があったのでそれをそっと開けてみると、どこかの研究所らしき施設の地下に出た。

 天井から明かりが煌々とついているのを見ると絶賛稼働中らしいのだが、三人を出迎えてくれるような雰囲気かどうかはまだわからないので、とりあえず用心しながら進んでみることにする。

 そして、遅れてドラゴンのいる部屋にやってきたオーレンとヴァンリドの二人もその状況に驚いていた。


「おい、ここ……」

「ええ、あのニルスって人からうわさには聞いていましたが、まさか本当に伝説のドラゴンのリーダーをこうして捕らえているとは思ってもみませんでしたよ」


 それもこれも、全てはニルスから聞いた話にしか過ぎなかったのがようやく繋がった。

 ニルスいわく、霧の島の地下にある研究所の最奥に伝説のドラゴンたちのリーダーである黒いドラゴンを眠らせているとの話があったのだが、それがまさにここの話らしい。


「だとしたら、今まで通ってきたこの長い通路は誰が何のために造ったんだ?」

「それは私も聞いていませんが、何かしらの目的がある事は間違いなさそうです。とにかく私たちもあの三人を追いかけましょう」


 だが、その前に一応ニルスに連絡を入れておく。

 すると、彼はいたって平然とした態度だった。


『そうか、そこの出入り口を見つけたんだね。まあそれは別にいいんだけど、研究所のことをベラベラ喋られるのは困るね』

「今すぐ捕まえても大丈夫ですか?」

『いや、尾行は続行。何かしようとしたら捕まえて。それからその長い洞窟って、黒いドラゴンが人間になった時に、こっそりと人間たちの世界に出入りするために造ったらしいんだよ』

「そうなんですか?」

『うん。黒いドラゴンは嫌でも目立つから、それが嫌で黒いドラゴン自身がそれを造ったらしいよ。あ……機械はいじらないでね。それいじっちゃうと拘束が解けちゃうから。ああそれと、その三人が変なことしないかちゃんと見張ってて。何か持ち出そうとしたりしてたら殺しちゃっていいから』

「かしこまりました」


 殺害許可ももらって、これで尾行が続けられるということでオーレンとヴァンリドも研究所の中へと進んでいく。

 だが、研究所の中へと入っていった人間たちの中で誰一人として気が付いた者はいなかった。

 黒いドラゴンの寝息が少し弱くなり、その大きくて長い黒い尻尾がパタリと動いたのを。

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