318.地下で見つけた新事実
「こ、これって……」
「げーっ、これって本当かよ?」
「やっぱりあの噂は本当だったらしいな」
三人が一様に驚いているのも無理はない。
はるばるエスヴェテレスまで戻ってきて、それからレイグラードが保管されていた遺跡の中に潜った。
そしてルギーレがあの金属の狼と戦った広場でその激闘の跡を確認した後、さらにその奥へと進んだ三人は、ウィタカーが以前聞いていた妙な噂を確認した。
「遺跡から繋がっている地下の通路があるらしいって、ロークオンが話していたのを思い出したんだ」
「確かあれだろ、魔力の流れがなんだかおかしいって話だったもんな。だからここの地下にまだ公になっていない通路か何かがあるんじゃねえかってあの話だろ?」
「そうだな」
もうロークオンは死んでしまった。
そしてその彼が言っていた話を信じてここまで来た結果、遺跡の地下の奥にあった隠し扉を開き、その奥にあるパズルを解いた。
ここは三人の中で一番の頭脳担当のトークスが大活躍し、更にその奥に進んだ結果、地下のトンネルが発見されたのである。
しかもその向こう側が見えなくなっているので、どこまで続いているのかもわからない。
「念のために、三人それぞれ持ち切れないぐらいの食料をこうやって持ってきてよかったぜ」
「行くのか?」
「ああ。どうせ一本道みたいだし……噂の霧の島の知らない場所に入れるチャンスかもしれないだろう?」
ただし、まだその向こう側がわからない以上は最大限に警戒しなければならない。
入れなかったら入れなかったで諦めるしかないだろうが、その場合はまた地上からアプローチすればいいだけだ。
明らかにこの洞窟は自然にできたものではなく、人工的に造られたものである。
もしかしたら、自分たちもニルスの導きで降り立ったとはいえ一部分しか見られていないあの霧の島の、まだ未知なる場所に繋がっている可能性だってある。
考えただけで夢が膨らむウィタカーだが、まずはその第一歩を踏み出すことから始めなければいけなかった。
「あのニルスってのが最初に、霧の島に向かうって言われた時には驚いたけどさあ……内部だけを見ても妙なもんが沢山あったよな」
「そうだな。あれだけの未知の技術を生み出せる霧の島の実態はまだまだ探れていないから、俺も非常に興味がある」
ルディアを誘拐してきた時、ニルス曰く知られたくない部分があるということで、立ち入り禁止とされてしまった場所には入れてもらっていないこの三人。
だが、今ならそれを探ることができるかもしれない。
ニルスがどうしてあれだけの知識や技術を持っているのか?
あの霧の島にはまだまだ自分たちの知らないことが沢山あるだろうし、それを大陸に持っていけば大金持ちになれる可能性だって十分に考えられる。
(世界征服もやりやすくなるだろうからな……)
当初の目的である世界征服だって、もちろん忘れていないウィタカーたち。
今までニルスが開発して使わせてもらっていた兵器だって、横取りできるかもしれない。
(わざわざシュアとヴィーンラディから魔術師を買収しまくったのに、こんな抜け道を通ってそれが奪われてしまうなんて、あいつも完璧超人じゃねえってことだな)
そう考えつつひたすら歩き続け、たまに立ち止まって自分たちが今どの辺りをどれだけ進んできて、そしてどこへ向かって歩いているのかをしっかりと確認しながら進む三人。
一本道といっても一直線に続いているのではなく、曲がりくねったり上ったり下ったりを繰り返しているのだ。
しかもかなり長い時間進み続けることを想定しているのか、途中に五人ぐらいが余裕で入り込めるように掘られている横穴まであった。
「おっ、ここにもあるぜ穴が」
「よし、休憩しよう。しっかし本当にすごい技術だぜ。穴の中にある赤い輪の印の中に入ったら、魔力が回復する仕組みにもなっているんだしさ」
「それに食べ物や飲み物もある程度ストックしてくれているのか。となるとやはり、ここの洞窟は人間や馬車が通れるようになっているみたいだ」
地面は多少デコボコしているものの、馬車で進むには支障がないだけの整備もされている。
こうして歩きに歩き続けて何時間……いや、何日経過したかぐらいの時間をかけていたこの三人だったが、ようやく出口に近づいてきた証として風を感じられるのと同時に、出口の光が前方に見えてきたのだった。
「おおっ、あれって出口じゃねえのか!?」
「そうだ……きっとそうだぜ!」
「この平坦な景色も見飽きたからな。さぁ、何が待っているのやら?」
ウィタカーを先頭に思わず駆け出し、光の中へと飛び込む。
しかし、三人がその向こうで見たのは全く予想していなかった光景だったのだ。




