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316.大損害

 しかし、墜落させたまではよかったものの問題はその後だった。

 平原に墜落した金属製の鳥は、そのまま先端部分から地面に激突して爆発炎上したのである。


『うおお、やべええっ!!』

「くっ!」


 何とかギリギリでその爆発に巻き込まれることだけは回避したものの、これでは中の人間はきっと火だるまになってしまったに違いない、とルギーレもエルヴェダーも思ってしまった。

 その爆発の大きさが想像していた以上にあったことと、火に強いエルヴェダーはまだしも人間であるマリユスやベティーナがあの爆発に巻き込まれて生きているはずがない。

 そう考えた方が一番自然だからである。


「……でも、何だか不安になるのはなんででしょうね?」

『何が不安なんだよ?』

「いやあほら、あいつらのことですからしぶとく生き残ってたりしてんじゃないですかねえ?」

『考えすぎだぜそんなの』


 しかし、今まで下準備だけは周到にしてきていたルギーレは、一応念のために周辺を捜索しましょうとエルヴェダーに提案する。

 十中八九、あの爆発に巻き込まれて火だるまになったであろうと考えているエルヴェダーだが、この人間がそこまで言うのなら……と一応その捜索を了承した。

 周囲は相変わらずの平原であり、身を隠せるような場所は岩壁の向こうだったり遠くに見えている森の中だったりしかない状況である。


『……で? どうだ、何か見つかったか?』

「いいえ、何も見つからないですね」

『あの爆発に巻き込まれて生きてる人間がいたら、俺様だって見てみてえよ。それよりもアサドールとか残りの人間たちとかの被害のこともあるんだし、今回のことはちゃんと王様に報告しなきゃなんねえだろ?』

「そうですね……それじゃ戻りましょうか」


 周辺をエルヴェダーとともに捜索してみたものの、やはりあの二人が脱出した形跡は見られずじまいで終わってしまった。

 だが、ルギーレはあんな爆発程度であの二人が終わるようなタマじゃないというのを心のどこかで思ってしまっている。


(悪の道に進んでしまったとはいえ、あの二人は勇者パーティーのツートップと言われている二人だからな。俺が知っている限りのあいつらはまるでゴキブリみたいに生命力が強いんだからな)


 だから、この程度の爆発で死んだとは到底思えない。

 そう思えて仕方がないルギーレの不安は、見事に当たってしまっていたのだった。


「……行ったか?」

「ええ、もう出ても大丈夫ね」


 そのマリユスとベティーナの二人は、ルギーレの予想通り死んでいなかったのだ。

 爆発に巻き込まれる寸前、非常脱出装置を押して椅子ごと戦闘機の外へと飛び出した二人は、そのままお互いに茂みや平原の草むらがクッションとなって大したケガもせずに生還していたのだ。

 あの役立たずとそれを乗せているドラゴンが必死で戦闘機を追いかけてきていて、黒煙が上がっている中での脱出。

 そして爆発にばかり気を取られているルギーレとエルヴェダーは、戦闘機から吹き出し続ける黒煙が煙幕となって上手く脱出する光景を遮ってくれたこともあって、それに気づかず空の彼方へと飛び去ってしまった。

 まさに不幸中の幸いといえばそうなのだが、それよりも二人が思っていることはこれしかなかった。


「まずいな……ニルス様になんと説明すればよいのやら……」

「私も胃が痛いわ」


 墜落現場に足を運んだ二人は、目の前でまだ燃えている戦闘機の残骸をただ茫然と見つめることしかできなかった。

 ニルスがいろいろと試行錯誤をして創り上げた、次世代の最高傑作ともいうべき兵器での襲撃をドラゴンに邪魔された結果、こうして鉄屑にしてしまったのだから。

 長い時間をかけて、金もたっぷりと使って作り上げたものがスクラップになってしまった現状をどう説明するべきか。これは大損害である。


「……とりあえず、ありのままを話すしかなさそうね」

「やっぱりそう思うか?」

「そう考えるのが当然よ。ごまかしたってすぐにバレるんだし」

「そうだよな……。まず、シュアへの襲撃計画は大幅な延期になりそうだな」


 ニルスは果たして最後まで説明を聞いてくれるのか?

 そしてもう一つ、一緒にこっちにやってきたリュドの消息もわかっていないのである。

 先ほど自分たちと戦っていたのはわかったが、戦闘機を直すのに必死だった二人は彼女のことまで気が回っていなかったのが現状だった。


「ひとまず移動手段を探しましょう」

「それだったらあの王様たちに迎えに来てもらえばいいだろう?」

「あ……そうか。ごめん、何だかいろいろパニック状態で」


 深呼吸をしてそのパニック状態を少し和らげたベティーナは、懐から魔晶石を取り出してその迎えをしてくれるであろう人物に連絡をし始めるのだった。

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