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312.裏の存在

「へえ、ドラゴンを二匹味方につけたか」


 魔物たちの軍勢にひそかに紛れ込ませていた、鳥の形をしている映像記憶装置。

 遠隔操作が可能なそれを使ってルギーレたちの戦いを監視していたニルスは、納得した表情でうなずきながらつぶやいた。


(まぁ、いくらドラゴンを味方につけたって私とあれにはかないっこないがね……)


 だから君たちの頑張りは全部無駄に終わってしまうんだよ、と心の中でつぶやく。


(でも、それより気になるのはウィタカーたちだねえ)


 先に偵察という形でシュアに乗り込み、それから連絡が取れなくなってしまっている。

 ニルスとマリユスによる二人のリーダーたちを動かして、上手く手駒にしていたはずだったのだが、ここに来てその片方の動きが怪しくなってきているとなれば警戒しないわけがなかった。


(マリユスたち勇者パーティーの生き残りはよく頑張っているみたいだけど、バーサークグラップルの連中が何を考えているのかがわからないな。だとしたらあの三人のうち、誰かを動かすしかないよね)


 マリユスとベティーナは戦闘機を操ってヴィーンラディ王国に行ってしまっているので、動かせる人間といえば今のところあの三人しか思い当たらないニルスは、魔晶石を使ってその三人のうちの一人に連絡を入れる。


「……ああ、今大丈夫かな?」

『はい、大丈夫ですけど……』

「実はね、ちょっと君たちに頼みたいことがあるんだよ」


 その通信の相手に、ウィタカーたちの行方を注意深く見守るようにと指示を出すニルス。

 すると相手から興味深い話が出てきた。


『ああ、そのことなんですが……』

「何? どうかしたの?」

『んん、私が見る限り少し怪しい雰囲気になってきていましてねえ。どうやらあの三人はニルス様を裏切ろうとしているみたいなんです』

「え? へえ……その話は面白そうだね。わかっている範囲でいいから、もっと詳しく聞かせてよ?」


 通信相手からの話によれば、どうやら自分たちに対するニルスの態度が気に食わなかったウィタカーたちがひそかに裏切る計画を立てているらしい。

 そして世界征服を企んでいるらしいというのがわかったのだが、ニルスにとってはそうなるとウィタカーたちも邪魔者ということになる。


「それはよくないねえ。だったらさあ、お互いにつぶしあってもらう作戦ってのはどうかな?」

『つぶしあいですか?』

「そうそう。敵の敵は味方っていうけど……まあちょっと意味が違うかな。敵の敵を味方として考えて、二組が上手くつぶしあうように仕向けてもらうのさ。あのレイグラード使いとウィタカーたちが手を組んだってわけじゃないから、どうにかしてうまく二組をぶつけ合って、お互いに倒れてくれればそれで十分だよ」


 しかし、通信相手にとっては不安要素が残る。


『おっしゃっていることはわかりますが、上手くいきますかねえ……それって』

「上手くいくように何とかするのが、君たちの仕事でもあるんだよ? じゃないと約束もなしだよ?」

『……わかりました。それでは私たちの方で策をちょっと考えてみましょう』

「話が早くて助かるよ。それじゃ、計画を練ったら私に報告して。それでいろいろと話を煮詰めて実行に移そう」

『かしこまりました』


 それで通信は終了したが、ウィタカーたちが裏切ろうとしているのはニルスにとっては痛手である。


(飼ってやった恩も忘れて、それを仇で返そうとしているなんてね)


 傭兵集団である彼らを金を出して雇っている以上は、しっかり働いてくれないとただの無駄遣いになってしまう。

 それどころか自分に対して牙を剥こうとしているなら、それなりの結末を迎えてもらわなければならない。


(頑張ってあの連中も仲間に組み込んだんだし、全てが終わったらちゃんと約束を守るふりをして一緒に消えてもらうんだから、ちゃんと手駒として動いてもらわないとねえ)


 そう考えながら、ニルスは立ち上がって部屋の外に出る。

 遠く離れている現地の様子も確認できたので、彼はこれからある場所へと向かうのだ。


(しかしまあ、あれだけ長く眠れるって言うのはやっぱり人間じゃないからかな?)


 建物の外へと出たニルスは、この土地のとある場所に存在している施設へと向かった。

 そこは彼以外に人の気配はなく、薄暗い雰囲気がなんとも不気味な洞窟。

 施設の地下に存在している、とある存在の封印場所であった。


(これが目覚めるまで後もう少し。それまでは醜い人間同士の殺し合いを、じっくりと見物させてもらおう)


 心の中でそうつぶやく彼の目の前には、黒くて大きなシルエットが鎮座していた。

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