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309.ドラゴンたちの苦手なもの

 それはアサドールが手をかざして魔力を送り込んでいる間、ずっと伸び続けてついには天井にも根を張り始めた。

 魔力の注入主はそれを見て注入をやめ、今度は少しだけ開いていた手を閉じる。

 すると今度はその伸びすぎた観葉植物から魔力が抜かれているらしく、天井に貼られていた根も外れて元通りに縮んでいく。

 そして最初の状態まで戻ったところで、アサドールはかざしていた手を下ろした。


『……と、まあこんな具合だ。吾輩は植物の成長を自由自在にコントロールできる能力の持ち主なんだ』

「凄いですね! そうなるとあれですか、薬草とかもすぐに成長させてたくさん採集できるってことですか!?」

『ああ。まあそれも吾輩はやらないがな。薬草をこちらで無限に作り出してしまうと、市場での需要と供給のバランスが崩れてしまうからな』


 人間界への影響を考えて、あくまでも自然を保護しなければならない場所でしか自分の能力を使わないと宣言するアサドール。

 エルヴェダーの貿易商の手伝いをしているだけあって、そうした人間社会でのビジネスに関しても考えた上での話らしい。

 そしてようやく日が暮れ、いろいろと目立たなくなったタイミングを見計らって屋外の鍛錬場の中で二匹は変身させてもらう。

 赤いドラゴンのエルヴェダーの背中にはルギーレとヒーヴォリーが乗り、緑のドラゴンのアサドールの背中にはルディアとバリスディが乗る。

 前衛と後衛のバランスを考えた上での振り分けだった。


『では行ってくる』

『ああ、気をつけてな。こちらのことは私に任せろ』

『油断すんなよ、おっさん』

『君に言われなくてもわかっている』


 そんなドラゴン同士のやり取りをシュア王国の騎士団員たちに見られながら、ルギーレたちは夜空に向かって飛び立っていった。

 流石にこの時間帯になるとかなり冷え込むが、そんなことは構っていられない。

 あの戦闘機というものは、時間帯や天候にかかわらず飛ぶことができるからだ。


『俺様たちも世界中を飛び回っているけど、俺様は雨の日には飛びたくねえな』

「やっぱり火属性だからですか?」

『そうだよ。ただでさえ水に濡れるとそれだけで火属性って弱くなっちまうのにさ。雨なんか降られた日には俺様は引きこもってたいね。シュヴィリスじゃないけど』


 ヒーヴォリーの質問に答えるエルヴェダーに対し、今度はルギーレからも質問が飛ぶ。


「逆にシュヴィリスさんは何が弱いんですか?」

『あいつは雷だよ。ただの雨の日だったらあいつは喜んで飛ぶんだけど、雷雨の日だけは絶対に嫌だって言ってた』

「ああ……」


 雷が水の中に落ちると、その時点で水の中にいる生き物は感電死してしまう。

 ルギーレもヒーヴォリーも今までの人生の中でそれを学んできたからこそ、水属性のシュヴィリスが雷が降る日に飛びたがらない理由を察した。


『で、さっきのおっさんドラゴンは水も雷も大丈夫なんだけど、風の強い日には飛びたくないって』

「へぇ~……それってもしかして、土属性のドラゴンだから風には弱いって?」

『うーん、ちっとちげえな。武術家というものはドッシリと構えていたいんだけど、風が強い日っていうのはどうしても飛び方のコントロールがしにくいって理由で飛びたがらないらしい』


 そしてもう一匹のドラゴンであるアサドールの背中で、ルディアからそのアサドールに質問が出る。


「アサドールさんにも苦手な場所とかはあったりしますか?」

『あるよ。火属性の場所』


 アサドールが言うには、植物は火が燃え移ったらすぐに燃えてしまうからそれを思い出してしまってどうしても嫌悪感を抱いてしまうらしいのだ。


『ちなみにセルフォンっているだろう。あのファルスの医者。あれはグラルバルトが好むような砂漠みたいに、乾燥している場所が嫌いなんだと。自分まで干からびてしまいそうだから』

「それはなんとなくわかる気がするよ、俺も」

『まあ、お主たちシュアの人間や魔術師のお主からすると、魔術の属性に当てはめてみればしっくりくるんじゃないかとは思うが』


 そう、確かにそうなのだ。

 ドラゴンたちもそれぞれの属性を持っているだけあって、それぞれに得意な分野と苦手な分野があるというのがわかった。

 しかし今回はそれよりも考えなければいけないこととして、属性が関係ないはずの魔術防壁が無効化されてグラルバルトがダメージを負ってしまうという展開があった。

 グラルバルトとアーロスの話しか知らないこの一行は、彼らを襲ったその金属の筒が一体何なのか、それを調査したいという気持ちもある。

 だからまずは今回の元凶になった戦闘機をさっさと見つけるべく、二匹のドラゴンはバッサバッサと翼を動かしてヴィーンラディ方面へと夜空を駆けていった。

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