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302.波動

「んー? あれは……?」


 戦いを終えてようやく回復し、登山道を歩けるようにまでなったアーロスが空を飛んでいく大きな赤い影を目撃した。

 だが、なんだか様子が変だ。

 大きな赤い影の正体はドラゴンかと見受けられるが、その後ろには後部から火を噴き出しながら飛んでいる……。


『あれは何だ? 金属の……筒?』

「俺はあんなの見たことないぞ。それよりも、前を飛んでいる赤いのってあれあんたと同じくドラゴンだよな?」

『そうだ。それもあの大きさからすると私の仲間だな』

「ええっ、本当かよ!?」


 その仲間が不思議な筒に追われているようなので、グラルバルトは自分も病み上がりの身体でありながら赤いドラゴンを追うことに決めた。


『今から私は元の姿に戻る。人間たちへの連絡は任せるぞ!』

「わかった!」


 とにかく、今現在の時点で繋がるメンバーにだけでも連絡を入れておこうとアーロスが懐から魔晶石を取り出すのを横目で見ながら、グラルバルトはパチンと右の指を鳴らした。

 すると人間の姿だった身体がまばゆい光に包まれ、その中でどんどんシルエットを変えていく。

 そしてアーロスが通信を終える頃には、そのシルエットはきちんとした黄色いドラゴンの姿になっていたのである。

 光が収まって現れたその黄色いドラゴンの姿に、アーロスは思わず見上げて感嘆の声を上げる。


「すげー……」

『そうか? ドラゴンなんてどこにでもいるだろう?』

「そりゃそうなんだけどさ、俺たち人間もドラゴンの餌になるわけだよ。だから迂闊に近づいたら食べられちまうわけ。こうして間近でじっくりと見られるなんて今までの人生の中で初めてだからよぉ」


 それに普通の黄色いドラゴンと違って、このグラルバルトは頭の部分がトゲトゲしくゴツゴツしているのが特徴らしい。

 さらにいえば尻尾も普通のドラゴンと形が違うので、できればもっと観察したいと思ってしまうアーロスだがグラルバルトが当初の目的を彼に思い出させる、


『まあ、私を見つめるのはいつでもできるだろう。それよりもまずはさっさと背中に乗れ。そして他のメンバーを乗せられるだけ乗せていきたいと考えているんだが、誰かに連絡はついたのか?』

「一応、セフリスのチームとサーリュヴェル団長のチームには連絡がついたんだが、グラカスとエリフィルのチームには連絡がつかないままだ」

『わかった。ならひとまずそのチームのメンバーだけは乗せていこう。私の背中は通常のドラゴンよりも広いからな』


 その言葉通り、ルギーレたち以外のチームメンバーを全て乗せても何とか飛べるだけの余裕があるグラルバルトの背中。

 しかし人間を乗せているので速度は遅めの上、赤いドラゴンが飛んで行った方向も詳しくはわからないのでやみくもに探し出すしかない……と思っていたのだが、グラルバルトとあの赤いドラゴンはこのシュアの看視者同士というだけあって波動を感じられるのだとか。


『私たち七匹のドラゴンの間には波動というものがあってだな。それはこの世界に存在しているどんな生物から感じ取れる波動とも違い、独特のものなのだ。だからそれを感じられる方向に進んでいけば、最終的には必ずあの赤いドラゴンのもとにたどり着ける』

「え、そんなのがあるの?」


 メリラを始めとする一行が驚きを隠せないのを背中からの視線で感じつつ、その波動を辿って自分の仲間であるあのドラゴンの行き先を調べるグラルバルトだが、その表情が少し険しくなる。


『ん……? 南の方角に向かっている。このまま進むと海に出てしまうぞ?』

「海……ということはもしかすると、その追いかけているものを海に沈める気なんじゃないでしょうか?」


 セフリスがそう予想する。

 実際にあのドラゴンを追いかけていた筒を見た感じでは確かにスピードが出そうなものだったので、上手く誘導すればその通りになるのかもしれないが、グラルバルト曰くそのドラゴンには問題が一つあるのだという。


『それはわからないでもないのだが、一歩間違えればあのドラゴンの命が危ないぞ!』

「え?」

『私たちは伝説のドラゴンだが、だからと言って絶対に死なないというわけではない。あのドラゴンは赤だから属性は火だ。そのドラゴンが溶岩の海の中に入っても何の問題もないのだが、普通の海に入ってしまうようなことがあれば最悪の場合は溺れ死ぬぞ!』

「そ、それじゃあ早く行かないと!」

『そうだな。それじゃあ急ぐからしっかり掴まっていろ!!』


 ルディアの叫び声に応じたグラルバルトがそう命じ、バサバサと翼を激しく動かしてスピードアップした。

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