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296.よみがえる記憶?

「技?」

「そうなんです。さっきの技なんて今まで俺が出したこと……いや、見たことすらなかったですもん」


 考えたこともなければ聞いたこともない。

 なのにどうして、さっきの犬を倒したらあんな光景が浮かんできたのだろうか?

 今まではレイグラードをいくら振るっても、最初のロックスパイダーを始めどんな敵を倒してもさっきみたいなことは起こらなかったのに、いったいどうして……?

 ルギーレの頭の中に数々の疑問符が浮かび上がるが、その答えを導き出すよりも今は先にやらなければならないことがあるのだ。


「ルギーレさんの出自に関係があったりするのでしょうか?」

「うーん、それはわからないです。確かに俺は捨て子で、物心ついた頃にはすでにファルスの孤児院にいたんですが、そもそも拾われたのがアーエリヴァってのがよくわからないですから」

「アーエリヴァか……そりゃあ地理的にちょっと離れてるよなあ。アーエリヴァのどの辺りで拾われたってのは聞いてんのか?」

「西の方にある森の近くだって言ってました。だから俺は最終的にそこに向かって自分の生まれについて調べてみようかと思ってて」


 その調査が上手くいけば、もしかするとさっきの不思議な記憶や技についても何かわかるかもしれない。

 だがアーエリヴァに向かう前に、まずはベティーナたちをここで倒さなければならないだろう。


「まあ、何でもいいからあの犬どもを倒せてよかったじゃねえか。それよりもあの女、この先に向かったはずなんだがあの犬どもに時間食わされて、ずいぶん引き離されちまったな」


 グラカスとエリフィルの話によると、この地下通路を抜けた先には赤水晶の採掘場所があるとのことだった。

 そしてそこにベティーナもいる可能性しかないのだが、さっきの犬たちを始めとしてまだ何か兵器を用意している可能性も否定できない。


「この通路は一本道なのですが、赤水晶は私たちシュア王国領の中にありますので、いろいろな場所から入って採掘することが可能です」

「そうだよ。だから他の出入り口から逃げられちまったら終わりだぜ」

「じゃあ急がないとまずいじゃないですか!」

「だからこうして小走りで急いでんだよ!」


 タッタッタッと走り抜ける三人のブーツの音が、シュアの誇る最先端の機能を持つ出入り口とは裏腹に岩を掘り進めて造っただけの簡素な通路の壁に響き渡る。

 さっきの出入り口の向こう側と同じく地面にトロッコのレールが敷いてあるので、これを使って赤水晶を運び出すのだろうが、それで大量にベティーナたちが盗み出す可能性も否定できない。


「赤水晶が壊れるかもしれませんが、もしこの先で戦いになったらさっきの技、また繰り出してもいいですか?」

「状況が状況なだけにやむを得ませんね。なるべく赤水晶に被害が出ないように……とは言いたいですが、許可しましょう」

「そうだよなあ。それしかないだろうなあ」


 そんな会話を交わしながらようやくたどり着いた最深部だったが、三人が予想していた通りベティーナたちの手がすでに回っていた。

 黙々と採掘作業に励んでいるカラフルなコートの集団を始め、番犬として先ほどの犬が今度は少なく見積もっても五十匹はいるみたいだ。

 通路の先にあるドアの先が採掘場だが、まずはその横にある二階層目に続いている階段を登って様子を確認してからどうするかを決めようとしたのだが、相手の戦力を見て無謀だと考えるルギーレ。


「これは先ほどの犬とは比べものにならないほどの大部隊のようですね。ここは一度退いて手筈を整えてから行きましょう」

「俺もそれは同感ですよ。だってこっち三人しかいないでしょ」


 いくら伝説の聖剣を持っている男がいるからといって、いくら騎士団長二人が揃っているとはいえ、流石にこれでは分が悪すぎる。

 グラカスと違って用心深い性格のエリフィルと、用意周到に下準備をするタイプのルギーレの意見が一致して、ここは一度引き返すべきだとの意見が纏まりかけたのだが……。


「それじゃあ、行くか」

「ちょ、ちょっとグラカスさん!?」

「おい待て、無茶だぞ流石に!!」


 それを気にしていてはここでベティーナたちを止めることはできない。

 そう考えたグラカスが、エリフィルの静止を振り切ってそのまま突っ込んでいった。

 頭はそれなりに回るものの、やはり言動に見合った無鉄砲さが欠点だと常日頃から考えているエリフィルの目の前で、グラカスは先ほどのドアの前にいる見張りをまずはパンチ一発で殴り倒して沈める。

 そして見張りの身体を持ち上げ、そのまま抱えてドアを破って雄叫びとともに突入した!


「うおらああああああっ!!」

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