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288.獣道の地下道

「うわっ!?」

『ぬおっ!?』


 自分たちが落とし穴に落ちたとわかったのは、そのまま落下していってカビ臭い牢屋の中に上手く入るハメになってしまったからであった。

 何がどうなっているのかさっぱりわからないが、少なくとも自分たちが囚われの身になってしまったのはわかった。


「くっそー、何なんだよこれぇ!?」

『どうやら罠らしいな。しかし、この程度で私たちを捕まえたと思うのは早いだろう?』

「……ああ、そうだな」


 そう、この程度で捕まえたなんて思われたら伝説のドラゴンと魔術師部隊隊長の名がすたるというものである。

 しかし、アーロスの返答に歯切れの悪さを見たグラルバルトが彼の方を向いてみると、彼はなんと落下の衝撃で足を捻挫してしまっていたのだ!


「あっ……つつ……!!」

『おい、大丈夫か? ひねったのか?』

「こんなの何ともねえよ」

『よくない。見せてみろ』


 やや強引にアーロスの足をチェックして、捻挫してしまっていることを確認したグラルバルトは、患部に手を当てて回復魔術を施してやる。

 ついでにマッサージもしてやり、今まで歩いてきた疲れも一緒に取ることにした。

 その手つきがやけに慣れていると感じたアーロスは、こんな疑問をぶつけてみる。


「あんた……もしかしてマッサージも仕事だったりするのか?」

『お、鋭いな。私は武術家だけじゃなくて整体師の資格も一緒に持っていてね。道場は夕方から始めるから、朝から昼過ぎまでは整体の医院を開いているんだ』

「そうなのか……ってか、それもちゃんと事情聴取の時に職業として言えよな」

『ああ、すまなかったな。……よし、これでもう大丈夫だろう』


 気づいてみれば捻挫してしまった右足の痛みはすっかりなくなり、疲れまで吹っ飛んでしまっている。

 そしてついでに左足もマッサージをしてもらい、完全に下半身の疲れが飛んだところでここから脱出することを考える。


「あんたは足の疲れとかは問題ないのか?」

『ああ。私はそもそもドラゴンだからな。人間の君たちよりかは自然の中で受ける疲労やダメージは少ないから問題ない』

「そうか。だったらすぐに脱出だ!」


 見張りがいないのをいいことに、グラルバルトはドラゴン本来の腕力を一時的に解放し、出入り口となっているボロっちい金属製の扉を前蹴り一発で蹴破った。


「なっ……お前ら、どうやって出やがった!?」

「さっそくお客さんみたいだな。こんな所に用はねえからさっさと出ようぜ!!」

『もちろんだ』


 続々と集まってくる盗賊たちだが、あんなチンケな罠に引っかかってしまったことで妙にテンションが上がってしまったアーロスとグラルバルトを止められる者は誰一人いなかった。

 地下に造られているこのアジトはなかなか広く、集まってくる敵の数もかなり多いのだが、通路は狭いのでその地形を活かした戦い方を繰り広げる二人。

 アーロスは詠唱時間がない上に魔力の消費も少なくて済むエネルギーボールを生み出して投げつけることで、自分の詠唱の遅さを無関係にする戦い方を見せる。

 そして気の遠くなるような時間を生きてきて、アーロスの足をマッサージしたように整体師の資格を持ち人間の身体のことや戦い方も熟知しているグラルバルトは、相手が何人でかかってこようとも落ち着いて対処。

 武器を持った屈強な男女が相手だったとしても、怯まずに接近戦に持ち込んで自分の徒手格闘術と経験を活かして、地下迷宮にうめき声を上げる人間たちを量産していく。

 だが、その途中でアーロスが違和感を覚える。


「……ちょっと待てよ? 何だか人間の数が多くねえかな?」

『言われてみれば確かにそうだな。もう百人以上は倒している気がするんだが、全然人数が減っている気がしないぞ?』


 次から次へとわんさか出てくる武装した人間たち。

 しかもよく見てみれば、倒した人間たちはうめき声こそ上げているものの、その目に光が見えない……まるで死んでいるような目つきだ。

 これは何かがおかしい。ただの盗賊じゃない。

 何か思い当たるような節はないかと思い返す二人だが、その思考をさせないかのようにまた増援の人間たちがやってくる。


「くっそ、とにかく先に進むぞ!!」

『そうだな』


 考えても埒があかないので、とにかく今はここから脱出するべく二人は突き進んでいく。

 すると今度は、通路の先の方からシュー、シューと妙な音が聞こえてきた。

 一体この先で何が待っているのだろうと緊張感が漂う二人の進軍は、その時に進んでいた通路の突き当たりを左に曲がった所で終わりを告げた。


『ここがどうやら地下と地上を結ぶ場所みたいだな』

「……おい、あれ!」


 もしかしたらブラハード城にある舞踏会用の大きなホールよりも広いんじゃないかと思われる、今までの通路よりも天井がやや高くなっている部屋にたどり着いた二人。

 そこでアーロスが指差した先にあったもの。

 それはシュー、シューと煙を上げて人間を生み出している、大きなガラス張りの容器だった。

 中では紫色の液体がゴポゴポと音を立てて人間の姿を生成し、武装した人間を次々に生み出している。

 こんなものを一介の盗賊たちが手に入れられるものだろうか?


「ありえないな……あんな代物、うちらの魔術師でも造ったことないぞ!!」

『……恐らくは、ニルスという男の入れ知恵だろうな』


 だがこんなものを放置しておくわけにはいかないので、二人はその装置を破壊するべく動き出した。

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