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281.捜査開始

『このニウニー山の中は、ラーフィティアの山の中と比べれば全然楽だ』


 グラルバルトがそう言うように、三日程度の行軍を経てルギーレたちもたどり着いたニウニー山の登山道は、確かにヤオトラム山に比べれば歩きやすいことこの上なかった。

 メリラが「私たちが魔術討伐を頑張っているからよ」と誇らしげに言う通り、ヤオトラム山での魔物討伐をしながらの行軍のきつさが懐かしいと思えるレベルの進みやすさである。

 さすがに全く魔物に出会わないということはなかったが、大きくても中型の魔物ばかりだったのでなんともなく山の中を探索できる。

 むしろ、問題は魔物ではなくこのニウニー山の広さだった。


「四カ国にまたがっている登山道だから、私たちだけでは探索するのに時間がかかるな……」


 そうぼやくのは隻眼の第三騎士団の副団長ロクウィン。

 彼はこのシュア王国の人間だけあって、今の地位になる前の平騎士時代には何度も魔物討伐に来たことがある。

 副騎士団長になってから来るのは実は初めてなのだが、やはりこの山の広さは何度来てもうんざりだと頭を横に振った。


「こうなったらパーティーを四チームに分けて、魔術通信で連絡を取りつつ探索をしよう。そうすれば効率がいいだろう」

「ああ、エリフィルの言う通りだ。それぞれを分けていきたいんだが、あんたたちはどうする?」

「そうだな……」


 ルギーレたちのパーティーはちょうど四人いるので、一人ずつ均等に振り分けられることになる。

 まず大前提として、ヴィーンラディと繋がっている登山道の方には行きたくないとルディアが断固拒否する。

 それを踏まえて話を進めると、まずヴィーンラディ方向から一番遠いファルス方面にルディアが、メリラとロクウィンの第三騎士団コンビと向かう。

 それからアーエリヴァの監視者であるグラルバルトが、アーロスとともにそのアーエリヴァ方面に続く登山道の調査を。

 ティレフ、セフリスのもともと顔見知りであり上手く前衛と後衛に分かれている二人がヴィーンラディ方面に向かった。

 最後にルギーレ、グラカス、エリフィルの三人の剣士たちが今まで通ってきたシュアの登山道の範囲をもっと詳しく探索することに決めて、それぞれが動き出した。

 まずはファルス方面に向かったルディアたちのパーティーだが、早速奇妙な痕跡を発見した。


「あら、何かしらこれ?」

「何かありましたか、団長?」

「これなんだけど、変な形の物をこの先へと引きずって行ったみたいなのよね」


 そう言いながらメリラが指差すのは、土の上にくっきりと刻み込まれている何かを運んだような長い跡だった。

 馬車の車輪にしては太すぎるし、そもそも車輪だったら最低でも二本の細いラインがずっと続いているはずなので、馬車の可能性を除外して考える。


「この跡の深さから考えると、相当な重さがあるみたいですね」

「ええ。……ちょっと、あなたどうしたの?」


 ふと、一緒にいるはずのルディアの様子がおかしいことに気がついたメリラが声をかける。

 そのルディアは目をつぶって手のひらを前に向けて右腕を突き出しており、いったい何をしているのかメリラもロクウィンも首を傾げる。

 すると、ふとその目を開いたルディアが気になることを言い出した。


「探査魔術でこの先を探ってみたんですけど、かなり強力な魔力を感じ取ることができました。それから二十人ぐらいの人間の生体反応も確認できます」

「何ですって? ならそれは事前の偵察に向かった団員からの報告にあった、コートの連中なのかしら?」

「その可能性は恐らく高いでしょうが、行ってみないとまだわかりません」


 十中八九、そのコートの連中がこの先にいるのだと考えるルディアのセリフを受け、団長のメリラがその体格に似合わない自分の愛用しているバスタードソードを背中の鞘から引き抜いた。


「わかったわ。それじゃあ用心して進んでみましょう」

「それでは私が先頭を進みますので、ルディアは私とサーリュヴェル団長の間に挟まれる形でついてきてくれ」

「はい、わかりました」


 事前にこの不思議な痕跡を見つけたことを他のチームに連絡しておき、準備が整ったところでその痕跡が続いている脇道へと入っていく三人。

 すると今度は、その痕跡の周囲に多数の足跡が続いているのが見つかった。

 少し道幅が広くなったことによって歩くスペースに余裕ができた結果、今まで最初の痕跡で上書きされていた足跡を残して歩けるようになったのだろう。

 そのまま用心しながら進んでいくと、ふとロクウィンがこの先のことを思い出した。


「そういえば、この先には小さいけど洞窟があった気がする」

「洞窟ですか?」

「そうだ。中に滝がある洞窟なんだが、そこなら大勢の人間や大きな物体も隠れられるだろう」

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