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271.闇の装備品の噂

 その話は魔術師部隊の隊長アーロスや、副隊長のセフリスを通じてルディアたちにも伝わっていた。


「はっ? ヴィーンラディでも魔術師が失踪……?」

「そうなんだ。だからヴィーンラディに詳しいルディアなら何かわかるんじゃないかと思ってな」


 だがそう言われても、その失踪した魔術師と同じ立場であるルディアは何も言えないのが現実である。

 ヴィーンラディ側の調査によれば、魔術師たちが姿を消し始めたのはシュアと同じくらいの時期だったらしいので、その時はとっくに自分が失踪して世界を放浪していた時である。

 しかしながら、そのルディアの失踪と今回の魔術師たちの失踪はどうやら無関係ではないと思われてもいるらしい。


「実はだな、俺たちが聞いたところによると……向こうの見解によればお前が脱走したのが原因じゃないかという話だった」

「……はい?」


 突発的にそんなことを言われたルディア本人は、言葉の意味を理解するまでに時間がかかって目を白黒させる。


「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。どうして私が関係あるんですか? それっておかしくないですか?」

「おかしいかどうかは別にして、アーロスの言う通り私たちはそれしか聞いていない。あなたが脱走したということで、あなたを慕っていた魔術師たちも一緒に失踪しようと画策していたのではないかと言われたんだ」

「いやいやいや、それはおかしいですよ。だってそもそもヴィーンラディから来たって人に今まで会ったことないですし、この国に来てからも会ったことないですよ」


 それにヴィーンラディにはルディアの予知夢を見られる力を疑問視して魔女だなんだと因縁をつけている過激派もいるので、その連中から逃れるという意味もあってヴィーンラディには近づかないようにしていたし、ルギーレと出会うまでは魔術師のような身なりをしている人間にはなるべく近づかないように心がけていた。

 なのでヴィーンラディの現状に関しては全く知らないし、自分以外にも魔術師が国内からいなくなっていることも今初めて聞いたんだということで、一応信じてはもらえたらしい。

 するとそこで、一緒の場にいる第一騎士団長のグラカスからこんな話が出てきた。


「そーかそーか。じゃあ話を変えてもいいかな」

「何ですか?」

「お前はさ、そのヴィーンラデイにいた時に闇の装備品って聞いたことねえか?」

「闇の装備品……?」


 初めて聞く名前なので、当然ルディアは聞き覚えのない話である。

 それを伝えると、グラカスは組んでいた腕を解いて椅子から立ち上がった。


「そうなんだよ。その脱走した魔術師の部屋から一枚のメモが見つかってさ。それに殴り書きだか走り書きだかわからねえぐらいのきったねえ字で闇の装備品、と書かれていたんだ。それ、何か心当たりねえかなって思ってよ」

「いや……わからないですよ。装備品のことで言えば私よりも騎士団の方々の方が詳しそうな気がしますけどね」


 すると、そこで黙って話を聞いていたティレフがハッとした表情になった。


「おい……ちょっと待ってくれ。それってあれじゃないのか?」

「えっ?」

「ほら、この国に来る前にルギーレやルディアが言っていただろう。ルギーレの仲間だった勇者パーティーの連中が持っていたっていう、どす黒いオーラが漂っている武器のことだ」

「あー……そう言われてみるとそうかもしれませんけど……」


 実はその話をまだシュア王国側にしていなかったルディアの反応と、話を思い出したティレフの様子を見てグラカス、アーロス、セフリスの三人が一気に食いついてきた。


「何か知ってんだったら全部洗いざらい話しちまった方が身のためだぜ?」

「前にそんな武器を見る機会があったってことだろう?」

「そうですよ。そのどす黒いオーラの武器というのは気になりますね」


 別に隠すつもりはなく、いろいろありすぎてその武器の存在を忘れてしまっていたルディアはそれを詫びつつ、マリユスやリュドが使っていたのを見た、というルギーレの証言を思い出しながら変わった武器について話し始めた。


「……じゃあ、そのヴィルトディンの地下で戦ったって勇者たちが使っていたのが闇の装備品じゃないかって?」

「今までの話の流れからするとそうなのかなあって思っただけですよ。でも、その名前を聞いたのは初めてですし開発したのはそのニルスって黒髪の男だと思いますから、失踪した魔術師たちが関わっているかどうかだってわかりませんよ」

「うーん、確かになあ。まだそれだけじゃあ断定はできないよなあ」


 ギシリと椅子を軋ませたアーロスが、腕を組んだまま天を仰いでつぶやいた。

 いずれにせよ、失踪した魔術師がどこに行ってしまったのかをまずは突き止める必要があるので、このことはルギーレたちや他の国とも情報を共有するべきだとこの取調室にいる全員が感じていた。

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