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268.え? なんすか?

「へーぇ、まさかここにいるとはねえ」

「お、お前ら……!!」


 そんな地下牢に現れたのはなんと、バーサークグラップルの三人だったのである。

 もはや国際的に指名手配されているといっても過言ではないこの三人だが、このシュア王国では事情が少し違うのでこうして堂々と歩けるというわけで。

 牢獄のドアの横はガラス張りになっており、鉄格子でなくても中からも外からもお互いに様子を見られるようになっているので、最先端の技術が使われている。

 そのガラスの向こうから、腕を組んだウィタカーが余裕たっぷりに中にいる二人に話しかける。


「最初からこうすればよかったんだよな。俺たちはこの国の協力者としてレイグラードに近づくことができる。そしてスキを見て楽に奪えるってこった」


 ふふふ、とニヤニヤ嫌らしい笑みを浮かべるリーダーの横で、炎の悪魔ことヴァレルが脅迫めいたセリフを言い出した。


「それにあのルディアって女もここにいるんだよなぁ? 俺たちはこの国の味方でねえ。どーなっちゃうのかなー?」

「……ルディアに近づいてみろ。お前ら全員ぶっ殺してやる!!」


 それを聞いたトークスが右耳に右手を当て、ガラスに近づけるジェスチャーをする。


「今なんと?」

「確かこいつ、俺たちのこと殺すって言ったぜ? おいおい物騒だなあ」

「ひゅー、おっかねー!! そんなのと一緒にいたら俺たちの寿命が十年は縮むぜ!!」


 ヒャハハハと笑い声をあげるヴァレルを横目に、トークスが口元に笑みを浮かべながらグラルバルトにこう言った。


「そっちのお前に借りを返すのはまた今度にさせてもらおう。ドラゴンだか何だか知らないが、人間の恐ろしさを教えてやる」

『……ふん、勝手に言えばいいだろう』

「もっとも、お前たちがここから出られたらの話だがね。俺たちはお前たちがどんな様子なのかを見に来ただけだし、このガラスは魔術も物理攻撃も一切通さないように文様が編み込まれている強化タイプのガラスだからな。ドラゴンの力を使っても脱出はできまい」


 それに脱出したところで、牢屋のいたるところに取り付けられている魔力を感知するセンサーが反応して非常警報が鳴り響き、ドカドカとすぐに騎士団員や魔術師たちが駆けつけてくるシステムになっているのだという。

 しかし、グラルバルトの方からも三人に聞きたいことがあった。


『君たちの目的は何なんだ? シュア王国に取り入って何を考えている?』

「目的? そんなの決まっているだろう。レイグラードの秘密をもっと探るためさ。お前らがあの宿屋で話していたことはすでに騎士団でも魔術師団でも共有されているぐらいに全部筒抜けだったんだ。まさか部屋の外で聞き耳を立てているとは夢にも思っていなかったんだろうからな」

『レイグラードの秘密ね……』

「ああそうだ。伝説のドラゴンであるお前にいくら聞いたって教えてもらえないだろうが、話していた内容からすると北の島の黒いドラゴンこそが重要なカギらしいからな」


 だからお前たちよりも先にレイグラードの秘密を探りに向かうんだ、と意気揚々と語るウィタカーだが、四千年以上生きているグラルバルトからすれば「赤子が何かを言っている」ぐらいの言い分にしか聞こえない。

 それよりも気になるのは、あのニルスとかいう男の存在だ。


『まあ、言うだけならタダだからな。それよりも私たちは君たちの親玉であるニルスとかいう男の所在を知りたい。彼が本当にあの島の出身なのかを確認する必要があるからな』


 しかし、そのグラルバルトのセリフにウィタカーの顔つきが変わった。


「ニルスだぁ?」

『ん?』

「もうあいつとは縁切りてえんだよ、いい加減」

「えっ、何で……?」


 まさかの発言にグラルバルトのみならず、ルギーレの表情まで呆気に取られたものになる。

 ここからウィタカーの本音が吐き出され始めた。


「作戦に乗った俺たちも悪かったが、あいつのせいで俺たちの上層部は俺を含めたこの三人になっちまった。しかもそのうち二人は本来のメンバーじゃなくて傭兵だからな。それ以外のもとから長い付き合いのあったメンバーはお前らによって殺された。そしてその重要拠点にあいつらを配置するのを決めたのはニルスだったよ」


 そこまではまあ理解できたのだが、問題はその後のニルスの反応だという。


「あいつは……ニルスは俺たちの仲間が死んでも顔色一つ変えやしねえ。ニヤニヤしやがって気持ちわりーったらありゃしねえ。戦場で人が死ぬのはそりゃあ当たり前さ。だが、お前の元のメンバーが死んだ時もそうだったってさっき残りのお前の元仲間のリュドってのから連絡があったよ」


 そんなニルスの反応に愛想が尽きたので、謀反を考えて独立を目指しているらしい。

 しかし世界征服の野望は同じなので、そのタイミングはもう少し先になるようだ。

 それだけ言い残して去っていった三人だったが、残された二人にとってはどうしたらいいのかまるでわからないままだった。

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