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262.騒ぎに乗じて

「何だ? 何の騒ぎだ?」


 まだ料理も運ばれてこないので、三人は外へと出て何が起こっているのかを見てみることに。

 すると驚きの情報が耳に飛び込んできたのだ。


「おい、今の見たかよ!?」

「ああ見た見た! 剣が空を飛んでったんだぜ!? 何だよあれ!?」

(剣が空を飛ぶ……?)


 誰かが放り投げた剣がどこかに落ちたというわけではなさそうだし、それだけでこんなに住民たちがざわめいているはずもない。

 そもそもそんなに大きな建物がこの周辺には見当たらないということを考えても、ただ事ではない何かが起こっているのはわかった。

 なのでもっと詳しい話を聞くべく、その声を聞かせてくれた男二人に話しかけるトークス。


「おい、何かあったのか?」

「あったなんてもんじゃないよ! 剣が空を飛んでったんだ!」

「へえ、それは興味深い話だな。どんな剣がどっちに向かって飛んでったんだ?」

「ええと……確か柄の赤い大きめのロングソードだったよ。それが向こう側の方に飛んでった。場所からすると突き刺さるのは中央通りにある宿屋じゃないかな」

「中央通りの宿屋……ね。わかった、感謝する」


 そう、本当に感謝したい気持ちでいっぱいだ。

 なぜなら、その男たちが興奮気味に話をしていた「柄の赤い大きめのロングソード」というものでその剣の詳細をほとんど察したトークス。

 それを待っていたウィタカーとヴァレルに報告すると、今度はヴァレルでさえも話の内容を理解できたらしい。


「そいつはもしかするともしかするんじゃねえのかぁ!?」

「だろうな、俺もそう思うよ。まさかトークスの言っていたことがこんなに早く実現できそうなんて思ってもみなかったぞ!」


 先ほどの男たちと同じく興奮気味になるヴァレルとウィタカーだが、そんな二人とは対照的に冷静さを保ったままのトークスは慎重に行こうと提案する。


「まあ、落ち着け二人とも。まだその飛んで行った「柄の赤い大きめのロングソード」が本物のレイグラードだと決まったわけではないだろう。それに宿屋には誰がいるかわからないから、まずはしっかりと偵察をして実態を把握してからの方がいいだろう」

「そうだな、それもそうだ」


 というわけで三人全員で行動すると目立ってしまうので、ここはトークスが偵察に向かい、残りの二人は先に食事をして彼を待つことにする。


「考えてみりゃー、まだこんな真昼間だもんなあ」

「そうだよな。でもあいつはいつも冷静だから、きっちり偵察もこなしてくれるって俺は思ってるぜ」

「ああ、お前もお前の相棒もいい傭兵を雇ったって思ってるよ」


 ラーフィティアで一気に三人の幹部を……サブリーダーであるジレディルも、その前にサブリーダーとして活躍していたロークオンも、斧使いの幹部だったエイレクスもすべて失ってしまったウィタカーにとって、頼れるのはこのヴァレルと今偵察に行っているトークスの傭兵コンビだった。

 もちろんそれ以外にも部下は多数いるのだが、大所帯となると組織全体を思い通りに動かすのはなかなか難しい。

 いずれはまた新しい幹部を入れないとなぁと思いつつ、運ばれてきた料理をヴァレルと一緒に口に運び続けているのだが、なかなかトークスが戻ってこないことに気が付いた。


「……あいつ、遅くないか?」

「確かにちょっと遅いな。何やってるんだ? 魔術通信入れてみるか?」

「いや……もし隠れている所で石が光ったりして存在が知られたら厄介だから、食べ終わるまで待ってみよう」

「それもそうか」


 ウィタカーは言動こそ荒々しいのだが、基本的には冷静な性格なのでこうした先のことを読むタイプである。

 だが、食事を終えてもトークスが戻ってこないので一体どうしたのかと首を傾げつつ、彼の料理も冷めてしまいそうなので店員に頼んで持ち帰り用に包んでもらい、店の外へと出た。

 するとそこでタイミングよく、戻ってきたトークスと二人が鉢合わせしたのだった。


「遅かったじゃねえかよ……なんかあったのか?」


 トークスにそう問うヴァレルだが、当の本人の顔色が疲弊していることに気が付いた。


「偵察は何とかうまくいったんだが、あの状況ではとてもレイグラードを奪ってくるのは無理だった」

「え、どうして? というか噂の剣ってやっぱレイグラードだったのか!」

「ああ。ちょっと路地裏で話そう」


 人目につかない所で聞いたトークスの偵察結果はこのようなものだった。


「中央通りの宿屋の一角に飛んで行ったレイグラードの持ち主が、現在ベッドで寝たきりの状態だ」

「寝たきり?」

「そうだ。その横では黄色い上下の服装に身を包んだ中年の男が看病をしているみたいだが、あの女……ルディアの姿は見えなかった。だが、その男が厄介だった」


 レイグラードが窓のそばに引っかかっていたので、こうなったらここで奪い取ってしまおうと考えたトークス。

 だが、邪魔になったのはその男の存在だったのだ。

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