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258.霧の国と黒いドラゴンの話

 ニルスが、島の中で生まれ育った人間?

 まさかのグラルバルトの予想に言葉をなくしてしまうティレフだが、自分が直接出会っていないとはいえ、ルギーレたちから話を聞く限りではニルスという男の素性は謎に包まれた状態が続いているのが現状である。

 ということは、あのニルスの正体は霧の島として知られている北のあそこに行けば何かわかるかもしれないということらしい。


「そう言われてもな。結局あの北の島に向かうのであれば、今から他の連中にも言っておいた方がいいんじゃないのか?」

『よく考えろ。今からあまり大っぴらに言ったら、よからぬ連中の耳にその話が入って邪魔をされないとも限らんだろう』

「うーん、それもそうか」


 ならばやはり黙っているのが一番だと思い直したティレフはここで話題を変え、先ほどグラルバルトがルギーレに飲ませた薬について聞いてみる。


「そういえばさっきルギーレに飲ませたのは……多分薬だと思うが、もしかしてあんたが作ったのか?」

『いや、これはセルフォンが作ったものなんだが……もしもの時の風邪薬だ。ただ人間に使うにはちょっと刺激が強いから、ここに来る前にセルフォンに通信を入れて、人間用になるように配合について教えてもらったんだ』

「そうなのか……」


 考えてみればドラゴンも生物なのだから、風邪ぐらい引いても不思議ではないと思うのだが、まさかドラゴン用の薬を人間のルギーレに使うとはティレフも思っていなかった。


「治るのか?」

『実を言うと私にもわからん。ひとまず、体内の魔力を抜いてみてそれでダメそうならまた別の手を考えてみる。言っただろう。今回の体調不良は負の魔力を溜めすぎた結果によるものだと』


 だったらその体調不良の原因となっている魔力を体内から取り除き、回復するかどうか経過観察をするしかないのである。

 そしてグラルバルトは、北の島についてもう少し具体的な話をしだした。


『ここには私たちしかいないから話せることなんだが、君は黒いドラゴンについて知っているか?』

「黒いドラゴン? 伝説のかな? それだったら本で読んだことはあるが……確かあんたたち伝説のドラゴンたちのリーダーで、めったに姿を見せないという存在だって」

『そうだ。その黒いドラゴンは北の島の中にいる。派手で目立つ存在だから嫌でも話題になってしまって困るので、北の島に閉じこもるようになってしまったんだ』


 ただし、その黒いドラゴンは寝てしまっているので連絡はできないらしい。

 しかもただ寝ているのではなく、来るべき時に備えてエネルギーを溜め込んでいるらしく、下手に起こしてしまうと暴走しかねないというよくわからないことを言われてしまった。


「そうなのか……でも、まだその黒いドラゴンの話は先のことになりそうだ。今はそれよりもルギーレの回復を待つことと、ルディアに連絡がつかないことの方が心配だ」

『そうだな。この男については見守りを続けることしかできないが、問題はいなくなってしまったルディアという者の方だろう』


 と言ってもグラルバルトは実際にルディアに会ったことはないので、まずは性別や身なり、それから連れて行かれた場所などをティレフから聞き出す。


「……容姿についてはこんな感じで、城に連れて行かれてからの詳細は不明らしい」

『わかった。それだったら後はルギーレのことは私に任せて城に行って様子を見てこい』

「えっ、いいのか?」

『ああ。少なくともその二人とは違って、この男を一人ぼっちにしてどこかへ行くことはしないからな。薬まで飲ませたんだからきちんと最後まで責任を持とう』


 グラルバルトがそこまで言うのであれば、ここは素直にお言葉に甘えさせてもらうティレフ。

 それとともに思うのは、自分と知り合いでありながらどうしてルギーレを一人ぼっちにしてルディアを城に連れて行ってしまったのだろうかという疑問だった。


(レイグラードが一緒になくなってしまっているのを見ると、この国が魔術王国というだけあって強い関心を示したんだろうな。俺でもそのぐらいの予想はつく……)


 そう考えながら自分が愛用している槍と手荷物を持ち、ブラハード城へと向かったまでは良かったのだが、もともとシュアから見下されているバーレンの人間がたった一人でそこに向かって何も起きないはずはなかったのだ。

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