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255.倒れるルギーレ

「うう……」

「ルギーレ、ちょっとしっかりして!」

「おい、いったい何があったんだ?」


 とりあえず手持ちの薬草を調理して薬を作ったり、ルディアが回復魔術をかけたりしてみるが、一行にルギーレの様子は良くなりそうにない。

 シュア王国に来てから、ルギーレが突然倒れてしまった。

 顔がドス黒くなっているだけでなく、全体的に覇気がないし立っていることもできないような状況なのだ。

 もし今の状況で魔物にでも襲われたりしたら、それこそ一貫の終わりである。

 突然苦しみ出して倒れたルギーレをどうにかして治療できそうな町や村の心当たりは、あいにくルディアもティレフもなかったのである。


「まずいな。何が原因かわからない以上、王都に向かうしかなさそうだ」

「そうですね。この際やむを得ない状況ですから……」


 王都にだけは行かないようにと約束していたはずだったのに、こんな初っ端からその約束を破ることになってしまった。

 この先でいったい何がどうなってしまうのだろうか。

 そもそも、どうしてルギーレは倒れてしまったのだろうか?

 疑問が次々に頭の中に浮かんでくる二人だが、今はとにかくルギーレが治療を受けて回復してくれるかどうかの状態なので、王都に向かってワイバーンを飛ばすしかできない。

 幸いにも、その王都にはティレフの知り合いがいると言うのでその男に相談することとなった。


「シュアの魔術師部隊に所属しているセフリスという男なんだが、その男なら何かわかるかもしれない」

「魔術師の方なんですか?」

「ああ。無口で人付き合いは余り良くないが、腕は確かだぞ」


 その言葉通りの男かどうかは実際に会ってみないとわからないが、ルギーレを治してくれるのであれば大歓迎である。

 しかし、王都で会ってみたその男はルギーレの容態をこう診察した。


「……わからん」

「わからん!?」

「すまないが、私にもどうしてこうなったのか理解しかねる……」


 オレンジ色の髪の毛と黒の瞳を持っているセフリスが言うには、何か新種の流行り病かと思われるのだが、現在その原因が何もわからない以上、ベッドの中で安静にしていてもらうしか手はないそうである。

 まさにこれからという段階でルギーレがこんなことになってしまい、出鼻をくじかれた気持ちが強い二人だったが、だからと言って立ち止まっている暇はないのである。


「とりあえず俺はニルスたちの情報を集めてくるから、ルギーレのことはよろしく頼むぞ」

「わかりました」


 王都コーニエルの王城ブラハードで勤務し、魔術師部隊の副隊長を務めているというセフリスですらルギーレの体調不良の原因がわからないとなれば、他に頼れるのは医者であり伝説のドラゴンの一匹であるセルフォンしか思いつかなかった。

 彼はこのシュアの隣国であるファルスにいるはずだし、なんとかこっちまで来てもらえればもしかしたら原因を突き止めてくれるかもしれないと思っていたのだが、王都に来る前に連絡をした彼女に待ったをかけた人物がいたのだ。


『えっ、それはまずいぞ』

「どうしてですか?」

『バーレンの騎士団長からも聞いているはずだが、騎士団の人間は貴族たちが大半だしプライドも高い連中ばっかりだ。そしてその中の魔術師たちはさらにプライドが高いから、自分たちに治せなかった病気をいとも簡単に治されでもしたらセルフォン様の身も危ないかもしれない』

「めんどくさいですね、それって」


 思わず本音が出てしまったルディアだが、魔晶石の向こうにいるファルスの皇帝セヴィストも同じことを思っているらしく、彼なりに解決策を考えてまた連絡してくれるとの話だった。

 それが終わるまでは、ひとまずルギーレの回復を祈りながらこのコーニエルで待機しているしかなかった。

 だが、さらにめんどくさいことがルディアの身に降りかかる。


「……あんた、魔術師だな?」

「えっ……は、はいそうですけど何か……」

「いや、気になっただけだ。気にしないでくれ」

「は、はあ……」


 同じ魔術師同士、何か感じるものがあったのだろうか?

 基本的に伝説のドラゴンのことも、それからレイグラードのことも国の方から聞かれない限りは違う国に行っても黙っているのだが、もしかしたら勘づかれたのだろうか?

 なんとか平静を保ちつつそう受け答えするルディアだが、事態はもっと重い方へと進んでいく。

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