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254.貴族たちの魔術王国

 レイグラードとともに、そしてルディアとティレフとともにルギーレはワイバーンにまたがり、今度は西の海を越えてシュア王国を目指す。

 その途中、せっかくなのでルギーレはこれから自分たちが向かうシュアについて話を聞いてみることにした。


「シュア王国ってどんな国でしたっけ? 俺、もうちょっと詳しく聞きたいです」

「そうだなあ……まぁ、さっき別の奴からも話があったように、魔術に関しては主要九か国中一番発達している国だ。別名「魔術王国」って言われているだけのことはあるんだよ」

「魔術はヴィーンラディが一番発達している国だっていう人もいるんだけど、そもそも魔力をエネルギーとする列車を開発したのはそのシュア王国なんだからね」

「ああ、それだったら俺もパーティーにいた時に聞いたことがある」


 しかし、王都周辺以外は余り開発が進んでおらず自然が沢山あり、大陸の中央の渓谷を境に北と南で区切られている。

 魔術の研究に力を入れる余り、町や村の発展には力を入れていないのが現状なのだ。

 渓谷や洞窟が多く、その間を縫うように自国で開発した列車の線路が通っており、これが主な移動手段である。


「そもそも、ファルスとバーレンから移り住んで来た貴族達が興した国なんだよ。だからプライドの高い奴がほとんどなんだ」

(それはあなたに言われたくないと思うわよ)


 ルディアの心の声はさておき、それゆえにシュアの人間たちのほとんどはファルスとバーレンを見下している。経済的にはファルスとバーレンの中間ぐらいで、魔術師を他国に派遣したり、魔術を使って生活を便利にできる製品を輸出したりして財源にしている。

 その代わりに町や村の発展も魔物駆除もできていないので、いまだに人々の大半が王都周辺にしか集まっていないのには危機感を覚えている。


「シュア王国軍は俺たちバーレン軍と合同演習をしたりもするんだが、第一、第二、第三の三つの騎士団と魔術師部隊が存在していてさあ。第一は王都の外側、第二は王都、第三は王城、魔術師部隊はその三つの騎士団にまんべんなく配置されていたんだ」

「……いた?」

「ああ。最近はその構図が変わって第一は王国の北側、第二が南側、第三は王都って感じで魔物の討伐に力を入れるようになったんだ。魔術師部隊の配置は相変わらずまんべんなくで変わっていないみたいだけど」


 さすがにもっと町や村を発展させなければと危機感を覚えたらしいので、まずは身の安全を確保することから始めたらしいのだが、ティレフいわく問題なのは騎士団の身分らしい。


「騎士団員も魔術師も、貴族が集まってできたっていう国の成り立ちゆえに全員が貴族出身なんだよ」

「今もですか?」

「そうなんだ。そもそも貴族じゃないと騎士団に入れないっていう謎のルールができていてさ。平民はそれ以外の職に就くしかない」

「ええー……それって不公平な気がしますねえ」


 ルディアは頭を抱える。

 確かに貴族の方が権力を持ってはいるのだろうが、平民の中にだって磨けば光る様な才能の持ち主がゴロゴロいるはずだし、そういうところに目を向けないでいるのは違うんじゃないかと思ってしまう。

 一方でルギーレは、勇者パーティーにいたころに感じたことを思い出した。


「そーいやー、貴族ばっかりって言われて思い出しましたよ。シュアの人たちってなんだか偉そうな人ばっかりだったんですよね」

「お、やっぱりそー思うか。俺もそう思ってたんだよ。そもそも俺たちバーレンやファルスから移り住んでおいて、いざ魔術に秀でたことがわかったら態度をコロッと変えたってのは有名な話だからな。俺はあんな奴らとは違うって思いたいね」

(プライドの高さは同じようなものだと思うけど……)


 ここでもルディアは心の中で突っ込みを入れておく。

 なんにせよ、そのように偉そうな人間たちが集まるシュア王国を行き先に選んでしまったのだからもう諦めて向かうしかないのだが、果たしてニルスたちはそこにいるのだろうか?

 そもそもニルスたちがラーフィティアの中にいたのかどうかすらも怪しいのだが、かつての勇者パーティーの仲間であったベルタとライラが暗躍していたことや、バーサークグラップルの主要メンバーたちがやぐらを護っていたことを考えると、国内のどこかで指示を出していた可能性は限りなく高かったといえる。


「あんな地下施設を造れるだけの財力と人数を持っていて、最終的に王都を吹っ飛ばして……向こうに多数の犠牲を出すことに成功したとはいえ、最後は何だかしてやられちゃったって感じがするわ」

「俺も同意見だね。レイグラードがあってもなかなかライラは手ごわかったけど、結局あいつもいいように動かされてたってことなのかもな」


 そう言いながらしんみりするルギーレだが、シュアに着いた彼の身にとんでもないことが襲い掛かろうとは、彼を含めたこの時の三人は誰も知る由がなかった。

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