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253.やぐら破壊の結末

『……わかった。それじゃ我たちはなるべく優先的にラーフィティアに人を回せるようにしよう』


 他の国も大変ではあるのだが、比較的落ち着きを見せてきたエスヴェテレスからもラーフィティアの復興を支援してくれるとの連絡を受けたシュヴィスは、その旨をカルヴァルに伝える。


「……というわけですので、俺は一度ラーフィティアの現状を伝えるべくエスヴェテレスに戻ります」

「わかった。感謝するぜ。それからそっちのバーレンの二人も一度戻るんだろ?」


 そうじゃないと部隊の編成をしてまた戻ってこられないだろうから。

 そう思ったカルヴァルだが、バーレンの二人からの返答は予想外のものだった。


「いいえ、戻るのは僕だけです陛下」

「え? そりゃまた何で?」


 シュソンの答えを聞いたカルヴァルが首を傾げるが、次のティレフの答えを聞いたら納得できた。


「そっちの二人の監視役として誰かが必要なんですよ。ですからシェリス陛下と相談した結果、監視役として俺がこの先で同行することになりました」

「あー、なるほどな。あいつらの何割かは逃げちまったみたいだし、そいつらも追わないと何をしでかすかわからねえもんな」


 ここから先はバーレンの騎士団長であるティレフが、ルギーレとルディアの旅路に同行することとなった。

 本当であればこのベルトニアの復興作業を手伝ったり、国内に旧ラーフィティアの連中の残党がいないかどうか調べたりということを手伝いたいと思っている二人だが、まだ勇者パーティーの残りの連中との決着はついていない。

 それに、ライラが気がついたらその姿を見かけなくなってしまっていたバーサークグラップルのリーダーであるウィタカーの行方も気になるところだし、ルギーレは自分の出生の秘密についても調べられていない。


「でも、具体的にどこに向かうか決めているのか?」

「いえ、それはまだです。私もルギーレも行ったことがない国で残っているのは東の三つ……シュアとアーエリヴァとヴィーンラディですね」


 しかし、ヴィーンラディといえばルディアが脱走してきた国であるゆえに行く気が全く起きないのが現状である。

 さらに言えば、ルディアの予知夢を疑問視する一派が彼女を狙って行動しているという噂もずっと前に聞いた覚えがあるルギーレも、彼女のことを考えるとヴィーンラディだけはやめておこうと言い出した。

 そこで行き先の提案をしたのが、二人と一緒にこれから旅をするティレフだった。


「だったら、シュア王国に行けばいいんじゃないか?」

「なぜですか?」

「シュアには俺の古い知り合いがいるんだよ。それからシュソンもシュアに知り合いがいるんだ。もともとバーレンとシュアとファルスは、それぞれの国同士で妙な繋がりを持っている人間たちが多いからさ」


 この惨状では列車も使えない。

 そこでワイバーンを使って海を渡るルートで進み、ヴィーンラディを避けて通ればいいだろうと考えるティレフ。

 さらにシュソンからも賛成の言葉が出てくる。


「その上でアーエリヴァに向かえば、ヴィーンラディの連中と余り関わらなくて済むだろうからね。シュアは東の玄関口とも言われているし、前に話があった赤いドラゴンや黄色いドラゴンに会いに行くならそっちが妥当だろうしね」


 だが、そこで割って入ってきたのが今まで復興作業に従事していたロサヴェンとティラストの傭兵コンビだった。


「まあでも、シュアに行くんだったらヴィーンラディとは魔術を通じて交流も深いから、その辺りには気をつけることだな」

「そうですね。そこだけが不安です。お互いの魔術を学ぶためにヴィーンラディからも多数の留学生が来たりしていますし、魔術の合同発表会などもやっていますから、その辺りのイベントには近づかない方が無難でしょう」


 実はそうしたイベントに出向いたことがないルディア。

 魔術のことを学ぶ過程でそうしたイベントの話を聞いたこともあるのだが、予言者として軟禁されていたので行く機会がなかったのだ。


「わかりました。王都には近づかない方が良さそうですね」

「そうだな。もしシュアで行くんだったら王都以外のどこかにしておけば無難だろうな」


 それにわざわざ王都に寄らなくても、シュア以外でドラゴンたちに会える可能性だってあるのだ。

 黄色いドラゴンはアーエリヴァを、そして赤いドラゴンはエスヴェテレスを掛け持ちで見張っているらしいので、シュアでニルスたちの手がかりが見つからなければさっさとズラかるだけである。


「あいつら、本当に逃げ足だけは速えのな。でも次の行き先はシュア王国か。なんだか懐かしいな」

「えっ、そうなの?」

「ああ。シュアでライラと出会ったんだよ。俺が爆死させたあの女とな……」


 そう言うルギーレの目元には、知らず知らずのうちに涙が浮かんでいた。

 あの自分を追放した女と出会った場所にこれから向かうということで、懐かしさが込み上げてきたからだろうか?

 その答えは結局わからないまま、ティレフの操るワイバーンの背中に乗って西から海を越え始め、魔術王国シュアへと舞台は移っていく。


 第六部 完

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