252.大爆破
「うお~~~~~~っ!?」
「ぜ、全員離れろおおおおおおお!!」
シャブティとレーヴァが全員退避を促しているその背後では、前代未聞の光景が広がっていた。
無人となった王都ベルトニアの地面が、中心部から円状に盛り上がって爆発し始めた。
地面を押し上げた魔力が爆発し、家を押し上げて倒壊させ、火柱を至る所から吹き上げて黒煙を吐き出し、人間が住めない場所へと変貌させていく。
やっと直したばかりのレガリア城までもが、その餌食となるのにさほど時間がかからなかったのを見ても、いかにその地下に眠る爆弾の威力が凄かったのかがわかるものだった。
「こんな……こんなことが……!!」
「ああ、あ……」
ジレフィンもヘーザも、離れた所から呆然とした表情でその光景を見つけることしかできない。
住民たちを全員避難させられただけでも、まさによくやったと言えるだろうが、至る所で爆発音が響き渡りしばらくは王都の中に戻るのは不可能だろう。
「これは……俺たちの国とは比べ物にならない被害になる……」
「比べるも何も、そもそもあのジェバーが言っていた通りだったとしたら、こんなでっかい施設を下に造ってたってことかよ? イカれてやがるぜ!!」
ラルソンもパルスも、ジェバーの予想が当たっていて実際にこのような状況になっていることに驚きを隠せず、何もできない悔しさに歯ぎしりをしたり拳を握りしめて怒りに身体を震わせることしかできなかった。
「お……終わりだ……俺の国が……!!」
「終わりではありませんよ陛下。これから始まるんです」
「え……?」
ガックリと両膝をついて頭を抱えるカルヴァルの左肩に、ティレフの右肩が置かれる。
「以前の悪しきラーフィティアはこれで無くなって、今度はまた一から自分の王国を創るんですよ」
「そうですよ陛下。僕たちバーレンはラーフィティアの隣国なんですし、以前のラーフィティアとは違うんですから」
右肩にシュソンの左手が置かれて、二人から慰めの言葉がかけられる。
だが、それでもこの状況を直視すると嫌でも現実を思い知らされる。
「俺は……俺は……」
「私たちもおります、陛下」
「そうですよ。この王都の住民が無事だっただけでも、まずはよしとしましょう」
「……ああ、そうだな」
ローエンとルイスも全力でサポートすることを誓ったその時、何かの音に気がついたイディリークのローレンが空を見上げて声を上げた。
「あっ、ワイバーン!?」
「え……あっ、ルギーレとジェバーさん!!」
同じくそれに気がついたルディアが、だんだんと近づいてくるワイバーンの背中に乗っている人物たちの正体を当てたことで、これでようやく全員が揃ったことになる。
しかしルギーレとジェバーは自分たちが王都にいない間に何があったのか、またカルヴァルたちもルギーレとジェバーがどんなことをしていたのかお互いにわからないままなので、まずはその説明から始めることに。
「……というわけで、爆発を止められずに申し訳ありませんでした」
「いや、その状況なら仕方がないだろう。でもまさかお前の元の仲間が今回の事件に二人も絡んでいたなんてな」
ライラを天井から落ちてきた岩で造られた岩壁の向こうに閉じ込めた後、間髪入れずに爆発が起こった。
王都全体をぶっ飛ばすほどの爆発が起こったとなれば、当然その岩壁の向こうだけにとどまらず、その岩壁がある洞窟そのものが崩れるぐらいに大きなエネルギーが遅いくる。
ここで不幸中の幸いだったのは、ルギーレとジェバーが洞窟に入ってすぐの場所でライラに出会ったことだっただろう。
「もし、もう少し奥であののんびり女に会っていたら、今ごろ俺もジェバーさんもあいつと同じく岩の中で生き埋めになってたはずです」
「その洞窟はもう入れないのか?」
「そうですね。完全に埋まってしまっていますし、掘り起こして補強しないと無理でしょう。爆発の影響で崖崩れまで起きて……ルギーレさんがあのライラという女の乗ってきたであろうワイバーンを見つけていなければ、どうなっていたことか……」
なんにせよ助かってここまで戻ってこられたのは良かったが、それだけで終わる話ではない。
今度は未だに燃え盛っている王都ベルトニアの内部で、一体何が起こっていたのかをルギーレとジェバーが聞く番だったからだ。
「え、前の国王が戻ってきたぁ!?」
「そうなんだ。だが、ジェバーからの連絡を聞いてまずいと思った俺たちは全力でそのヴァンリドと側近の男二人を倒したよ」
カルヴァルも疲弊している。
話を聞く限りでは四つ全ての連隊と、助っ人として参戦したルディアたち全員でコートの集団と戦い、住民たちを避難させてなんとか爆発から逃れることに成功したようだが、一部のパラディン部隊長たちには逃げられてしまったらしい。
「またどこかで会わないとも限らないが、もしそんな奴らに出会ったら用心するんだぞ」
「わかりました」
そしてこれから先は、王都が燃え尽きるまでこれから先のことをどうするか話し合う時間となった。




