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249.真の目的

 そのヴァンリドと側近の男二人がカルヴァルの前に現れているころ、別のとある部屋の中ではマリユスから報告を受けているニルスの姿があった。


「現在ヴァンリド様とオーレン様、そしてジェイデル様が王都に到着した模様です」

「わかったよ。となるとカルヴァルとの交戦も時間の問題かな?」


 今頃壊滅している途中のベルトニアの惨状を思い浮かべて、ニルスは納得したように笑みを浮かべる。

 ラーフィティアを攻撃するに当たって立てた作戦は、ヴァンリドたち旧ラーフィティアの人間しかわからない地下の空間があるので、そこをまずニルスの協力で魔力を送り込むパイプを作っておく。

 ヴァンリドがニルスと話していた時に確認のために質問していた内容は、実は半分ぐらいしか当たっていなかったのだ。


「さて、それじゃあ地下の部隊にはもう話はつけてあるんだろうね?」

「はっ。逃げ出した住民たちも今頃襲われて王都に逆戻りを始めているころでしょうから、その頃合いを見て例の装置を作動させます」

「うんうん、いいねいいね。それで大爆破と行こうじゃないか!!」


 六つのやぐらは実は起爆装置であり、すべてのやぐらが破壊されてしまったら魔力がパイプを通って王都に逆流するのだ。

 王都に強い地震が起こったのはその前触れであり、魔力が逆流して大きな力を生み出した証拠でもあった。

 そこで一気に攻め込み、王都をまた立て直すのだけを覚悟で国を奪還するのがヴァンリドたちの作戦だったのだが、まさか自分たちも一緒に大爆発に巻き込まれた結果、壊滅状態に陥るとは夢にも思っていないだろう。


「あの連中がやぐらを破壊すること自体がベルトニア崩壊につながる。破壊すればそれだけ地下を通って魔力がベルトニアに集まり、全部破壊したらベルトニアそのものが崩壊を起こす」

「そして、かませ犬のヴァンリドは何も知らないまま部下たちとともに死ぬことになる……完璧ですよ、ニルス様」


 それもこれも、ニルスがルギーレたちが来ることを見越して考えた作戦だったのだ。

 もちろんそれなりに時間はかかったし金も使わなければいけなかったが、まさか自分たちのやっていることが自らの破滅につながるとは思いもしないだろうと考えるニルス。

 するとその時、マリユスの魔晶石に通信が入った。


「俺だ。……そうか、わかった。なら俺から連絡するから、リュドも早く逃げろよ」

「準備ができたって?」

「ええ。住民たちも町の中にうまく誘導できたみたいですし、これで準備は全て終わりましたのでこれからライラに連絡します」

「わかったよ。それじゃ花火を存分に見物することにしようか」


 全てがうまく行っている。

 今のラーフィティアの連中も、自分の国に固執しているあのかませ犬の連中も、目障りな役立たずのルギーレもまとめて始末できるのだから、これ以上に効率的で確実なことはなかった。

 しかし、物事が「最後まで」必ず上手くいくとは限らない。

 それをマリユスたちが知るのは、ライラに連絡を入れたすぐ後だった。


「はい~、こちらライラです~」

『……俺だ。始めろ』

「了解です~」


 相変わらずのんびりとした口調だが、やることは素早く。

 連絡を受けたライラは、自分のそばにある銀色のレバーをグイッと下に下げる。

 すると地下に警報が鳴り響き始めた。


『警告。爆発まで残り五分です。速やかに脱出をお願いします。繰り返します。爆発まで残り五分です……』

(さてさて、撤収撤収~!!)


 後は脱出して洞窟の外でリュドと落ち合い、そのままワイバーンで空からラーフィティアの壊滅を見るだけである。

 地下深く造られたこの施設には、そのまま見上げれば天に向かって伸びているような錯覚さえ覚える巨大な一本の柱が存在している。

 ドス黒いその柱の中では、ゴポゴポと奇妙な音を立てながら液体が泡を立てているのがうっすらとわかる。

 正体は高濃度の液体になった魔力。それをなみなみと詰め込んでおり、時間が来たらそれに多数のエネルギーボールをぶつけて大爆発を起こす仕組みになっている。

 こんなものが爆発でもしようものなら、せっかくリフォームしたばかりの城だけで終わるはずもなく、王都ベルトニアそのものが一気に吹っ飛んでしまうレベルである。


(私も早く逃げないと~、命が危ないし爆死しちゃう~!!)


 マリユスたちの計画にこうしてここまで乗ってきて、手足となって動いているライラだが、ふとここで疑問が一つ。


(あれ~、そういえばあのバーサーク何とかって集団のウィタカーさんってどこに行っちゃったんだろ?)


 いつの間にか自分たちの身の回りからその姿を見なくなっていることを思い出したが、そのうちひょっこり現れるだろう。

 そう考えながら全速力で地下施設の通路を駆け抜けるライラだったが、そこで思わぬ邪魔者が姿を現した。

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