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245.もう終わり

「あーあ、全然話にならないわね」


 レイピアによって貫いたルディアから、そのレイピアを抜き取ってつまらないといわんばかりの口調でベルタはつぶやく。

 やはり歴戦の勇者を相手にして、魔術のお勉強ばかりしていたルディアには分が悪かったのだった。

 だが、そんな彼女の元に今度は槍を構えたレーヴァが襲い掛かってきた。


「うおおおおおっ!!」

「ふっ!!」


 ルディアにとどめを刺そうと思っていたところにとんだ邪魔が入る展開になったが、この男をさっさと倒してとどめを刺せばいい。

 それにまだイディリークの皇帝だって殺害できていないんだし、仮に自分たちがここで敗北してもまだ次の一手が……それもかなり大きな一手が存在しているので、どのみち今の自分たちと戦っているルギーレたちが絶望を味わうことになるのは変わりない。


「くっ、ルディアさんに何をした!?」

「何を? 決まっているじゃない。私に襲い掛かってきたからこうやってあげたのよ!!」


 槍とレイピアによる刺突合戦が幕を開ける。

 リーチとしては槍の方が有利だが、レイピアの方が素早さに優れるので一長一短だ。

 しかしここは敵味方が入り乱れての乱戦状態が続く場所なので、槍を思い切り振りまわせば敵も味方も関係なしに巻き込んでしまう可能性が高い。

 対するベルタは素早さと的確な刺突を武器にして、だんだんとレーヴァを劣勢に追い込み始めていた。


(くっ……さすがに勇者は手ごわいと思っていたから油断しているつもりは全然なかったけど、まさか私がここまで追い込まれるなんて!?)


 予想外のベルタの強さに舌を巻いたのがレーヴァにとって大きな隙となり、ベルタにとって最大のチャンスになる。

 息もつかせぬ刺突で防戦一方のレーヴァは追い込まれ、後ろにあるテントに背中がぶつかってしまった。


「……!!」

「はああっ!!」

「ぐうっ!!」


 結局、レーヴァもまたルディアと同じく追い込まれたうえで高速連続突きを受けてしまい、いろいろな物資が保管されているテントの中に倒れこんでしまう。

 ベルタと同じく鎖かたびらを着込んでいるとはいえ、何度も攻撃を受ければ立ち上がれるようになるまで時間を要する。

 それまでにまずはこの男から始末してしまおうと一気に決めにかかるベルタだったが、後ろから何者かの気配を感じて振り向いた。


「ふんぬあああああっ!!」

「きゃっ!?」


 物凄い衝撃が自分の身体を襲うと同時に、宙に浮く感覚を覚えるベルタ。

 それは魔術で先ほど受けた傷を回復し、お返しとばかりに特大のエネルギーボールを飛び掛かりながら当ててきたルディアによるものだった。

 ベルタはそのまま吹っ飛んで、後ろにある木箱の山を盛大に崩しながら倒れこんだ。

 だが、それを見てもルディアは容赦しない。

 彼女が落としたレイピアを拾い上げ、起き上がりかけているその胸に思いっ切り突き刺した。


「ぐぶっ……ぅぅぅ!?」

「ぐうううううっ!!」


 両手で全力を込めて押しつぶすようにしながら、ベルタが血を吐いて息絶えるまでルディアは彼女の上にのしかかり続けた。

 やがてぐったりと全身から力が抜けたベルタだったが、最後に意味ありげに口に笑みを浮かべてこうつぶやいた。


「は……は……も、もう……あなたたち……終わり……」

「は?」

「王都……壊滅……す……」

「え、な、何なのよ!?」


 そのセリフを最後まで聞こうと、力を緩めるルディアだったが時すでに遅し。

 レーヴァの乱入こそあったものの、最終的にルディアが逆転勝利を収めたのだったが、そのセリフの真意を読み取れないままベルタが死亡してしまった。


(私たちがもう終わり? 王都が壊滅? それって……)


 絶命したベルタはそのままに、倒れてうめいているレーヴァに回復魔術をかけながら今までのことを振り返ってみるルディア。

 確か今までの流れだと、やぐらを壊したことによって王都に何かしらの異変があった。


(でも、前の無人やぐらを壊した時には特に何もなかったような気がする……いや、魔物がまた現れたんだっけ?)


 そうなると、やぐらを壊すごとにどんどん王都の被害が拡大している。

 じゃあ今のベルタが言った最後のセリフの意味は……。


(……まさか!?)


 もし自分の考えていることが事実となるのであれば、すぐにやぐらの破壊をやめさせなければならない。

 いったんレーヴァすらも放っておき、外に飛び出てやぐらの破壊を中止するように言おうと考えたルディアだったが、こちらも時すでに遅し。


「あ……」


 ヴィーンラディの預言者が見たものは、メキメキと轟音を立てながら崩れていく最後のやぐらの姿だった。

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