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242.バレたなら

「え? 武器?」

「その槍だよ。お前、十二パラディン部隊の服を着ているのに槍を持っているのはおかしくないか?」

「……」


 この目の前の兵士が何を言っているのかよくわからないレーヴァ。

 武器? 服? おかしい? 何が?

 しかしこの空気から察するに、一気に自分の立場が悪い方向に進んでいると察した彼は、上手くこの場を切り抜けようと口と頭を回して返答する。


「あー、これ? これはそこで拾ったんだよ」

「拾った?」

「そうそう。だから誰かの落とし物じゃないかって。そうじゃなかったら俺がこの服着てて、ロングソードを腰につけてるわけないだろ?」

「……まぁ、それもそうか。でもなんでそんな所に槍が落ちてたんだ?」

「さぁ? 俺はただ単に見つけて拾っただけだからな。だから今からそのアホの顔を拝みに行って、ついでに届けてくるよ」

「そうか、わかった」


 動揺を顔に出さないようにはしていたが、黒い制服の首の後ろの襟を濡らす緊張の汗に気づかれてしまったかもしれない。

 それでも平静を装って何とかこの場は上手くごまかせたみたいだが、今の疑問のセリフから察するにどうやら着ている制服と武器との間には関連があるらしいとレーヴァは悟った。


(そりゃあバーレンみたいにそれぞれの武器に特化しているような騎士団があるぐらいだけど、そっちでさえ話を聞く限りではいろいろな武器を一通り使えるように教育はさせているはずだぞ?)


 しかし、前にこのラーフィティアを統治していたヴァンリドが率いていた十二の騎士団……通称パラディン部隊はまた違うらしい。

 バーレンと同じように他の武器も使えるようにしているのかどうかは不明だが、先ほどの兵士のセリフから察するに本当にその系統の武器に特化していると考えるのが自然だろう。


(まさか槍を持っているだけで疑われるとは思ってもみなかったが、制服のポケットに魔晶石を隠していたのだけは我ながらちゃんとしているって思えるよ)


 そんな自画自賛をしながら進んでいくレーヴァは、ようやくその目的地であるテントにたどり着いたので、素早く周囲の気配をうかがってから中に入ってみる。

 するとそこには、ロープで全身をぐるぐる巻きにされて身動きが取れずに諦めた表情をしているシュヴィスの姿があったのだ!

 彼は誰かがテントの中に入ってきたことを知り、起こせるだけ身を起こしてその人物が誰なのかを確かめる。


「……あれ?」

「私ですよ、シュヴィスさん」

「あっ、レーヴァ!? 一体どうしてここに?」

「話は後です。まずはそれを解きましょう」


 しかし、せっかくロープを解かれてもシュヴィスは身動きがとりにくい状態が続く。


「そ、それは助かったんだが……何か妙な薬を打たれて魔術も使えないし、身体中がしびれているんだ」

「そうなのですか? それでしたら今、この魔晶石でそれも含めて連絡しますよ」

「ああ、頼む……」


 黒い上着に赤いラインがたくさん入っている服装の男が、まさか事前に別行動をとっていたはずのレーヴァだったとは思わなかったシュヴィス。

 恐らく、あのベルタがルギーレたちに通信を入れたことによってこうして自分を助け出しに来てくれたのだろうが、ここから脱出するのは困難を極める。

 それは魔晶石で、周囲にバレないようになるべく小声になるように配慮しているルギーレたちに連絡をしているレーヴァにもわかっていることだった。


「……はい、そうです。ですからワイバーンで一気に突撃をお願いできますか? 敵の数が余りにも多すぎますので一気に掃討したいのですが、弓矢と魔術の攻撃には注意してください。それとやぐらにも物見がいるみたいです」


 人質となっていたシュヴィスをこうして救出した以上、もう容赦なんてする必要はない。

 後は外が騒ぎになるのを見計らって、このしびれて動けないというシュヴィスを連れてここから脱出するだけなので、それまではこのテントの中で待機するしかなかった。


「ところでどうしてこうなってしまったんですか?」

「俺の見通しが甘かったからだよ。でも気をつけろ。敵の数は膨大だ……」

「ええ、それも今伝えました」


 しかし、見通しが甘かったのは今しがた連絡を終わらせたレーヴァもどうやら同じだったらしい。

 外の様子はどうなっているのだろう、とテントを少しだけ開いて辺りを窺おうとしたのだが、バタバタと早足の音がいくつもテントの外から聞こえてきた。

 そしてそれと同時に、ビリリと身体中に焼き付くような殺気を覚えるレーヴァは無意識のうちに槍を構えていた。


「……まずい、見つかりました」

「へ?」


 しびれからまだ回復しないシュヴィスが間の抜けた声を上げたと同時に、バリバリとテントを叩き斬って複数の兵士が姿を見せたのだ!

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