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241.潜水潜入

 ラーフィティアとイディリークとバーレンにまたがる巨大なティーカカン湖の中には、多数の巨大な水系統の魔物が生息している。

 中には恐ろしく凶暴なものもいるのだが、深く潜らない限りは問題がないことをレーヴァは知っているので、服を脱いで下着姿になってからゆっくりと潜水をする。


(うひー、冷たい……!)


 肌寒くなってきた今の季節からすれば、湖の水はなかなかの低温なので風邪をひかないようにさっさと潜入してしまうことに。

 泳ぎはカルヴァルの私兵団時代の必須習得科目だったため、私兵団に属していた人間たちは全員できるのだが、レーヴァはその中でも泳ぎは苦手な方だ。


(けど、今は早く泳ぐ必要はないんだよな)


 もちろん早く泳げるに越したことはないのかもしれないが、今の潜入という特殊な状況下では早さではなく、どれだけ深く潜って自分の存在を消せるかが重要だ。

 息を止めるのも無限にできるわけではないので、水面から自分の姿が見えないぐらいに潜って両手と両足を動かして泳ぐ。

 海だったらもっと泳ぎにくいだろうが、ここは湖なのでまだマシな方だろう。

 そう考えながらいったん水面に出て、素早く周囲を見渡してから再び潜る。


(やぐらまではまだ距離があるみたいだな)


 今のところ、敵にバレずに進めているのでそれはいいのだが、右手に持ったままの自分の槍がどうしても素早い泳ぎの邪魔をする。


(くっ、泳いだことなんて全然ないからな……このまま裏に回り込むまでに体力が尽きませんように……)


 その願いが通じたらしく、レーヴァは何度か息継ぎをしながらもようやく槍を片手にやぐらのすぐそばにまで来ることができた。

 そこで槍にくくりつけてきた魔晶石を使って連絡しようとしたが、シュヴィスを見つけてからの方がいいだろうと思い直して、次に自分がやるべきことに集中する。


(さて、本当に厳しいのはここからだな)


 見張りの気配や物音に細心の注意を払いながら、彼は敵陣の真っ只中に槍を持っている下着姿という変質者丸出しの格好で動き出す。

 やぐらの近くということもあってさすがに敵の警備もきついみたいだが、やぐらの上にいる物見たちは遠くの方ばかり気にしているらしく、その下にいるレーヴァの存在には気が付いていないらしい。

 これだけでもラッキーな状況なのだが、ここでレーヴァにとってもっとラッキーなことが。


(おや、あれは……)


 見張りの緊張からなのか、岩陰にもたれかかって居眠りしている兵士を見つけたレーヴァは、その兵士を殴って気絶させ近くのテントの影へと連れ込んだ。

 そしてすぐに、この兵士が来ている服と自分の身体のサイズと合うかどうかを確認する。


(ちょっとブカッとしているけど、足元はブーツで隠れるし袖はまくればいいかな)


 潜入するにあたって一番手っ取り早いのは変装なのだが、まさかこんなにも早くこうして服が手に入るとは思っていなかった。

 そもそも下着一枚でずっと湖の中を泳ぎ続けてきたせいもあって、肌寒さからくしゃみが出そうになっているので、さっさと服を奪ってしまえばそれで第一段階は終了だ。


(やっぱりちょっとだけサイズが大きいけど、普通に動く分には問題ないな。それから武器のロングソードもあるし、槍と一緒に持っていればいいしな)


 だが、この自分の判断が間違っていたということを彼が知るのはすぐ後だった。

 そんなことは知らないまま、レーヴァは変装したままの状態でシュヴィスの居場所を探すことにする。


(けど、こんなに広い場所だとどこにいるかさっぱり見当がつかないな)


 だったら知っている人間に聞いてみるのが一番早い。

 レーヴァはそう考えながら、近くを通りかかった兵士に話しかけてみる。


「よう、調子はどうだ?」

「調子? いやあ、いつもと変わらないよ」

「そっか。ところでちょっと小耳にはさんだんだけど、ここに潜入しようとして捕まったバカがいるんだって?」


 余り時間をかけてもいられないので、即座に話を振ってみるレーヴァ。

 いつもの丁寧な口調を完全に封印して、砕けた話し方で情報を聞き出しにかかる。

 すると思いのほかあっさりと、求めているその情報が手に入った。


「あー、いるいる。ワイバーンで飛び回ってたところを弓の奴らに撃ち落とされたんだって。ベルタさんが話していたよ」

「はっ、そりゃあ確かに笑いもんだな。それでその捕まったのってどこに連れてかれたんだ? 俺も見てみてえな」

「ああ、そいつだったらずっと向こうに行ったところのピンク色のテントの中らしい。普段は物置として使っている場所さ」

「わかった、それじゃ見に行ってみるぜ。どうもな!」


 軽く片手を上げてそのテントに向かおうとしたレーヴァだったが、その兵士がレーヴァを呼び止めた。


「おい、ちょっと待ってくれ」

「ん、何だ?」


 何か用があるのかと思って振り向いたレーヴァだったが、次の瞬間その兵士は思いもよらない疑問を口にした。


「お前さ……何でそんな槍を持っているんだ?」

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