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237.もう一人のバーレンからの来訪者

「はい、こちらレーヴァです」

『レーヴァか? ナーヴァインだけど今は時間あったりするか?』

「あれ、ナーヴァイン副長? ええ、大丈夫ですけどどうしたんですか?」


 魔晶石の向こうから聞こえてきたのは、レーヴァの上司にあたるルイスの声であった。

 しかも妙に戸惑っている状況らしく、声が明らかに慌てているのを聞いて自然とレーヴァの表情も険しくなる。

 そして肝心の通信内容は恐るべき事実を伝えるものであった。


『お前、バーレンのレルトインという男を知っているか?』

「あ、はい知ってますけど……いったい何が……?」

『先ほどこのベルトニアに突然現れた大きな魔物は倒したんだが、また町中に魔物が多数出現して、戻ってきている騎士団の連中でも手が回らなくなっているんだ。だけど突然そのレルトインが現れて、私たちに協力してくれているんだ』


 でも、どうして突然そのレルトインという男が現れたのかはまだ詳しく事情を聴けていない。

 そこで同じくバーレンの方からやってきたシュソンと行動をともにしているはずのレーヴァにこうして連絡をしたのだが、レーヴァもそんなレルトインという男がこの国にやってきているのは初耳である。

 ルギーレたちから少し離れた場所で通信に出たレーヴァは、シュソンに何がどうなっているのかを確認しようとしたのだが、今度はそのシュソンの魔晶石に誰かから通信が入る。


「あれ、通信だ……はい?」

『カティレーバー隊長ですか? ロナです』

「ロナ様? どうされました?」


 シュソンに通信を入れたのはバーレンの宰相ロナだった。

 この流れからして、まさか自分も今までの連隊長たちと同じように首都に帰還しろと命令が下るのでは? と次の言葉を待つシュソンだが、相手の宰相は奇妙なことを言い出した。


『あの、レルトイン団長がそちらに向かってはおりませんか?』

「えっ、レルトイン団長ですか? いえ、僕たちの方には来ていないですけど」

『そうですか……今はどちらにいらっしゃいますか?』

「僕たちは南東のやぐらを破壊しまして、そのままこれから最後のやぐらに向かう予定です」


 そのシュソンの答えを聞き、ロナはならばとこう言い出したのだ。


『そうですか。それでしたら最後のやぐらは確か南南東でしたね。そのやぐらを発見したら近くで待機するようにレルトイン団長には伝えておきますので、そこで合流してください』

「わかりました。ですがロナ様、なぜレルトイン団長を?」


 自分たちと同じく一つの隊を率いているだけではなく、騎士団長の立場でもあるレルトインがなぜこちらに来るのだろうか?

 そこにはロナとシェリスで相談したからこその理由があった。


『そちらの王都に大きな魔物が出たという話をこちらに連絡していただきましたよね? そのことでそちらの人員が少なくなると思いまして、陛下と相談してレルトイン団長を派遣いたしました』

「えっ、そうなんですか? いや、助かるには助かるんですけど……そちらの状況はどのような感じですか?」

『こちらは他国と比べて被害が余り大きくなかったこともあって、今はファルスやヴィルトディン、それからイディリークにも派遣できるだけの人員を回しております』


 ルギーレのレイグラードにまつわる問題は、もはや彼一人だけの問題ではなくなっているので、襲撃された国同士で何とか協力し合おうという姿勢が出来上がっている。

 その現状を考えて、被害が一番小さかったバーレンが人員を各国に派遣しているのだ。


『それにエスヴェテレスからはシュヴィスという騎士団員の方が合流されていますよね?』

「はい、今は怪我人を治療中です」

『なるほど。そのエスヴェテレスからの増援もあったことですし、わが国でも何かできないかと陛下と考えた結果、派遣させていただいたのですが……まだ合流されていませんか?』

「ええ、まだ僕たちのところには来ていませんよ」


 その時、ふと自分を見る視線に気が付いたシュソンがその視線の方に目を向けると、自分と同じく魔晶石を耳に当てながら何かを言いたそうなレーヴァの姿を捉えた。


「……あ、ちょっとお待ちください。もしかしたら僕たちと一緒にいるラーフィティアの人が何かを知っているかもしれませんので、いろいろと話を聞いてからまたかけなおしてもいいですか?」

『わかりました。それでは一旦失礼いたします』


 もしかして自分に話があるんじゃないか? と思ったシュソンがレーヴァのもとに近寄れば、それは当たりだったらしい。

 そこで初めて、レルトインがベルトニアで魔物討伐をしているのだと知ることになった。

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