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235.二段構えのトラップ

 やぐらの周囲を囲っていた魔術防壁が薬によって溶かされたことで、一気にやぐらの破壊をするべくルギーレたちはやぐらに近づく。

 だが、その中でシュヴィスは得体のしれない不安感に包まれていた。


「何なんだろう、このままやぐらに近づくのはまずい気がする」

「そうですか?」

「ああ。どうしても気になるんだよ。ここに来るまでにルギーレたちから今までのやぐらを破壊した時の話を聞いていたんだけど、そのどれも見張りがいたり大型の生物兵器を用意していたりと、準備に抜かりがなかったじゃないか」


 でも、今回はそのやぐらを護っているのが魔術防壁だけ。

 しかもルディアがジェバーからもらった薬で簡単に突破できてしまった現状を踏まえると、なんだかこれで終わりではない気がするのだ。

 不安になったシュヴィスは一度このやぐらの周囲を、自分のワイバーンに乗って空から見てみようと言い出したのだ。

 そしてその話を聞いていたルギーレも同じ気持ちになっていた。


「わかりました。じゃあ俺は近づかないで待ちますよ」

「それじゃ僕も待つ。だから頼むよ」

「でもこの薬の効果はそんなに長く持たないはずだから、手短に済ませてくださいね」


 シュソンとルディアからそう言われたシュヴィスが、待たせていた自分のワイバーンに乗って大空へと飛び立ち、地上のやぐらの様子を確かめてみる。

 だが、やぐらの周囲には人影が一切見えない。

 だだっ広い平原に建てられたこのやぐらの周囲にかけられている魔術防壁が、そんなに信頼できるものだから見張りを本当においていないのか?

 見た感じ、やぐらにはどこも変わった様子はないし罠が仕掛けられている様子も見受けられない。

 本当にこれだけなのか? と思うシュヴィスだが、このままグルグルと上空を旋回し続けていてもいたずらに時間が過ぎていくだけなので、地上に戻って偵察結果を伝える。


「なら本当に大丈夫そうですね」

「では一気に壊しちゃいましょう。このままここに建てておいたらあのコートの集団がやってこないとも限りませんから」


 レーヴァにそう言うルディアの一言で、一気にこのやぐらの破壊をするべくレーヴァの連隊員たちが近づいていく。

 しかしその時、レイグラードの加護を受けて常人よりも優れた状態になっているルギーレの耳にふと、ズズズ……と何かがこすれるような音が聞こえてきた。

 その音の出どころは、今まさに隊員たちが向かっているやぐらの方ではないか。


「……と、止まれええええええっ!!」

「え?」

「あ……ああああああああああっ!?」


 思わず全力で叫んでいたルギーレだが、時すでに遅し。

 やぐらの周囲の地面が一気に陥没したかと思うと、深い穴の中へと隊員たちが次々に落ちて行ってしまった。


「くっ!?」

「うわ、危ない!!」


 シュヴィス、シュソン、ルディア、レーヴァの四人と他の連隊員数百名は無事だったのだが、先にやぐらに駆け寄っていた連隊員たちは次々に穴の中に飲み込まれていく。

 まさかの落とし穴のトラップがあるとは思っていなかったルギーレたちだが、思えば人の気配がなさすぎることをもっともっと警戒すべきだったと今になって悔やまれる。

 しかし、敵の仕掛けたトラップはこれで終わりではなかったのだ。

 それは落とし穴が発動したこととどうやら連動していたらしい、やぐらの上からウィーン……と奇妙な音を響かせて現れた無数の砲口が姿を見せたことだ。


「ぜ、全員退避ー!!」

「ぎゃああああああっ!!」

「うわあああああああああああっ!!」


 砲口から爆音を立てて放たれる大きな金属の砲弾。

 それから小さい砲口から小型の砲弾が次々に、落とし穴に引っかかった隊員たちに風穴を開けて血の海に変えていく。

 しかも我先に逃げようと落とし穴を掘り進める隊員たちは、その落とし穴が崩れてきたことによって足を取られてしまい、無情にも弾丸がそこに襲い来るという形で絶命していく。


「くそっ、だったら上空から近づいて一気に仕留めてやる! おいシュヴィスとか言ったな。ちょっと僕がワイバーンを借りるぞ!!」

「え、あ……俺も乗る!」

「それじゃ私たちは魔術を使える人と、弓矢を使える人たちであのやぐらを少しでも壊しましょう!」


 そのどちらもない隊員たちは、とにかく退避と仲間の救出をしてくれと采配をするルディア。

 今は誰がどう指揮をするかではなく、的確に迅速な判断ができる人間が指揮をするのが重要な場面である。

 だが、やぐらの上の砲口による猛攻がなかなかやぐらに近づくことを許してくれない。

 直方体の上部に取り付けられた無数の砲台をまずどうにかしなければならないので、ここはワイバーンによる攻略を迅速にせねばならない状況だった。

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