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234.人気のないやぐら

 しかし白いドラゴンに会いに行くのは後回し。

 まずは当初の目的である五つ目のやぐらを破壊するのが先である。

 考えてみれば現在もベルトニアで正体不明の魔物と戦っているであろう騎士団たちが頑張っているのに、自分たちがやぐらを壊しに行かなくてどうするんだとルギーレたちは急ぐ。


「いやあ、まさかこうやってワイバーンに乗らせてもらえるとは思わなかったよ」

「まあ、空を飛んだ方が楽だからね。でも馬はちゃんと取りに帰らなきゃね」

「もちろんですよ」


 キャンプをたたんだ三人は馬をいったんおいて、シュヴィスが乗ってきたワイバーンに乗せてもらい、短期決着を狙いに向かう。

 そしてその総勢四人を乗せたワイバーンが、バサバサと重たそうに飛行しながら五つ目のやぐらに向かって飛んでいく。

 するとそこには赤い制服に身を包んでいる黒髪に小柄な青年を筆頭として、大勢の騎士団員の姿があった。


「アズカジュク地方のやぐらを破壊しに来た者ですが、ええと……あなたがレーヴァ連隊長ですか?」

「はい、そうです。ようこそお待ちしておりました」

「お待たせしました。そして初めまして。私はルディアって言います。こっちがルギーレに、バーレンのカティレーバー斧隊隊長、そしてエスヴェテレスからやってきたグノウェイナー騎士団員です」


 礼儀正しい性格のレーヴァもまた、このラーフィティアに追放されてきた一人。

 イディリークの私兵団時代から、ここに来る前にルギーレたちと別れてベルトニアに向かったシャブティとはコンビを組んでいる。

 ファルスのシャラードやイディリークのジアルと同じく槍の使い手であり、その小柄な身体を逆に利用し素早い動きを軸にする戦法で一気に相手を串刺しにするのが得意。礼儀正しいと同時に落ち着いた性格なので、何かと突っ走りやすくなりがちな相棒のシャブティを抑え、息の合ったコンビネーションを見せることでも知られている。

 しかし、今回はそのシャブティから連絡を受けてこのルギーレたちと合流したことで、いつもの調子が出るのかどうかが不安なレーヴァ。

 そんな彼の心中など知る由もないルギーレたちは、改めてこのやぐらの状況について彼に問いかける。


「それで……こうやってワイバーンに乗って上から見た感じでは特に何も変わらないみたいですけど、いったいどうなっているんですか?」

「はい、このやぐらの周辺には魔術防壁がかけられております。なので見張りもいない状態になっているかと」

「ははあ、なるほどね……だったらその魔術防壁を壊して、それで一気に壊してしまえば終わりってことですね」


 しかしその魔術防壁はかなり高度な文様によって作られているらしく、普通の物理攻撃や魔術攻撃ではビクともしないことがシュヴィスとルディアの調べでわかった。


「うーん、これは相当まずいですよ。ここにいる全員で集中攻撃しても無効化されないぐらいに高度なものですよ」

「俺もルディアと同じ感想だね。よほどレベルの高い奴が作ったんだろうな」


 魔術師の二人から見てものすごく高度なものらしいのだが、それを破る方法が全くないわけではなかった。


「でもちょっと待ってください。それだったらこれが役に立ちますよ」

「あれ、それって確かジェバー様の?」

「え? レーヴァさんは知っているんですか?」


 事前にジェバーからもらっていた、魔力を無効化する薬をここにも持ってきていたルディア。

 その薬を見たレーヴァが反応したので、ルディアも彼に反応する。


「ええ、知っていますよ。私……たまに見るんですよ。ジェバー様もあなたたちと同じく魔術師ですから、何かを研究しては変な笑い声をあげているのを」

(変な笑い声をあげているのは元からじゃないのかしら?)


 口には出さないものの、ジェバーと対面したルディアは本気でそう思ってしまう。

 彼の変人っぷり……もとい、ハイテンションっぷりはラーフィティアの騎士団でも有名なのだとか。

 それはさておき、この薬を魔術防壁にかけてみたら無効化できるんじゃないかと考えたルディアは、それをさっそく実行に移す。


「人間の飲み薬ではありますけど、魔術防壁にも効くのかしら?」


 そんな疑問を口に出すが、ローレンがあの海竜もどきと戦った時に海竜にロックオンされなかったことからきっと効果があるのだろう、と思いつつ中身を魔術防壁にかけてみる。

 するとその部分がシュウウ……と何かが溶けるような音を立てながらじわじわと穴を開け始めたのだ。


「お、おおおおおおっ!?」

「やった! これなら中に入れますよ!」


 その光景を見て喜びの声を上げるシュソンとルギーレだが、敵もこういう時のためにさらなるトラップを二つ用意していることなど、今の一行は知る由もなかった。

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