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22.爆発

 突然、先ほどの急ブレーキとは明らかに質も大きさも違う揺れの衝撃が乗客たちを襲う。


「うおおおおあっ!?」

「きゃあああっ!!」


 しかも今度は列車の前方と後方からほぼ同時に聞こえてきた衝撃音、そして爆発音。

 それに加えてルギーレが感じた、ほんのりと感じられる特殊なこの臭い。


「火薬の臭い……じゃねえか、これ?」

「えっ、火薬?」

「ああ。パーティーにいたころ、洞窟をふさいでいた岩をどかせるのに爆弾を使ったことがあったんだ。その時に嗅いだことのある火薬の臭いとそっくりだぜ」


 ということは、まさかこの揺れは爆弾か何かを使ったからだろうか?

 いや、きっとそうに違いないだろう。

 しかも乗り込んできた列車強盗たちの様子を見ると、この衝撃にまったく驚いた様子が見られないので、絶対に何か関与しているに違いない。


(くそ、このままじゃあこいつらにやられっぱなしだぜ!)


 爆発が起きているとなれば、さっさとこの列車の中から脱出しないとまずい。

 そう思っているルギーレとルディアだったが、列車強盗たちは次の手を先に繰り出してきた。


「よし、仕上げにこれを使うか」


 ルギーレたちが座っている座席の近くにいる強盗グループの男が、懐からゴソゴソと大きくて黒いボールを取り出した。

 それは表面にゴツゴツとした白い突起がいくつもついているもので、男はそのボールを列車の床に向かって全力でたたきつけた。

 するとその瞬間、列車全体に強烈な耳鳴りのような音が響き渡った。


「うぐっ!?」

「うわ……気持ち悪い音!!」


 とっさに両手で耳をふさぐルギーレとルディアだが、ふさいでいる両手をも突き抜けて頭の中に直接響いてくるその音に、たまらず膝をついたり壁にもたれかかったりしなければならなくなった。

 さらに男はもう一つ別に白いボールを取り出して、地面に向かって黒いボールと同じようにたたきつける。

 そのたたきつけられたボールから、今度は白い煙がかなりの勢いで噴射されて車両内部に充満する。

 それをまともに吸い込んでしまったルギーレとルディアは、そのまま意識を徐々にブラックアウトさせていってしまった。



 ◇



「……い、おい起きろ!」

「う……んっ!?」


 意識を取り戻したルギーレが気が付くと、自分の身体がロープでグルグル巻きにされて縛り上げられていた。

 続いて自分の視界に飛び込んできたのは、まったく知らないヒゲ面で茶髪の男と、列車の中で隣に座ってきた黒髪の男の二人だった。

 自分が着こんでいた黄色いコートは脱がされ、持ち物もすべて無くなっていることに気が付いたルギーレは、隣にルディアがいることに気が付いて一安心したのだが、その安心感が危機感に変わるまでは五秒と要さなかった。


「本当にこいつで間違いないんだろうな?」

「ああ、それは魔力で確認した。常人からでは考えられない魔力の質と、背格好や服装が一致するからな」

「ほう……ならばさっそくいろいろ話を聞かせてもらいたいもんだぜ」


 茶髪にヒゲ面の男はおそらく三十代後半ぐらいだろうか?

 黒髪の男と同じく黒いコートを着込み、背中にはバスタードソードを背負っている。

 だがそれよりも気になるのは黒髪の男がいったい何者なのかということと、自分たちがどうして縛られているのかということ、そしてここはどこなのかということの三つだった。

 頭の中が混乱から抜け出せそうにないルギーレの目の前にしゃがみ込み、茶髪の男が口を開いた。


「噂には聞いているが、改めて確認させてもらうぜ。お前はマリユスって男の勇者パーティーから脱退させられたルギーレだな?」

「……だったら何なんだよ。そもそも人に名前を聞くならまずそっちから名乗れよな」


 ルギーレのかなり態度の悪い答え方に対し、茶髪の男の額に青筋が浮かんだ。

 しかし、彼は深呼吸をして落ち着きを取り戻す。


「へっ、まあいい。ってことはあれか。お前がジゾの町のほうで伝説の聖剣を手に入れたってのも本当らしいな」

「……」

「そーやってだんまりだってのは、イエスでもノーでもないってことか。だがしらばっくれても俺たちにはわかるんだぜ。お前が圧倒的な力でロックスパイダーの巣を簡単に制圧したってことをな」


 ふふふ、と得意げに笑みを浮かべて男はルギーレにそう言うが、ルギーレはルギーレで聞きたいことが山ほどあった。


「なぁ、お前らは一体誰なんだよ? 俺も質問してるんだし、相手がわからなかったら何も話したくねえんだけどなあ?」


 目の前にいる男たちが列車強盗にかかわっていると踏んだルギーレは、不機嫌さをこれっぽっちも隠そうとしない口調でそう言う。

 その答え方にまたもや茶髪の男の額に青筋が浮かぶが、黒髪の男が茶髪の男の肩に手を置いて冷静に告げる。


「落ち着け。あんたがここで怒っても話は進まないだろう。それに俺たちに協力してもらう相手には自己紹介も必要だろう」

「……ぐ、わ、わーったよ。じゃあ俺から名乗らせてもらうぜ。俺は盗賊団の団長を務めているウィタカーだ」

「俺は盗賊団に雇われた傭兵のトークス。さて、名乗ったんだからこっちの質問には答えてもらうぞ」

「ふざけんな! 勝手にこんなわけわかんねえ場所に連れてきておいて何なんだよ!? 協力とか何とか言ってたが、ちゃんと事情も説明しろよな!!」

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