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230.地下の実態

「今回の魔物襲撃、それから五番目のやぐらを発見させるのがまさか同時になるとは思わなかった」

「そうだね。そこは私も驚きだ」


 ニルスでさえも予想できなかった今回の展開だが、確実に流れは自分たちの方に来ているとこれで確信した。

 このままいけば、知らず知らずのうちにこちらが直接手を下さなくてもラーフィティアを壊滅させることができる。

 そしてその後にヴァンリドが王都を取り戻す。これで計画は完璧だ。


(まぁ、この愚かな王様にはそう伝えているだけなんだけどね)


 実際にはその後に、自分たちが動くことによってヴァンリドも殺してラーフィティアも手に入れればいい。

 そう考えているニルスだが、ここで改めて目の前に立っているそのヴァンリドから今までのおさらいをしてもらう。


「じゃあさ、君が考えていることを改めて自分の口から説明してくれないかな?」

「ああ、いいだろう。まずは私たち旧ラーフィティアの人間しかわからない地下の空間があることを利用し、そこでやぐらを造るために必要な材料や道具を持ち込んである程度パーツを製造する。それからパーツの状態で各地に運び、やぐらを組み立てて地面に魔力を送り込み、王都に向かってあの魔物を動かすためのエネルギーを送り込む……だろ?」

「そうそう、正解。私の予想以上にあの魔物の成長スピードが早かったからねえ。いやあ、自分の創り出した魔物ながら惚れ惚れしちゃうね」


 今のヴァンリドが自分で説明した通り、このニルスの協力でラーフィティアの国土を通じてベルトニアの地下にいる大型の魔物に魔力を送り込めるやぐらを造っておく。

 そして時が来たら自動でその魔物が目覚めるようにして、ベルトニアを壊滅状態にさせる。

 イディリークからやってきた連中が集まっているのはそのベルトニアと周辺だけなので、ベルトニアさえ壊滅させてしまえば奴らも終わりだからだ。

 そこで一気に攻め込み、ベルトニアをまた立て直すのだけを覚悟で国を奪還するのがヴァンリドたちの作戦だった。

 しかし、ヴァンリドには一つ疑問が。


「でも、これで本当に良かったのか?」

「何がだい?」

「いえ、あの……魔力を送り込むために造ったやぐらなんだけど、あれがどんどん破壊されていて……まだ何か利用価値があるのでは?」

「おいおい、何を言っているんだい? もう地下にいるあれは目覚めて王都をめちゃくちゃにしているんだよ? だからこの先で残りのやぐらがあろうがなかろうが、もうそれは私たちにとっては関係ない話なんだ。だから君たちは攻め込む準備を整えてよね」

「……ああ、わかった」


 それもそうかと思って退室したヴァンリドは、そのまま出撃準備を整えるべく廊下を進む。

 しかし、何かが引っかかると足を止めた。


(何だろう? あのニルスという男……どうもまだ何か隠しているような気がするんだが……)


 だが、今のヴァンリドにはそれはわからないままだった。

 そもそもあの男の素性だって全然わかっていないのである。

 もともとこの王国は自分のものだった。それが自然災害によって壊滅させられてしまい、頃合いを見て再び国王の座に返り咲くつもりだった。

 でも、いざ国に戻ろうとしたらイディリークから来たという連中に占拠されてしまっていたのである。

 こんなことがあっていいわけがない。この国はもともと私たちのものだったのだから、きっちり返してもらわねばならなかった。


(でも、自然災害に勝てなかった私たちの兵力はぐんと下がってしまった。そんな時にふと現れたのがあのニルスという男だった……)


 彼は傭兵をしていると言っていたが、それ以上の自分の素性については言葉を濁すばかりで、実は全然知らないのである。

 しかし、ラーフィティア王国を取り戻したいという自分の野望に協力してくれるということだったので、実際にいろいろと計画を立ててもらってその内容に共感したヴァンリドは、彼を仲間に引き入れた。


(まあ、十二の騎士団の連中からは反発もあったが……あの男はその十二の騎士団長全てと勝負して、全員を三十秒以内で倒した恐ろしい武芸の腕の持ち主でもあったからな)


 しかもその十二回の勝負全てでまだまだ余裕があったみたいなので、ならばと十二の騎士団全てをまとめる存在の将軍にも出てもらったのだが、彼も一分足らずで倒されてしまったのだった。

 得体の知れない実力の持ち主であり、常に微笑みを絶やさないので何を考えているのかはわからないが、祖国奪還計画は確実に進んでいる。

 でも、そんなニルスに対してヴァンリドがこれまた得体の知れない威圧感と疑問を抱くのも事実だった。

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