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228.王都ベルトニアの異変(その3)

 その日、ベルトニアにあるレガリア城では騎士団長のローエン・マリスデルが執務に励んでいた。

 四十一歳の彼もまた、元イディリークの王宮騎士団で副団長を務めており、階級としては帝国副将軍と呼ばれていたカルヴァルの副官だった。

 主に城の警備を担当していて、有事の際には騎士団長の副官として前線に赴くこともあった彼がその団長のカルヴァルについていく形で反乱を起こしたものの、見事に返り討ちにあってしまい、王宮騎士団と私兵団ごとこの荒れ果てた地に追放されてきてしまったのである。


「だったらよぉ、ローエン……お前が騎士団の団長をやってくれや。俺の副官だったら俺に代わってこの先のこと、まとめてくれよ」

「かしこまりました。それでは私が騎士団長の座に就任させていただきます」


 二つ返事でその座を引き受け、国が変わって新生ラーフィティア王国の騎士団長になった今でも相変わらず王城の警備を任されており、ロングソードによる剣術と魔術を駆使して戦う。

 ただし魔術に関しては、攻撃魔術は得意なものの回復魔術は苦手という一面がある。

 カルヴァルよりも年上で、威厳のある落ち着いた性格の為か、国王のカルヴァルからは兄貴的存在として見られている。

 そんな兄貴的な立場でもある彼が、奇妙な地鳴りに気が付いたのは執務に励んでいるその時であった。


「……ん?」


 続いてガタガタと揺れる室内。まさか地震か?

 だったら避難の準備をしなければと手を止めて立ち上がった彼だが、それはすぐに収まったのである。

 一応、何か変わった様子はないかと執務室の窓の外に目をやってみるものの、特にいつもと変わった様子はなく王都の町並みが見下ろせる。


「……何だ、気のせいか」


 もしかしたら自分が揺れていたのかもしれない、と気を取り直して目の前の書類に目を通すローエンは、その地鳴りよりも気になっていることがあったのだ。


(最近頻発しているこの王都の異変……それから前の国王だったヴァンリドがこの国で目撃されたという話もあるし、イディリークからやってきた冒険者たち……特にあのレイグラードの使い手であるルギーレとかいう男を始めとするやぐらの破壊グループの活躍との関連性があるかもしれない今の状況……)


 果たしてどこから手を付ければいいのか?

 そもそもこれからこの国はどうなってしまうのだろうか?

 ローエンがそんなことを考えながらテキパキと書類を処理していると、バタバタと部屋の外から駆けつけてくる何者かの足音が聞こえてきたので、今度はドアの外に目を向ける。

 そしてノックもせずにバタン! と大きな音を立てて執務室のドアが開かれ、ハアハアと息を切らしながら銀髪で細身の弓使いの男が姿を見せた。


「マリスデル団長、大変ですっ!!」

「何だ、ルイスか。そんなに慌ててどうしたんだ?」

「ち、地下から……地下から突然魔物が現れました!! それもかなりの大型の魔物です!!」

「は?」


 地下から魔物? 一体どういうことだ?

 話がよく見えないのだが、駆けつけてきたルイスの話を聞いてみるとこのような感じだった。

 先ほどの地鳴りは、ベルトニアの町中の地面が突然割れて地下から魔物が現れてきたということだ。

 当然騎士団が総出で対処に当たっているが、何でも魔術が通用せず、しかも触手のようなものを振り回して物理攻撃もなかなか届かない大苦戦状態を強いられているらしい。


「わかった、それでは私もすぐに向かおう」

「お願いします!! 私は先に、今お伝えした現地へ向かいます!」


 こんな時でも落ち着いた態度を崩さないローエンにを心の中で頼もしく思いながら、今しがた走ってきた道を駆け戻っていくのは、同じくイディリークから追放されてきたルイス・ナーヴァインである。

 元イディリーク帝国王宮騎士団員であり、当時はローエンの副官として隠密行動を得意とし、待ち伏せやトラップを仕掛ける裏方の仕事をメインに活動していた。

 カルヴァルに騎士団長になるように頼まれたローエンについていく形で、自動的に現新生ラーフィティア王国副騎士団長となったのだ。

 戦場で裏方の作業に従事するグループについては、彼が総指揮を受け持つほどに信頼されている。

 普段は文官として職務に励んでいるのだが、もちろん彼も戦えないわけではない。

 ロングボウと魔術を駆使して戦うが、裏方の作業中に敵の邪魔が入った時には魔術は目立つので余り使わない様にし、弓矢で敵を倒すようにしている。

 無口だが胸には熱いものを秘めており、裏方の仕事の件も含めて頼れる右腕としてローエンからもカルヴァルからも評価が高い。

 だがそんな彼でさえ、町の地下から地面を割っていきなり魔物が出てくるなどということは未知の光景だったのだ……。

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