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225.強大な存在

「くっそー、あんなのまでいるのかよぉ!?」

「無駄口叩いてないで戦え!!」

「でも……こりゃあきついぜ!!」


 そもそもが近寄れないじゃないかと悪態をつくシャブティ。

 そんな彼を一喝するパルス。

 こんな時に遠距離攻撃ができるメンバーがルディアしかおらず、残りのメンバーは敵から弓を奪ってちまちまと矢でダメージを与えることしかできていない。

 それもそのはず、やっとの思いで狭い道を抜けて山を登った先に待っていたのは、この場に似つかわしくない海竜もどき……そう、ルディアがファルスの町で戦ったあれであった。

 しかし、以前と違うところが一つ。

 それはなんと、前にバーレンで列車を襲撃してきたワイバーンのように鉛弾を発射できる砲台を背中部分に搭載していたのだ。

 そのせいで下手に近づけば、身体に風穴が空いてしまう。


「ルディア、お前は前にあの海竜みたいな兵器とファルスで戦ったんだろう? その時はどうやって対処したんだっけ?」

「ええっと……口を開けて炎を放射する準備をしているときに、リアンさんの部隊が矢に火薬を入れた袋をつけて、それを口の中に命中させて爆発させて倒したわよ!」

「となると……あ、ダメだな。今回は口が砲口になっているからたとえその方法ができたとしても、途中で撃ち落とされて終わりだろうな」


 ルギーレの言うとおり、今回の海竜もどきの改造バージョンといえる口から大量の鉛弾が発射されている現実を踏まえると、今回はその方法は通用しない。

 一応、事前にルディアがルギーレたち全員に魔術防壁を張っているし、ローレンやシュソンなどの騎士団の面々は魔術防壁の取得が入団の最低条件となっているので、防壁が切れたらかけ合って戦っていた。

 だが、それも無制限で有効なものではない。

 通常は二十発ほどの物理攻撃を受けたら壊れてしまうものだし、威力の大きい魔術による攻撃を受ければ一発で壊れてしまうこともある。

 それに物理攻撃の場合でも、これまた攻撃力の高い武器で攻撃されればそれだけで防御できる回数が減ってしまう。

 そして今回の相手は、それこそ無制限に鉛弾を発射してくる異常な攻撃方法の持ち主なので、魔術防壁もあってないようなものであった。

 さすがにこの狭い山道にそこまでの人数を割くことはできなかったのか、前回の三つ目のやぐらの時と比べれば人間の敵の数は少なく、およそ五十人と言ったところだろうか。

 しかし、その数の少なさをカバーするのが海竜もどきの存在なので、この大きな敵をどうすればいいのか悩む一同。

 まず近づくことができなければ勝機もない。


「無差別に撃ってくるのがタチ悪いな。誰かに狙いを定めているわけでもないから、下手に突っ込んだら撃たれるぞ!!」

「おまけに左右は岩壁に囲まれていて、奴の後ろはやぐらがあるから木々の間を縫って進むこともできないし……」

「あの砲口が向いていない時を狙って走り抜けるにも、ちょっと距離がありそうですしね……」


 シャブティ、ロサヴェン、ティラストの三人が強大な敵の攻撃を分析するが、かと言ってそれをどうやって攻略するかのアイディアが浮かんでこないのだ。

 ひとまず鉛弾が当たらない場所まで下がったら、その攻撃はストップしてくれた。

 だが、また近づけば攻撃が再開するのでどうやら敵の動きに反応しているらしいとわかった。


「ゆっくり進んでも反応されるからな……どうにかして反応できないようにできないか?」

「ここから魔術を放ってもいいけど、さっき魔術を当てても意味がなかったからな……」


 しかし、ラルソンとパルスのそんな会話を聞いていたローレンが、頭の中で一つの仮説を立て始める。


「もしかしてなんだが、あれって魔力に反応しているんじゃないのか?」

「魔力ですか?」

「ああ。確証は持てないんだが、もしそうだとしたら私にいい考えがある」


 ローレンが何かいい作戦を思いついたようだが、果たしてそれは何なのか?

 顔を見合わせる二人の目の前で、ローレンは荷物の中から一つのビンを取り出した。

 そのビンには紫色の液体が入っており、ラルソンとパルスもそれが何なのかをすぐに察した。


「えっ、もしかしてそれを使うんですか? ロクエル団長」

「そうだ。これを私が自分に使って、あの大きいのに接近できないかどうかを試してみよう」

「いや無茶ですよ! それってジェバーの奴に作ってもらった薬ですよね!? それでどうなるかなんてわからないじゃないですか!」

「やってみなければわからないだろう。まあ、近衛騎士団長の私がするべきことではないのかもしれないが、やらないよりはマシだろうからな」


 自分の地位から考えれば、無事にイディリークへと帰還して再びリュシュターの護衛につかなければならない。

 だが、ここでむざむざしていたらあの大きいのに殺されてしまうだけだろう。

 だったらイチかバチかやってみるだけだと決断し、ローレンはその手のひらサイズのビンの液体を一気に飲み干した。

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