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222.ネペック地方とは?

「そりゃあ、山のふもとを通り抜けることができる列車のルートもあるんだけど……今回はかなり長丁場になりそうだね」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ。さっき言っただろう? 僕が山を越えるのに三日かかったって。それは単純に山を越えるだけなら一日あれば十分なんだけど、途中で野生の魔物討伐をしていたからなんだよ」


 東のネペック地方はそんな魔物の巣窟となっているヤオトラム山のふもとに位置しているだけあって、他の地方よりも凶暴な魔物が数多く生息しており、その分この地方には住んでいる人間が少ないのである。

 確かに村や町もあるのだが、そこの大半は城壁で囲まれているか、魔物が少ない場所を選んで寄り添って暮らしているのが実態だ。


「それはきつかったでしょ?」

「きつかったね。小型のものだけならまだしも大きいのまでいたからねえ。やっぱり人間の手が入っていない場所を超えるのは精神的にも肉体的にもつらいもんだったよ」


 それでも普通に登山道を超えてこなかったのは、結局その当初の目的である国境付近の調査のためだったからだ。

 事実、その山を越えて不法入国してくる人間はかなりいる。

 それもラーフィティア側に抜けるのではなく、バーレン側に抜けてくるのだ。

 再興したにせよ、ラーフィティアはまだまだバーレン以上に貧しい国であるため、潤いや活気を見せているのはそれこそ王都のベルトニアとその周辺だけであるといえる。

 そんな暮らしが嫌でバーレン側に抜けてくる人間たちを取り締まっているのがそのバーレン騎士団なのだが、今回は不法入国者かどうかもわからない状況だったので、結局シュソン一人で来ることになったらしいのだ。


「まあとりあえず無事にここまで来られてよかったけどねえ。何も収穫がなかったのはちょっと損した気分だね」

「ということは、別の場所に潜伏している可能性もあるってことですか?」

「そうなるだろうね。今の僕たちが向かっている四つ目のやぐらを建設していた連中が、その目撃情報のあった怪しい人影なんだろうけど、向こうももっといい建設場所を見つけたのかもしれない」


 いずれにせよ、建設されているやぐらを山の中から見つけ出すのが当面の第一目標なのだが、それにはまずヤオトラム山の中に生息している多数の魔物を倒すのが先になる。

 敵は人間だけではなく、自然とそこに住んでいる生物も一緒なのだ。

 そのためには、どこかの町や村で魔物たちをおびき寄せるためのエサを購入したり罠を仕掛けるための材料を集めたりしなければならないだろう。

 すでにベルトニアに向かうために別れたジレフィンが言っていた、現地で待っているシャブティという男が率いている連隊と合流すれば、罠の作り方だったり魔物をおびき寄せる方法を教えてくれるはずだとローレンが言う。


「あの男も連隊長になっていたとはな。私も直接絡んだわけではないが、彼の豪快な斧さばきは有名だったぞ」

「へぇ、そうなの? それは同じ斧使いとして興味があるねえ」


 他人に対して警戒心が強いタイプのシュソンにしては珍しく、どんな人物なのかと興味を持っているらしい。

 そんなシュソンの様子を見て、最初に出会ったころと比べると少しは打ち解けられたのかなあと考えるルギーレたちは、ようやく馬から列車に乗り換えられる町を見つけて四つ目のやぐらが待っているネペック地方へどんどん進んでいく。

 しかし、よく考えてみれば魔物を相手にするのは久々かもしれないとルギーレが言い出した。


「勇者パーティーにいたころは魔物の討伐にもよく出かけていたし、レイグラードを手に入れてからはロックスパイダーとも戦ったりしたけど、それ以来かなあ……魔物と戦うのなんて」

「そういえばそうかもしれないわね。だってあれ以来、ウィタカー率いるバーサークグラップルを始めとする人間たちばかりと戦っている気がするわ」


 人間相手だったら、自分も同じ人間なのである程度攻撃のパターンが読めたりする。

 だが魔物相手となれば、そもそも人間とは違う生態や体躯を持っているだけあって予想もつかない動きをされることは当たり前である。

 それにルギーレは全く経験がないわけではないのだが、問題はルディアだ。


「さすがに山を燃やすわけにはいかないでしょうし……前の林の時はジレフィンさんを通じて許可が下りたみたいだったけど、山を燃やしちゃったらバーレン側にも支障が出るわよねえ」

「いや……それ以前に犯罪者として投獄されるのがオチだと思うぞ」


 一応登山ルートもあるのだし、今度ばかりは林みたいに放火は許されない。

 だったらやっぱり地道にコツコツと魔物討伐をするしかない、と考えながら一行は列車に揺られ続けていた。

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