表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

227/629

220.君だってそうだろう?

「ジレディルも……やられました」


 まさかの副長の死。

 そんなのは信じられない。信じたくない。その気持ちで頭の中がいっぱいなウィタカーとは対照的に、ニルスは相変わらずの微笑みで対応する。


「なるほどね。となると、残っているのは誰だっけ? 君たちの中では君と……それから傭兵二人か。でも、その傭兵たちもあんまり期待できなさそう」

「……待て。ちょっと、待てよあんた……」


 どうしてこの状況で笑っていられるんだ。

 なんでこの状況でそんなに落ち着いていられるんだ?


「確かにあんたは言っていたよ。感情は勝利を逃すって。でもさ……ここまでこっちがボロボロになってんだぞ? あんたは悲しくないのかよ?」


 さすがにここまでやられてしまったら、どんな冷静な人間だって少しは感情が揺さぶられてもおかしくないはず。

 なのになぜ、そこまで平然としていられる?

 それは冷静なんかじゃない。頭がおかしいって言うんだ。

 そんな思いを言葉に出すウィタカーだが、ニルスの方は特に変わった様子は見られない。


「今のセリフからして、君だってジレディルと同じことを考えているみたいだけどさあ……君は部下の一人や二人が死んだくらいで動揺するタイプなの? というかそもそも、君だって部下の死は何度も見てきたんでしょ?」

「そ、それとこれとは話が別だ!!」

「いいや、部下が死んだってのは私にとっては同じことだね。下っ端だろうが副長だろうが、部下なのに変わりはない。何度も言っている気がするけど、戦場に立っている以上はそんな甘ちゃんじゃあ困るんだよねえ。あの勇者たちは今のレイグラード使いをもうダメだって見限って追放したって聞いてるけど、私にとってもあの勇者たちが信頼できなくなったら切り捨てる対象なのは変わらないんだからね」

「なんなんだよあんた……頭がおかしいんじゃないのか?」


 こいつには感情というものがないのか?

 そのうさんくさい微笑みの下で何を考えているのか、さっぱり読み取ることができないウィタカー。

 この男のもとにいて本当にいいのだろうか? こいつはもしかして、俺たちを使うだけ使ってポイするだけじゃないのか?

 徐々に不信感が高まっていくウィタカーは、自分以外の長い付き合いだったメンバーが全員連絡が取れなくなってしまったことで頭の中が非常に混乱している。


「ふふふ、頭がおかしい……か。そうかもしれないね。でも君は少し休んだ方がいいだろう。顔がヒクついてるよ」

「……次のやぐらには誰を行かせているんだ?」

「ああ、そっちならいよいよ勇者たちの出番だね。まあ、君たちは本当に少し休むべきだね。ちゃんと心と身体を休めておきなよ。後は勇者たちが何とかやってくれるだろうから」

「……わかったよ!!」


 感情を表さないタイプのウィタカーだが、この時ばかりはさすがに我慢できずに荒々しく部屋を出て行くしかできなかった。

 このままどうにかしてあの連中と真っ向勝負するか?

 いや、向こうは向こうで戦力を増強しているだろうからそれは危険だろう。

 かと言ってニルスは相変わらず何を考えているのかわからないので、こうなったら自分で動くしかないだろうと考える。


「……ってわけでさ、俺はどうもあの男が信用できなくなってる」

「ふーむ、それはまあいいとしても何か手があるのか?」

「だからこうしてお前ら二人にこうやってこっそり話してんだよ」


 自分の部屋にヴァレルとトークスの二人を呼び出したウィタカーは、怒りに身を震わせながら二人にこれからのことについて話をしだした。


「どうもあのニルスってのが信用できなくなってきてる。それも俺だけじゃなくて、勇者の連中もそうらしいんだ」

「えっ、それじゃあ俺たちも抜けるってのか?」

「そうなるな。お前たち二人の雇い主はあのいけすかない野郎じゃなくて俺だからな。今の俺が一番信頼できるのはお前たちだよ」


 そう、あくまでもウィタカーはニルスに協力している立場なので、そのウィタカーについている傭兵二人は


「それはそうとして、今すぐに脱退するつもりなのか?」

「できればそうしたいんだが、向こうは俺たちが抜けたら何してくるかわからないからな。今はまだ様子見ってところだろう」


 いずれにせよ、その時が来ればしっかりと脱退させてもらう予定であるので、今のうちから身の振り方を考えておかなければならない。


「俺たちは俺たちのやり方で、あのレイグラードを手に入れるために動かなきゃな」

「そりゃー別に俺たちは金さえもらえりゃーいいけどさ、そうなると具体的なプランを立てなきゃなんねーだろーよ」

「俺もヴァレルに同意だ。脱退するならするで、あのレイグラードの使い手にどうやって立ち向かうかだよ」

「それだったら、俺は最近面白い噂を聞いているんだ」

「へ? 噂?」


 そりゃーいったい何なんだ?

 ヴァレルが思わず身を乗り出せば、ニヤリと笑ったウィタカーは一言呟いた。


「どうやら、レイグラードっていうのは使えば使うだけ使用者の身体が朽ちていくらしいんだよな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お気に召しましたら、ブックマークや評価などをぜひよろしくお願い致します。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ