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219.ジレディルの猛攻

 そのジレディルの猛攻は、敵も味方も関係なく恐怖に巻き込むものであった。

 もちろんジレディル本人は味方を巻き込まないように注意を払いながら、敵を倒すべく槍を片手に突進攻撃を仕掛ける。

 槍とともに、彼もまた魔術を使って戦う男なのでその魔術の犠牲となってもらうべく、決死の覚悟でルギーレたちに向かっていく。


「オラオラァ、誰でも良いからかかってきやがれぇ!! 死にてぇ奴からぶっ殺してやっからよぉ!!」


 すでにエイレクスとロークオンという親交の深かった二人を殺されてしまっているだけあって、自分もここで死んでもかまわないというぐらいの気迫をルギーレたちに伝えながら、槍をぶん回して突っ込んでいく。

 その気迫に押された連隊の隊員が、なすすべもなく槍によって貫かれ、魔術の炎によって焼かれ、風の刃で切り裂かれ生み出された岩によって押しつぶされる。


「くっ、あの男は確か……バーサークグラップルのジェディスだったか!?」

「そうです! こちらに向かって突っ込んできます!」

「だったら応戦するまでだ。俺とあんたで頑張ってみようじゃないか」


 そう言いながらロングソードを構えるジレフィンと、反対側から合流したティラストのコンビが立ち向かう。

 ロサヴェンとは相性がいいのだが、ジレフィンと組むのはもちろん初めてのティラスト。

 いつもの相棒は別の場所で戦いを繰り広げているだが、こうして一緒に戦ってくれる仲間がいるだけで精神的に少しは楽である。


「お前らもあいつの……あのレイグラード使いの仲間だよなぁ? だったらもうお前もお前も他の奴らも皆殺しだよ。俺の仲間の仇だ!!」

「私たちだって負けるわけにはいかないんですよ!」

「俺も同感だね。さぁ、来てみろ!」


 他の戦いに巻き込まれないように、やぐらの前まで先に到達したジレフィンとティラストが、復讐心の塊と化してしまったジレディルと刃を交える。

 さすがにその復讐心にとらわれているだけあって、多少の防御を犠牲にしてでも攻撃を何度も繰り出し続けることにより、絶対に殺してやるという恐ろしい気迫を感じさせるジレディル。

 槍の長いリーチから生み出される広い攻撃範囲は、来るものを寄せ付けようとしない手負いの魔物のようにも感じられる。

 更に二人が無理に接近しようとすれば、そこを攻撃魔術によって上手くカバーしてくるのも厄介だ。


(くそっ、これじゃあ近づくのも無理そうだな。どうにかして奴の気をそらすことができれば……)


 ロングソード使いの二人であれば槍を叩き切ってでも進みたいのだが、ジレディルの猛攻がそれを許さない。

 何か……何かないか?

 そう考えながらバックステップでいったん距離をとったジレフィンは、キョロキョロと周囲に視線を巡らせてあるものを発見した。


(多少強引だが、この方法ならあいつの動きを鈍らせることができそうだ!)


 ジレフィンはその物体を両腕で抱え上げ、スローモーションではあるものの確実にジレディルに近づいていく。

 槍をぶん回して近づけさせまいとしていたジレディルは、視界の端にとらえたジレフィンの姿に向かって槍を突き出した。


「くらえ……え?」


 槍が突き刺さる手ごたえが確かにあった。

 しかしその槍を引き抜こうとしたジレディルが見たものは、その自分の槍が突き刺さったジレフィン……の抱え上げていた、自分の部下の死体であった。

 ジレフィンは敵の身体を盾にして近づき、それでジレディルの槍を止める作戦に出たのである。


「くっ……」

「おりゃあああああああっ!!」


 槍を素早く引き抜いたのはいいが、それでも隙が生まれてしまったことで今度は自分が敵の猛攻を受ける羽目になったジレディル。

 しかもジレフィンとティラストの二人を同時に相手にして、手数の多さではどうしても負けることになってしまう。

 だったら魔術でその手数の少なさをカバー……と思いきや、がら空きになっていた背中に誰かの蹴りが入る。


「ごあっ!?」

「今だ、倒せ!!」


 その蹴りを入れたロサヴェンの一言に反応した二人は、隙だらけのジレディルの胸にティラストが、腹にジレフィンがそれぞれのロングソードを突き刺した。


「ぐ、ぐぶっ……!?」

「とどめだ!」

「ぐは……」


 最後にロサヴェンが背中からロングソードを突き刺して、ジレディルは完全にそこで絶命してしまった。

 だが、まだ戦いは終わっていない。


「やぐらに火をつけました!! 崩れ落ちます!!」

「逃げろ!」


 ルディアの大声の報告に反応したロサヴェンが大声で指示を出し、ルギーレたちは生き残ったメンバー全員が林の外へと火を避けながら駆け抜けていった。

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