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217.三つ目のやぐら

 一方、ルギーレたちはベルトニアで準備を整えた後に東に向かって列車で出発し、一日半をかけてやっと三つ目のやぐらの近くまでやってきた。

 だが、今回は今までのやぐらと比べて明らかに警備している連中の人数が多い。


「多いな……やっぱり二つのやぐらをつぶした連絡が入ってんのかな?」

「そうとしか考えられないわね」


 そうでなかったとしたら、前の二つと比べてこんなに警備が厚いわけがない。

 ルディアがそう考えている傍らで、望遠鏡で敵陣の様子を窺うティラストが「あっ」と声を上げる。


「どうした?」

「いやほら……あれって私たちと面識があるジレディルじゃないですか?」

「どれどれ、ちょっと見せてくれ」


 ロサヴェンはティラストから望遠鏡を受け取って覗いてみると、そこには確かに自分が見知った紫髪の槍使いの姿が見える。

 そしてその男がやぐらを護る人間たちに指示を出しているところを見ると、彼がここを護る部隊のリーダーとして君臨しているようだ。


「あいつがなんでここに……? こうやってサブリーダーが前線に出てくるなんて、もしかして敵も相当焦っているのか?」

「おそらくそうかもしれませんね。この護りの厚さから見ても相当に気合いが入っていますね」


 冷静に分析するティラストだが、そんな彼の発言を「のんきなもんだ」と受け止めた人物が一人。


「そんな冷静に分析してる場合か? ここまでの数はさすがに聞いてないぞ」

「そう言われましてもねえ……だからあなたをお連れしたんですよ、キースフォード部隊長」


 彼の名前を呼ぶティラストよりも、少し明るい黄緑色の髪の毛を持つ茶色い瞳のロングソード使いの男、それがこのジレフィン・キースフォードである。

 彼はカルヴァルの私兵団の兵士としてヘーザとコンビを組んでいた経験を持ち、そのヘーザと同じくイディリークに謀反を起こしたメンバーの一人としてこのラーフィティアに追放されてしまった。

 現在はヘーザと同じく、騎士団の連隊長として国内各地の魔物を討伐する部隊を編成したり、自分が前線に出ることもあるなどの多忙な日々を送っている。

 今回、ヘーザが弓の手入れや休息が必要ということになり、彼とバトンタッチして同行メンバーとして指定されたのが彼だったのだ。


「そこまで言うってことは、きちんとそれなりの活躍はしてもらえるんだろうな?」

「もちろんそのつもりだよ、ロクエル近衛団長……」


 直接絡むことはほとんどなかったものの、この場にいるイディリークの三人組とも知り合いの間柄であり、ロングソード使い同士ラルソンとは気が合うようだ。

 カルヴァルとともにイディリークに謀反を起こしたとはいえ、今のラーフィティアを護りたい気持ちに変わりはない。

 今のこここそが自分の国なのだから、とここまでくる列車の中で意気込んでいた彼の部隊も、ロングソードを中心として剣を使うメンバーが多いのである。

 素早さとパワーのバランスが取れている連隊を率いてここまでやってきたのだが、ここまで警備が厳重だとは思ってもみなかったので、これだったらシャブティの部隊を推薦すればよかったかな……と心の中で思っている。


「まあとにかく、ここから見る限りではかなり敵の数が多いからな……部隊を二手に分けて、左右からちまちまと倒していくのがいいかもな」

「ではそれでいきましょうか」


 ルディアの探査魔術を使って大体の人数を数えてみれば、その数はなんと二百五十人ほど。

 たった一つのやぐらを護るためにここまでするというのは、そこまでアノジレディルが焦っているということなのだろうか?

 それとも今回のやぐらに限っては、壊さずに調べてみたら相当重要なものが出てきたりするのだろうか?

 いろいろと考えを巡らせていたルギーレ一行だったが、あれこれ悩んでも仕方がない。

 もう少し接近すれば、レイグラードの加護を受けたルギーレの強化聴力で敵の会話もキャッチできそうなのだが、むやみに進んで見つかってしまっては作戦も台無しである。

 なのでルギーレを中心としたグループとルディアを中心としたグループの二つに分けて、この林の中の広場に建てられているやぐらを破壊しに向かう一行だが、対するジレディル率いるグループの気合いの入り方は半端なものではなかった。


「おい、来たぞー!!」

「っ!?」

「み、見つかった!?」


 見つからないように気配と足音を忍ばせつつ少人数ずつで行動するように心がけて、木から木に移動して向かうつもりが、その木の上で見張りをしていた敵に見つかってしまったらしい。

 それと同時に、下手な魔物の大群よりも怖い人間の大群が武器を手にして襲い掛かってきたのだった。

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