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207.やぐらの上にいる敵

 しかし「やってやる」と意気込んだはいいものの、ローレンがやぐらにたどり着くまでにはかなり苦労しそうだった。

 やはり以前と違うバトルフィールドが、その進行を妨げる原因となっている。

 この集落跡地には、この国の地元民であるヘーザでさえも踏み込んだのは初めてだ。だから何がどこにあるのかもわからないし、地の利で言えば敵が圧倒的に有利である。

 今でさえも、最初に注意喚起があった通り死角から奇襲をかけてくる敵がいるし、建物の屋根の上から弓や魔術を放ってくる敵もいる。

 高低差を利用されてしまっては、近接戦闘を得意とするメンバーでは歯が立たない。

 なのでヘーザと、彼の連れてきた部隊の隊員たちが中心となってその遠距離攻撃をしてくる敵を倒していくのだが、それでもなかなかの数をそろえているようで簡単には道をあけてくれないのが現実だった。


(ダメだ、これじゃあ私があのやぐらにたどり着く前にやられてしまう!)


 意気込んで出てきた自分が恥ずかしい。

 そう思いながらも、近衛騎士団長の立場と実績があるだけやはり並の敵相手には遅れは取らないローレン。

 一騎当千という言葉が似合うだけの活躍をする彼の果敢な攻めっぷりを見ていたヘーザが、ならばやぐらの上にいる人間を撃ち落とすのは自分に任せろと、再び前に出ることを決める。


「ロクエル団長、僕が屋根の上に上がります!」

「え?」

「あの三階建ての建物の上に上がれば、僕の弓でもやぐらの上まで届くかもしれません!!」


 そう言ってヘーザが指差したのは、この集落の中で唯一の三階建ての建物であった。

 おそらくこの集落で一番偉い人間が住んでいたと思われる場所。

 そこを目指して、今はとにかく進むしかないヘーザはまず近くの平屋の屋根の上に上る。


(屋根伝いにあそこまで進むんだ!!)


 家屋がない場所では近接戦闘が得意な人間たちが戦ってくれているので、自分は自分の技術が活かせる場所の敵をどんどん倒していくだけ。

 矢のストックが十分にあるのを確認したヘーザは弓を構えて、見える範囲の敵を確実に射抜いていく。


「ぎゃっ!」

「うわっ!」


 もともとイディリークの兵士だったこと、そして今ではこの国の騎士団で幹部を務めているだけのことはあり、同じ高さから狙ってくるヘーザの存在に気づいていない敵をしとめるのは割と簡単であった。

 だが、それを続けていけば当然自分も狙われることになる。


「おっ……と!!」


 ヘーザの存在に気が付いた屋根の上の敵たちが、同じく弓で狙い撃ちしてきたり、魔術で屋根の上の進行を妨害してくる。

 その攻撃の雨をかいくぐってヘーザが反撃すれば、一人また一人と確実に敵が倒れていく。

 それを目撃したシュソンは、敵の攻撃がひと段落したところで心の中からヘーザに対して素直に称賛の言葉を送っていた。


(すごいな……うちの弓隊に迎え入れたいレベルだ)


 かわいい顔してやるじゃないか、と余計な一言も付け加えつつ、自分も負けてはいられないと再び愛用の斧を振るう。

 そんなシュソンの心のセリフなど知る由もないヘーザは、屋根から屋根へと渡り歩いて敵を倒していき、いったん地上に降りる。

 今までは平屋が隣同士で密着しているからこそ、こうして屋根の上を渡ってこられたのだが、目的地の三階建ての家は独立した場所に建っているのでそこまで近づかなければならなかった。


(敵の影はなし。行くぞ!)


 周囲の状況を十分に確認したヘーザは、その建物に向かって一目散に駆け出す。

 それに気が付いた敵たちから弓や魔術でまた攻撃されるものの、脇目もふらずに走り続ける彼の小柄な体躯に攻撃を当てることは難しく、結果的にノーダメージで目的の家屋にたどり着いた。

 そこの側面に取り付けてある木製のハシゴを使って屋根の上にたどり着いた彼は、先ほど成しえなかったやぐらの上への弓での狙撃を成功させた。


「うっ、うわあああああっ!!」

「ぐっ……!!」


 集落の中で敵味方入り乱れての戦況が続いていたことで、ヘーザがそこまで迫ってきていたことに気づくのが遅れてしまったやぐらの上の敵たちは、ようやく届かせることができたそのヘーザの矢によって狙撃されてしまった。

 叫び声を上げて落ちていくのが一名、うめき声を上げて地面に真っ逆さまに落ちていくのが一名。

 更にそこに、敵をなぎ倒してきたローレンがグッドタイミングでたどり着いた。


(一撃で決める!)


 ローレンは自分のハルバードをやぐらの脚に叩きつけ、破壊することによって最初のやぐらと同じく崩壊させることに成功した。

 それで戦いは終わったのかと思いきや、実はまだこの集落の地下で戦いが続いていたのである。

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