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205.ルヴィバーの通った道

 ニルスがそんな行動をしてから二日後、ルギーレたちは西の方にある二つ目のやぐらの近く、イクスカラン地方までやってきていた。

 この地はラーフィティアの最西端にあたり、またこの世界の最西端にも位置している場所なのだが、だからと言って別に何か変わったものがあるわけではない。

 小さな集落がいくつかあり、気ままに農作業をしたりして生活しているのが特徴といえば特徴だが、それも暴君と呼ばれた前国王のヴァンリドによっていったん破壊されていた。

 そこから国が立て直されていき、また人が住むようにもなったのだが過疎地なのには変わらず、廃墟となってしまった集落も存在する。

 ニルスたちはその一つに目を付け、集落の中にやぐらを建設して残っている建物をねぐらにしているので、テントの経費もかからないと評判だった。

 そんな場所にやってきたルギーレたちだったが、その前にこの地方にはルヴィバーに関する言い伝えがあるのだという。


「昔、この周辺にルヴィバーの住んでいた別荘みたいな場所があったらしいですよ」

「へー、そうなんですか。俺全然知らなかったんですけど、ティラストさんはどこでその情報を手に入れたんです?」

「ラーフィティア国内で仕事をしていた時に聞いたんですよ。こっち方面に住んでいて、王都に出てきたって人がいましたので、その人からうわさ話程度にお聞きしました」


 つまりこの周辺はルヴィバーの通った道ということになるので、ようやくここにきて彼に関しての新しい情報が手に入れられるかもしれないと目が輝くルギーレ。

 そもそもイディリークに向かったのだって、確かにニルスたちのこともあるのだが、本来はルヴィバーの情報を手に入れるために行っておかなければならないと思っていたので優先順位は高かった。


「でも、いざ行ってみたら帝都は壊滅させられているわ、情報らしい情報は全く手に入らないわ、もう一本のレイグラードも結局偽物だった上にベルタたちに奪われっぱなしだわで、疲れて終わっただけですよ……」


 南の隣国内での流れを思い返し、はあーっとため息を吐くルギーレを見て、イディリークの中で一番高い役職の軍人であるローレンがズイッと彼の前に歩み出た。

 その威圧感に、ルギーレは「しまった」と思ってしまう。

 思っていることをそのまま口に出してしまった。しかもイディリークの悪口だと気が付いた時にはもう遅いかと思ってしまったのだが、当のローレン本人から出てきたのは予想だにしない言葉だった。


「確かに君の言う通りかもしれないな」

「……え?」

「君はレイグラードの新しい使い手として選ばれた。その腰にぶら下げているレイグラードは、我がイディリークの国内で研究していたはずだったのに、気が付けば君の手元に戻っていたというではないか。ルヴィバーとはまた違う結末を迎えそうだな」

「ど、どういうことですか?」


 言っている意味が全然わからないんですけど、と困惑してもっと詳しい説明を求めるルギーレ。

 そんな彼の目の前に、今度は兵士部隊の副隊長であるパルスが出てきた。


「ルヴィバーってのはさ、確かに伝説の冒険家でありレイグラードの使い手だった男だよ。でもその彼はイディリークを建国した後に追放されてしまったんだ」

「はい? あれ? ちょっと待ってください。ルヴィバーって人知れず姿を消したんじゃなかったんですか?」


 少なくとも歴史書に記載されているのは、ルヴィバーはイディリークを建国した後にまた旅に出たということだ。

 そして以前聞いた話によれば、そのルヴィバーの最期はレイグラードから出てきた黒いもやに飲み込まれて跡形もなく消失した。これがすべてなんじゃないのか?

 そう考えているルギーレだが、パルスは首を横に振る。


「いいや、それは半分しか当たってない。旅に出たってーのは歴史書に書かれていることなんだけど、俺たちイディリークの人間なら大抵知っているのが、ルヴィバーが追放されたって事実なんだよ」

「俺と同じか……ってそれは置いといて、なんでルヴィバーが追放されたんですか?」

「初代国王だったその男がおかしくなったからなんだよ」


 パルスの言葉に、ローレンもラルソンも首を縦に振る。

 ルヴィバーもレイグラードに認められた人物だったのだが、それまで初代国王として崇められていたはずの彼が突然おかしくなり、罪もない人々を容赦なく死刑にしたり「俺は殺される」「悪夢を毎日見るようになった」「誰か俺を殺してくれ」といった精神崩壊が起こってしまったことから手が付けられないと判断した当時の国民たちが、一致団結して彼を国外へと追放し、当時の騎士団長だった男が二代目の国王になることによって今までイディリーク帝国を続けてきたらしいのだ。

 ラルソンも加わってその話をし終えたイディリークの三人にだが、ルギーレはその話が突拍子もなさ過ぎるものだとして首をひねった。


「おかしくなった……それはまたどうしてなんでしょうね?」

「さあな。俺たちが聞いたのはそこまでだよ。俺もフィターティル副長もロクエル団長もそれ以上は知らないと思う」

「ああ、パルスの言う通りだ。俺もロクエル団長も知らない。だけど心当たりがあるとすれば、当時から語り継がれているレイグラードの話だろうな」

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