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197.帰ってきたルディア

「……で、何とか私は帰ってきたの」

「そうか……とにかくルディアが無事で安心したぜ」


 ルギーレは無事、ルディアとの再会ができた。

 ドラゴンの姿になったセルフォンが、町の負傷者の手当てが落ち着いたのと夜になったタイミングもあって、こっそりとアクティルを抜け出してルディアを救出に向かった。

 だが、その灰色のドラゴンの姿は夜闇の中でも輝いて見えてしまったらしく、しかもその背中にルディアが乗っていたこともあって帰ってきた彼女にさっそく副騎士団長のラルソンや兵士部隊副総隊長のパルス、近衛騎士団長のローレン、そして宰相のモールティから質問攻めが待っていた。


「ではまず騎士団の俺から質問させてもらおう。今まで一体どこにいたんだ?」

「私は……あの最初に向かった村で夜に寝ていて、そのあとで気が付いたら見知らぬ建物の中で独りぼっちだったんです」

「独りぼっち?」

「はい。まったく見知らぬ場所でして……そこがどこだかもわからないまま椅子に縛られていて、そのまま五分ほど待っていたら勇者パーティーの一人だったベティーナと、「炎の悪魔」ことヴァレル、そして少し遅れて入ってきた「死神」ことトークスの三人でした」


 そこから先はルギーレに対する脅迫と自分への拷問があり、爆弾を持たせて誘導させることで自分たちに有利な展開にもっていこうとさせていた。

 しかしベティーナがルギーレに負けてしまったことで、ウィタカーからその帰還した彼女への制裁がなされ、自分への監視が緩んだのだという。


「それで、君があのドラゴンを使って脱出したって言うのかい?」

「そうです。あの連中がもめている間、私は牢屋みたいな小部屋に入れられてしまってたんです。でも、そこの寝床になっていた床のワラを外してみたら、地下の水路に排泄物を流すための大きな穴があったんです」


 次のパルスの質問に、ルディアは自分がどういう行動をしたのかを説明していく。

 その穴を通って汚水の流れる地下水路に出たルディアは、錆びて腐ってしまった水路の鉄格子を外して牢屋の外への脱出に成功。

 そこから寝ている見張りに気づかれないように魔晶石を奪い取り、助けてもらえそうな人に連絡を取ったらセルフォンが出てくれたのだという。


「そうしたら、今の私の位置を探ってくれるっていうので待っていたんですよ。で、その間に何とかその建物の外に出てくれって話を受けて、頑張りました」

「ふむ……なかなかにリスキーな話だな。何ともなかったのか?」

「そりゃあまあ、見張りに見つかりそうになったり途中で私が牢屋にいないことに気づかれて騒ぎになったりしましたが、何とか脱出に成功しました」


 自分で何とか頑張ってくれとセルフォンに言われた、と発言するルディアに対して苦笑いを浮かべるローレンに、彼女もまた苦笑いで返すしかなかった。

 そして建物の外に出てみれば、見知らぬ土地に建てられているどこかの屋敷だったことがわかり、敵に見つからないようにずっと物陰に身を潜めていたのだという。


「そのセルフォンさんからは、その時に私が隠れていた物陰の近くにドラゴンの飼育場所があるのが分かったから、それを使って何とか脱出してくれって言われたんです」

「すると、それが夜空に羽ばたいていた目撃証言があったあの灰色のドラゴンだったんですか?」

「そうです。セルフォンさんの助けがなかったら、私はどうなっていたかわからないままでした」


 本当はそのセルフォンにそのまま助けに来てもらったんだけど……とルディアは心の中で思っているのだが、それを察したのはこの場にいるイディリーク以外の人間たちだけだったのは言うまでもない。

 そして、まずはルディアからこんな願いを申し出てみる。


「それであの……まだちょっと下水の臭いがするので、身体を清めたいんですけどダメですか?」

「ああ、それでしたら水浴びができる場所をご用意いたします。まだ襲撃から立ち直っていませんから、簡素な場所しかご用意できませんが」

「用意していただけるだけで感謝してもしきれません。よろしくお願いいたします」


 そのままモールティに連れられ、ルディアは身体を洗いに向かって行った。

 一方、その部屋に残されたイディリークの面々とルギーレたちは、今度はあの村の見張りが買収されていたことを含めてこれから先の身の振り方について話を始めるのだった。



 ◇



 一方、彼女をここまで運んできたその張本人……いや、張本ドラゴンのセルフォンは彼女を送り届けた後に離れた場所で人間の姿に戻って、何食わぬ顔でアクティルまで戻ってきたのである。

 そして彼が帰ってきて最初に向かったのは、最初にこのソフジスタ城に襲撃してきたベルタの凶刃から皇帝のリュシュターを守り抜いて、意識不明の重体に陥っていた騎士団長のジアルのもとだった。


「調子はだいぶいいみたいだな」

「ああ、おかげで」


 セルフォンの治療の甲斐もあって、ジアルはすっかり回復していたのである。

 人間のものとは比較にならないぐらいの質と量の魔力で治療したこともあり、すぐにでも仕事に復帰できそうな勢いだ。

 そんな自分をしてくれた彼に、一体あなたは何者なのかとジアルが問いかけた。

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