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188.遠隔操作

『着いたかしら?』

「ああ、着いたぜ。約束通り俺一人で来たぞ。ルディアは無事なんだろうな?」


 目的地であるシューヨガの町にたどり着いたルギーレは、指定された蝶ネクタイ型のモニュメントの前にやってきていた。

 昼を告げる町の鐘はまだ鳴っていないし、自分一人でレイグラードを持って時間指定に間に合うようにやってきたのだから、これで文句はないはずだ。

 そう考えるルギーレだが、モニュメントの前に置いてあった魔晶石が光っていたので取ってみると、そこから向こうのベティーナの声が聞こえてきた。

 どうやら、ここから先はそれで会話をしろとのお達しらしい。

 それよりもまずはルディアが無事なのかどうかを尋ねてみれば、ベティーナは少しムッとした声色になった。


『ええ、今はまだ無事よ。でも口の利き方には気を付けることね。こっちは人質がいるんだから』

「わかってるよ。それでここから先、俺は何をすればいいんだ? そっちの指示に従えばいいんだろ?」

『そうよ。それじゃあまず、そのモニュメントの横に黒い革のバッグが置いてあるでしょ? その持ち手を左手で握りなさい』

「……えーっと、これかな」


 確かに黒い革のバッグが置いてある。それもやや大きめであり、大量に物が入れられそうである。

 その証拠に何が入っているのかわからないが、バッグの中にやや重い何かが入れられているみたいだ。

 だがその持ち手を握った途端、ベティーナからとんでもない発言が飛び出してきた。


『握ったわね。こっちでも確認できたわ。それじゃあ最後までその持ち手から手を離しちゃだめよ』

「なんで?」

『そのバッグには持ち手の魔力を感知できる文様が彫ってあるの。その持ち手からもし手を離してみなさい。あなたの身体が粉々に吹き飛ぶわよ』

「え? え?」


 それってつまり、このバッグそのものが爆弾なのか?

 そう聞き返すルギーレに対し、自分たちの思惑通りに事が進んで機嫌がよくなったらしいベティーナの声のトーンが上がった。


『そうそう、大正解! それは爆弾なのよ。人間だったら十人ぐらいは簡単に吹き飛ぶぐらいの、超強力なものだからね』

「は……はは、それってどうせハッタリなんだろ? 俺を従順にさせようって魂胆で、口から出まかせ言ってんだろ?」

『ん~、そうねえ。じゃあそれが事実だって確かめてあげましょうか? こっちで爆弾のスイッチを入れれば、この国の中だったらどこにいたって起爆できるんだからね?』


 要するにルギーレが手を離すか、ベティーナたちの方で爆弾のスイッチを押されてしまえば、その瞬間にルギーレの身体は木っ端微塵に吹き飛んでしまうとの警告であった。

 そして、そのデモンストレーションを行うとベティーナは言い出したのだ。


『一応警告はしたけど、実際に他のもので試してみましょうか』

「は?」

『その蝶ネクタイ型のモニュメントの裏を見てみなさい。もう一つ、同じ種類のバッグがあるはずだから』

「えっと……ああ、確かにあるね。これもこの持ってるバッグと同じく爆弾だってのか?」

『ええそうよ。まあ、レイグラードまで木っ端微塵になっちゃったら困るから……モニュメントから三十歩ぐらい離れててね』


 嫌な予感しかしないが、指示通りに三十歩……いやそれ以上の距離をとったルギーレは、次の瞬間そのモニュメントが文字通り、木っ端微塵に吹き飛ぶ瞬間を目撃することとなった。

 それはまさに一瞬。

 カッとモニュメントの裏から光が発せられたかと思うと、ボゴォン!! と町中に響き渡るぐらいの鈍い爆発音とともに、町のシンボルでもあるそのモニュメントが粉々に砕け散って燃え盛った。

 ルギーレはさっきの「爆弾発言」が噓偽りないことを、その目と耳で改めて思い知ったのである。


「な……な……」

『ま、こういうことになるのよ。爆弾の威力と私たちに逆らった自分の末路がわかったかしら?』

「わ、わかった!!」

『よろしい。それじゃあまずは徒歩で町の中心部に向かいなさい。そこに大きくて茶色い柱があるから、その下にたどり着くこと』


 でも、ただ歩かせるだけではない。

 そうしなければこの「デスゲーム」はつまらないものでしかないからだ。


『制限時間は六十秒以内ね。それじゃスタート!!』

「え、あ!?」

『ほらほら、早くしないと時間がないわよ~?』

「くっそ、これじゃなぶり殺しだぜ!!」

『ふふふ、なんとでも言いなさい。レイグラードさえ手に入ればこっちはあなたがどうなろうが関係ないんだから』


 だったら最初からこんなゲームを仕掛けずに、素直にルディアとレイグラードを交換すればいいだけじゃねえか!!

 ルギーレは心の中でそう叫びつつ、町の中心部に向かって走り出した。

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