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17.帝都シャフザートのリーレディナ城にて

「へーえ、こいつがその遺跡の地下から見つけたって剣ねえ?」


 あの宿屋の前で捕まった後、長い時間をかけてリーレディナ城の謁見の間まで連れてこられたルギーレとルディアは、騎士団員たちに囲まれながらこの国の皇帝と謁見させられていた。

 ここに来るまでの間はウェザートとロラバートに列車の中で尋問を受けたり、これからの処遇について確認させられたりしていたので、すでにその内容が調書になって皇帝のディレーディにも伝わっていた。


「んで? 断片的には話を聞かせてもらったけど、これを持ったらすごい力が出たっていうのか?」

「はいそうです。まるで自分の身体じゃないぐらい、身体能力が向上しました」

「へーえ、そりゃーすげえ興味あるな。だけどお前たちのやったことは窃盗や不法侵入でもあるから、我としても黙って見逃すってわけにもいかないんだよなあ」


 そう言うディレーディの手には、ルギーレがすでに使っているあのロングソードが握られている。

 実はまだ、このロングソードがあの聖剣レイグラードではないかということを話していないルディア。

 なのでディレーディのみならず、騎士団長のザドールも一目見ただけではその剣について特に何も疑問に思っていなかったが、二人を連行してきた騎士団員のうち元傭兵である赤髪のロラバートが口を開いた。


「あの、陛下……」

「どうした?」

「俺とウェザートがずっと気になってたんですけど、その剣ってもしかしてレイグラードじゃないですか? ほら、聖剣の」

「え? ルヴィバー・クーレイリッヒが使ったって噂のあれか?」


 このヘルヴァナール世界の歴史書にその数々の伝説を残していることで知られている、聖剣レイグラードがここに?

 そのロラバートの予想を聞いて、思わずディレーディは吹き出してしまった。


「おいおい、いくらなんでもそれは言いすぎじゃないのか? 歴史書によるとそのレイグラードってのはものすごい力を持っていたって話だぞ?」


 実際にこうして手に持ってみても、何の力も感じないんだし……とディレーディはその話を一蹴する。

 だが、まだロラバートは自分がそう言いだした理由の続きを述べる。


「ええ。ですから調書にもあった通りギルドランクがDのこの男が、Aランクの魔術師と一緒だったとはいえロックスパイダーの巣を手早く壊滅させられる理由が、その剣にあるんじゃないかと思うんです」

「あー、そういやそんな話もあったっけな。でもそれだったらお前らよりもユクスのほうが知っていると思うがな」


 そう言いながらディレーディが目を向けた先には、ザドールの横に立っている金髪の男だった。

 ザドールよりも少し背が高いが、体格はザドールよりも細身である。


「副騎士団長のユクスならお前たちよりも世界中をめぐっていた経歴のある傭兵だったわけだし、手に入る情報網も多いはずだが、お前はどう思う?」

「そうですね……確かに歴史書の剣とデザインは似ていますが、俺にもそれが果たして本物かどうかはわかりません」


 ですが、とユクスは別の気になることを思い出した。


「そのロングソードが見つかったというのが、北のジゾの町の近くにある遺跡だという話でしたよね。実はそこからもっと北に行ったところにある火山で、最近赤いドラゴンが目撃されたという話を覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、それも覚えてるけどまさかそれと関係があるのか?」

「今はまだ仮定の段階ですが、赤いドラゴンといえばこの世界における伝説のドラゴン。そのドラゴンであれば、この剣を生み出した可能性もあります」


 現にそのドラゴンが目撃されたのはその遺跡からあまり遠くない場所。

 だからもしかすると、そのドラゴンとこの剣との間には何らかの関係があるのではないかとユクスは睨んでいた。

 しかし、今はまだそれを考えても仕方がないだろうと思うディレーディは、実際にこの剣がどのくらいの力があるのかを見てみたくなってきた。


「じゃあそのドラゴンとやらが創ったかもしれないって噂の剣の力、どれほどのものか試してみたいけどな。おいルギーレ、お前がこの剣を使ってロックスパイダーを斬ったってのと、遺跡の地下で襲ってきたって金属の狼を倒したってのが本当なら、俺の前でもこれは使えるんだよな?」

「え? まぁ、使えるとは思いますけど」

「……よし、だったらこうしよう」


 ディレーディは玉座から立ち上がって、思いもよらないことを言い出した。


「これからザドールとユクスの二人を相手にして模擬戦をする」

「ええっ!?」

「驚くことはないだろう、ルギーレ。我はただ単に、人間相手でもそういう力が出るのかっていうのを知りたいだけだ」


 だが、ルギーレはこの話に不安を覚えて仕方がない。


「いや、あの……模擬戦はやめておいた方が……」

「どうしてだ? まさかお前、我の信頼する部下がそう簡単に負けると思っているんじゃないだろうな?」

「負けるっていうか、殺しちゃう可能性の方が高い気がするんですよね……」

「なんだと? だったらますます見せてもらおうか、この剣の実力をな!!」


 その瞬間に謁見の間の空気がピリッとしたものになり、ルギーレはこの模擬戦への参加を断れなくなってしまったのだった。

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