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181.同行者

 つまりそれは、このソフジスタ城から奪われたレイグラードを取り戻すまでこの国から出てはならないということであった。

 それは事実上の出国禁止という措置のほかに、もう一つの意味があることを示している命令だった。


「それで、あんたたちがこの国で俺たちの監視役となる……ということだな」

「ああ。よろしく頼むぞ」


 ジェディスに確認されたうち、黒髪に青目の男が真面目そうな表情でうなずいた。

 ベルタたちに盗まれてしまったレイグラードを取り戻し、無事に帰ってくるまでルギーレの持っているレイグラードは預からせてもらうとのお達しが出た。

 そしてその一行の監視役として任命されたのが、最初にルギーレたちをソフジスタ城まで連行した二人のうちの一人、黒髪の兵士部隊の隊長パルスだった。

 もう一人、一緒に連行してきた金髪のラルソンは騎士団の副団長という立場なので、現在意識不明の重体となっている騎士団長のジアルに代わって色々と指揮をしなければならない。

 本来であればそのラルソンがついてくる予定だったのだが、その事情で一緒には行けない彼の代わりの監視役に、非常に位の高い男がついてきてくれることになった。


「でも、あんたで本当にいいのか?」

「何がだ?」

「いや、近衛騎士団の副騎士団長が一緒に来るっていうのは職務放棄みたいなもんじゃないのか?」


 むしろ心配なのは、あんたがこの城を離れることだよ。

 そう言いたいロサヴェンに対して、緑髪に黒目の体格の良い男は自分の本音をルギーレたちにさらけ出す。


「俺だって本来であれば城で陛下のそばにいるつもりだったんだが、その陛下と宰相が合意の上で俺にこの命令を出したんだから、一緒に行くしかないだろう」


 その立場上、どちらかといえば行きたくない気持ちの方が強いのがこのジャックスと呼ばれる男だった。

 だが、それはお互い様だろう? とジェディスの方を向いて言うジャックス。


「貴様だって、国は違えど俺と同じ立場のはずだぞ。ヴィルトディン王国王宮騎士団の副騎士団長、ジェディス・ケレイファン」

「まあ、そりゃそうなんだが……」


 ロサヴェンではなく、いきなり自分に言われたジェディスは戸惑うものの、それでも思うことはロサヴェンと一緒だった。


「言い方は悪いが、俺たちヴィルトディンはリルザ陛下は狙われていない。けどこっちは直にそのルギーレの仲間だった女に狙われたんだろう。それが問題なんだ」

「俺だってその考えは同じだ。だが、ロクエル近衛騎士団長がいれば負けることはない」

「それはどうだろうか……」

「何?」


 そこで口をはさんできたのはセルフォンだった。

 思いがけないところからの口出しに、思わずジャックスは彼の方を向いた。


「どういう意味だ? まさか俺の上官であり国内最強ともいわれているロクエル団長が負けるとでも?」

「ああ、そのまさかだ」

「貴様……!!」


 自分も尊敬しているローレンの悪口を言われたジャックスは、思わず自分の使っている背中のバスタードソードに手をかける。

 しかしセルフォンはジャックスの後ろに回り込んだかと思うと、そのバスタードソードの柄にかかった彼の手を右手だけで押さえつけた。

 すると目いっぱい力を入れているはずなのに、セルフォンの手がまるで重しでも乗っているかのようにそれ以上の抜剣を許してくれなかったのだ。


「一般人に対して簡単に武器を抜こうという考えは、少なくとも近衛騎士団の副団長としてはいただけないと思うがな」

「き、貴様……何者だ!?」

「某はただの医者だ。ファルス帝国の帝都ミクトランザで個人医院を開いている。それ以上でもそれ以下でもない……」


 まさかその医者の正体がドラゴンだとは夢にも思ってもいないジャックスから離れ、腕を組んで先ほどの話を続けるセルフォン。


「国内最強なのかどうかは置いといて、別の騎士団長のジアルという男はルギーレの元仲間だったベルタという女に負けた。Aクラスの冒険者相手に騎士団長が不覚を取ったという事実を忘れたわけではあるまい? それも、意識不明の重体にまで追い込まれているんだからな」

「……」

「まあ、某もさっさとそのレイグラードを取り戻して、この国を立て直さなければならないのには同意だ。スピーディーな行動が求められるだろう。先ほどの陛下からルギーレたちに同行しろと言われたのであれば従わざるをえまい」


 だからこそ、この国の中で何としてもあのベルタをはじめとして、強化人間たちや妨害魔術を操っている悪の連中を追い詰めて壊滅させるべきだ。

 その考えは皆一緒なので、まずは魔術通信を使って国内の各所に位置している検問所や町や村の騎士団、そして兵士部隊の詰め所に目撃情報がないかどうかを聞いてみることにした。

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