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178.レイグラードの恐ろしさ

「セルフォンさん、レイグラードってのは二本あるんですか?」

「いや、そんな話は聞いたことがないな」


 もう何度目になるかわからない、収監されてしまった地下の冷たい牢獄の中でルギーレはセルフォンに問いかけてみるが、彼は……人間に擬態しているドラゴンは首をかしげるだけだった。


「レイグラードはそもそもが、一本だけ作られた特別なロングソードだったと某は聞いている。それ以外にレイグラードがもう一本あるなんてことは、長い時を生きている某も知らない」

「じゃあ、もしかしてもう一本のレイグラードって言うのは偽物……?」


 セルフォンと同じく首をかしげるルギーレだが、腕を組んで壁に寄りかかって聞いていたティラストから新たな情報が入る。


「そういえば、レイグラードはその当時の戦争でルヴィバーと一緒に消えてしまったと聞いたことがありますね」

「そうなんですか?」

「ええ。あなたたちもルヴィバーの話は前に聞いたってことを言っていましたでしょう? 黒い繭のようなものに包まれてルヴィバーが消えてしまい、そしてレイグラードが行方不明になったと。……そこから先は、あなたがご存知ではありませんか? セルフォン様」


 ティラストがセルフォンに視線を向ければ、神妙な顔つきのまま座り込んでいたセルフォンがうなずいて再び口を開いた。


「……ああ。某の仲間である白いドラゴンがそれを発見した」

「白いドラゴン?」

「そうだ。某たちをまとめているリーダーのような存在だ。某を含めたドラゴンというのはこの世界に全部で七匹いるんだが、そのうちの一匹が某だ」


 それ以外にはバーレンとヴィルトディンで出会った青いシュヴィリス、白、緑、黄、赤、そして黒がいるらしいのだが、今の状況では会いに行くこともできないので、セルフォンが知っていることだけを話してもらう人間たち。


「で……その白いのが言うにはだな、レイグラードを発見したのはそのルヴィバーがレイグラードとともにどこかに消えてしまってから数年後の出来事だった」

「え、そんなにすぐ後だったんですか?」

「そうだ。そしてそのレイグラードには……本物のレイグラードには恐ろしい事実がある事を知ったんだ」


 ドラゴンたちの中で一番の知識を持っている緑のドラゴンによれば、レイグラードが人間や動物の魔力を吸い取って「成長」しているというのだ。


「成長……そういえばシュヴィリス様も同じことを言っていましたね。でも……俺の使っているあのレイグラードってのは、成長するものなんですか?」

「表現的にそういうしかないのだが、そなたはあの剣を使い続けるのは危険だということをシュヴィリスから聞いているだろう。それとルヴィバーの失踪に繋がりがあるんだ」


 ヴィルトディンにて、画家として生活している青いドラゴンとのやり取りが脳裏に思い起こされるルギーレ。


『ここから先は僕が知っている内容しか話せないけど……レイグラードっていうのは、その刃で斬った人間や魔物の魔力を吸って成長するんだ』

「せ、成長……!?」

『そうだよ。レイグラードは生き物みたいな存在なんだよ。今はまだまだ成長しきれていないみたいだけど、最大限まで成長する時が来たら、その時は君が死ぬ時だと思った方がいいね』

「どういうことですか?」

『そのままだよ。今まで吸ってきた人間とか魔物とかの魔力を自分の力として溜めるんだ。だけど、それを溜め込みすぎると爆発してしまうのさ。人間だって怒りを溜め込んで我慢の限界を超えて爆発することがあるでしょ? あれと一緒さ』


 このやり取りを思い出して、ルギーレよりも先にルディアがハッとした表情になる。


「も、もしかしてその黒い繭って言うのは、今までレイグラードが溜め込んでいた力が解放されたものなんじゃあ……!?」

「ああ、そうなるな。某たちはその当時のレイグラードが戦場で何回も活躍していた話を聞いたことはあったが、まさかそこまで力を溜め込んでいたとは予想外だった。そしてその溜め込んだ力が黒い繭となり、ルヴィバーは本能的にその危険性を察知して……そして飲み込まれてしまったんだろう」


 だとしたら、ルヴィバーの遺体がまるで見つからなかったというのもつじつまが合う。

 その繭の中に肉体ごと取り込まれてなくなってしまったのだから。


「シュヴィリスが言っていた、そなたがレイグラードを使い続けていると死ぬという話はそのことだ。そなたも今後はレイグラードを使う場面が来るかもしれないが、それも最小限にとどめるように心がけるしかない」

「じゃないと、俺もそのルヴィバーと同じように最後には黒い繭に……レイグラードの力に飲み込まれて、この世界から跡形もなく消えちまうってことですか」


 ルギーレの不安そうなセリフに、伝説のドラゴンの一匹は静かにうなずくことしかできなかった。

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