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172.来るはずのない襲撃連絡

 翌朝、ルギーレたちは洞窟を出発して近くの町までやってきたのだが、町の中に入ってみると人々がざわついているのが分かった。


「んん? 何だ?」

「何かあったのかしら?」


 何人かがざわめいているならまだしも、町の人々のほとんどがざわめいている……というよりも殺気立っているような、戸惑っているようなよくわからない雰囲気を肌で感じ取る五人。

 とにかくこのざわめきが尋常じゃないので、ルギーレが代表して町の住人たちに何があったのかを聞いてみることにしたのだが、それは余りにもショッキングな話だった。


「なぁ、みんなざわついてっけど何があったんだ?」

「あら、あなたは知らないの? 帝都が壊滅したのよ!」

「へ?」


 壊滅? 帝都が?

 何でまたそんなことに?

 住人の一人である女から言われた内容がすぐには理解できないルギーレだが、ルディアはその一言ですぐに何があったのかを察した。


「あ……も、もしかしてあの予知夢って……」

「燃えている町の?」

「そうです、それですよ! そして多分それをやったのはニルス率いるあの集団……バーサークグラップルの連中ですよ!」


 そのルディアの話は全て当たっていた。

 ルギーレが話を聞いたところによると、この五人がここに来る二日前に帝都のアクティルがいきなり謎の集団に襲撃を受けたのだ。

 しかもなぜかその時に限って魔術の類がアクティル内部で一切使えない状態に陥っていたらしく、魔術師部隊はなすすべもなくまず壊滅させられてしまい、敵の兵士たちに応戦していたこの国の騎士団や兵士部隊の人間たちも苦戦ばかりだったらしい。


「……んで、その筆頭格である騎士団長のジアルって人がほぼ瀕死の状態なんだってさ」

「生きてるの?」

「一応はな。でも、背中に酷い刺し傷を何発も負ってしまったらしくて、意識不明の状態が続いているらしいんだ」

「ひどい……どうしてそんなことを!?」


 むご過ぎるあのニルスたちのやり方に憤りを覚えるルディアと、彼女と同じ気持ちを持つ他のメンバーだが、最初に察したのはロサヴェンだった。


「目的といえば、そのもう一本のレイグラードだろうな」

「あ……」

「レイグラードがもう一本この国にあると知ったあの連中は、それを探すために帝都に襲撃をかけたとしか考えられない。……それ以外に何か情報はないのか?」

「ああ、それなら私が違う情報を手に入れました」


 一応、ルギーレ以外のメンバーも手分けしてこの町の中で情報を集めた結果、ティラストがこんな話をしてくれた。


「乗り込んできた兵士たちなんですが、戦った騎士団の方によると生気がまるでなかったそうです」

「生気がまるでない?」

「ええ。恐らくは例の強化人間の話かと思われます」

「ってことは……このイディリーク帝国は強化人間の実力を試す実験台にされたってことか!?」


 ジェディスの発言に、ティラストは真顔で無言のままうなずくしかない。

 それしか考えられない。

 どうして魔術が使えなかったのかまではまだわからないが、それもおそらくはあのバーサークグラップルの連中が何かをしたからに違いないだろう。

 そして、ソフジスタ城の地下の宝物庫に厳重に保管されていたはずのもう一本のレイグラードは、跡形もなくどこかへと持ち去られてしまっていたらしい。


「とにかく帝都へと急がなきゃならないかもしれないな」

「それはいいんだけど、今は厳戒態勢を敷いているから列車で移動したら目立つかもしれないわよ。特にこっちにもレイグラードがあるんだし……」

「そ、そうか。それだったら馬での移動を続けるしかなさそうだ」


 下手に列車で移動できないとわかってしまった以上、もどかしい気持ちを抑えながら馬での移動を余儀なくされる。

 そして、襲撃から各地までの連絡に時間がかかったのもわかった。


「あの国境の検問をしていた騎士団員と兵士部隊の隊員たちは、私たちが入国する時にはまだアクティルが襲撃されたのを知らなかったようですね」

「そりゃあ、それだけ壊滅させられた上になぜか魔術が使えなくなったりしてたんだったら、連絡が来るはずのない状況になってしまうよな」


 そう言いながら、ロサヴェンはまだ見ぬ惨状になってしまったそのアクティルまでの道のりを地図で確認し始める。


「この町からアクティルまでは列車を使えば一日で着くような距離だけど、馬で移動を続けるなら五日はかかるな」

「仕方ない。このまま馬でアクティルまで向かおう」


 ルギーレの一言に他のメンバーもうなずき、エスヴェテレスに連絡を入れてから出発することにした。

 しかし、そのアクティルでルギーレたちもトラブルに巻き込まれることとなってしまう……。

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