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161.罪滅ぼしと言い出しっぺ

「あのー、一つ考えがあるんですけど」

「何だ? ジェディス」

「俺、考えたんですけど……あの傭兵たちなら何か知ってるんじゃないですか? ほら、ロサヴェンとティラストって二人組ですよ」


 ジェディスの考えはこうだった。

 王国を中心として、普段は国外に出ることがめったにない自分たち騎士団の人間や王族関係者よりも、傭兵として世界各国を回っている人間たちの方が幅広い情報を仕入れているのではないかと。

 しかし、それを言うのであればルギーレも同じである。


「それは一理あると思うが、その、お前は……ルギーレはどうなんだ?」

「何がですか?」

「お前もあの勇者たちと一緒に世界を回っていたわけだし、この国に来たこともあっただろう。その時にニルスについて何か聞いたこととかはなかったか?」


 全員の視線が一気に自分に注がれるのが分かったが、リルザからそう言われてもルギーレは何も聞いた覚えはない。


「いや、少なくとも俺はないです。でも、あのマリユスがドライデンっていう不気味な斧を持ってたってことは、俺の知らないところで何かしらの関係を持ってたんじゃないですかね?」

「そういう素振りとかは、パーティーの仲間たちとかには見せなかったんですか?」

「それも全然なかったですよ。俺が知っているのは各国を回って人々の助けになる活動をする、勇者としてのあいつの顔だけでしたから」


 しかし、時折り見せるマリユスのぼやきだけは気になっていたルギーレ。

 強くなりたいとか、もっと力が欲しいとか、自分に足りないものは力だとか言っているのをたまに耳にすることがあったしパーティーメンバーにも話すことがあった。

 それを今質問してきたリルザとジェリバーを始めとする一同に言うと、最初に反応を見せたのはルディアだった。


「じゃあさあ、マリユスはそこに付け込まれたんじゃないの?」

「それはあるだろうな。あいつが「力が欲しい」ってあのニルスにも言ったんだとしたら、自分に協力する代わりにすげえ武器を用意してやるとかって話してたんじゃねえのか?」


 あくまでこれは推測の域を出ないので、実際にどんなやり取りがあったのかは当人たち以外は知る由もない。

 だが、この国に来てから地下施設を造る一方でその武器を生み出す作業をしていたとしても何ら不思議ではない、とルギーレは考える。


「俺だったら全然やると思うんですよ。だって地下施設はこのクリストールの二倍ぐらいの広さがあるんでしょ? そこを建造しちまえばいくらでも隠し部屋とか造れると思うし、倉庫代わりに使っている部屋でひそかに武器の開発だって出来んじゃないですか?」

「それはそうですが、でも……マリユスたちはどうしてあの男の仲間に?」

「それがわからないからこうしてみんなで考えてんですよ、ジェリバー様。あいつの考えてることは俺、パーティーにいた時だってわからねえことがありましたし」


 いずれにせよ、この先あのニルスやマリユスたちの足取りを追うのであればロサヴェンとティラストに協力してもらった方がよさそうである。

 そこで食事中の一同のもとに呼びされた彼らは、事のあらましを聞いて顔を見合わせた。


「私は別に構いません。あのニルスという男にはさんざんやられてしまいましたから」

「俺はあの男に上手く騙されていました。この三人を捕らえるように言われたのも、全てはザリスバート将軍を介して下されたニルスの命令でしたから」

(わ、私のせい……でもあるのか?)


 なんだか自分を使って上手く言い訳をされているような気がしないでもないエルガーだが、そこはスルーしておくことにする。

 今はそれよりも大事な話をしているからだ。

 こうしてロサヴェンは騙されてしまった罪滅ぼしのため、ティラストはロサヴェンのサポート役としてルギーレとルディアに同行することが決まったのだが、もう一人の男が一緒に行くようにリルザから命令が下る。


「よし、それじゃあジェディスも一緒に行ってくれ」

「……へ?」


 何で自分が?

 突然の命令に間抜けな返事をしてしまったジェディスだが、その答えは簡単だった。


「最初にこの話の流れを作り出したのはお前だろう。それに余たちとの連絡係として、それからこの傭兵たちの監視役としてお前が適任だろうからな」

「これは陛下からの命令です。拒否権はありませんよ、ケレイファン副団長」

「……はい、かしこまりました。責任を持って引き受けさせていただきます」


 こうして言い出しっぺのジェディスも同行することになったこの先の旅路。

 それからあのニルスという男を追いかけるのであれば、彼の近くにいるであろうマリユスについても考えなければならない。

 マリユスを始めとする勇者パーティーの面々は、ルギーレと別れてから何かしらの縁があってニルスの仲間として行動しているようだ。

 そうでなかったとしたら、あんなに不気味で強力な斧を持っているわけがないからである。


(マリユス……それからリュドもそうだけど、あんなのが相手になるんだったらレイグラードだけじゃ厳しいかもしれねえな)


 目の前に置かれているグラスに入ったオレンジジュースを一気に飲み干しながら、ルギーレはそう思っていた。

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