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14.勇者パーティーの評価

「おい……聞いたかよあの話?」

「聞いた聞いた。勇者パーティーでも壊滅できなかったってロックスパイダーの巣を、親玉も含めてすべて蹴散らして制圧したって冒険者の話でしょ?」

「そうだよそれそれ。しかも勇者パーティーは五人いて逃げ帰ってきたのに、その壊滅させたのはたった二人の男女だったらしいぜ」

「ええー!? それってかなり有名な冒険者とかじゃないのかしら!?」

「それが全然違って、一人はAランクの魔術師らしいからそこまでは納得できるんだが、もう一人はまだDランクの新人らしいぜ? まあいずれにしても、Dランクの冒険者に先を越されたってんじゃ勇者パーティーの連中も腰抜けってことになっちまうよなあ」

「でぃ、Dランク……!?」


 男からの情報に絶句する女。

 ギルドの建物の一画で話し込んでいるこの男女二人もまた冒険者だけあって、冒険者同士のネットワークで話題が早く伝わっているのが見て取れる。

 それはこの男女だけではなく、別の場所で話し込んでいる男三人の冒険者グループでも話題になっていた。


「これはあくまで私が聞いた噂なんですけどね? なんでもそのDランクの冒険者っていうのが、勇者パーティーを追い出されたメンバーだって情報がまことしやかに広まっているんですよ」

「なんだとぉ? それじゃその追い出されたって奴と勇者様たちがまた再び手を組んで、俺たちも期待していたロックスパイダーの巣を叩き潰したってーのかよ!?」

「いや、僕が聞いた話ではまったくの別行動だったらしい。ただ、この町で勇者パーティーとその男女が一緒に歩いていたって目撃情報があるから、仲間に戻ったって可能性もあり得る」


 このように冒険者たちの中で驚く者あり、情報が錯綜している場面ありと早速ルギーレとルディアによるロックスパイダーの巣の殲滅成功が話題になっていた。

 しかし、それを面白く思っていないのが当の勇者パーティーのメンバーたちである。

 冒険者ギルドの中だけでなく、町のあちらこちらから聞こえてくるそのルギーレの活躍を話題にする声にストレスがたまって仕方がないのである。


「俺たちが五人がかりで挑んでも攻略できなかったあのロックスパイダーの巣を、ルギーレとあの女が二人で攻略しただと? それで俺たちが腰抜け呼ばわりされるなんて、まったくわかってない連中ばっかりでヘドが出るぜ」

「ふん……偶然が連続したとしか思えないわ。というかあれでしょ。ルギーレは何もしてなくて、あのルディアって魔術師の陰に隠れておびえてただけに決まってるわよ」

「あ、それはありそうね。だってDランクのルギーレだからね、まともに戦えるわけがないもんねえ?」


 マリユス、ベティーナ、ベルタの三人がそれぞれの考えを巡らせる一方で、リュドとライラはこの町の中であの二人と再会した時のことが気になっていた。


「ねえちょっと、私とライラが気になっていることがあるんだけど、話してもいいかしら?」

「どうしたの?」

「さっきから私とリュドで、ルギーレが持っていたあの剣のことについて話していたの~」

「剣?」

「うん……気づかなかった? あの男が持っていた剣は私たちの仲間から追い出したときに持っていた物と違う物だったって」


 リュドの発言に三人は顔を見合わせる。


「ああ……ごめん、そこまで気が回っていなかったわ。私はどうしてもあの女の……ルディアのことが気になって仕方がなかったから」

「私は目障りなルギーレがまた戻ってきてイライラしてて、彼の顔ばっかり見てたから気づかなかったわよ」

「俺も同じだ。けど……今思い返してみれば確かに妙な剣を持ってた気もするけどな」


 確かロングソードで……とそのときの記憶を思い返すマリユスに向かって、今度はライラが口を開いた。


「そうそう。あのロングソードって確か、この世界で伝説になっているロングソードにそっくりだったのよ~」

「は? それってもしかして聖剣レイグラードのことか?」

「そうよ~。ほら、かつてこの世界で起こった戦争のほとんどでそのロングソードが活躍したって話はあまりにも有名だけど~、もしかしたらあの時ルギーレが持っていたロングソードがそうじゃないかって話をしてたの~」


 しかし、そのライラの発言に対して最初に噴出したのはベティーナだった。


「ぷっ……何よそれ。そんな伝説の聖剣がこんな田舎にあるわけないじゃない。この世界のどこにあるかもわかっていないようなロングソードなんだし」

「そうよねえ。しかも仮にそれが聖剣だったとしても、それをルギーレが扱えるわけないでしょ。逆にそのロングソードに守られちゃって何もできなかったっていうのがいいところのオチだわ」


 ベルタもベティーナの意見に同意するが、一方のマリユスだけは神妙な面持ちになっていた。

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